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『特別公演』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

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歌の力こそぼくらの目に光をそそぎ、
  あらゆる芸術を解する力を授けてくれる。
  だから心うれしきひとも疲れたものも、
  つつましやかにこよなき味をたのしむ。
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『青い花』(ノヴァーリス、青山隆夫:翻訳)より


 2018年4月14日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんの公演を鑑賞しました。キューバでの公演から一時帰国して二日間だけ特別公演を行うとのことで、先月の特別公演と同じく、新作を踊ってくれました。上演時間60分の舞台です。


[キャスト他]

演出・照明: 勅使川原三郎
出演: 勅使川原三郎、佐東利穂子


 ドイツ・ロマン主義の作家ノヴァーリスの小説『青い花』にもとづくダンス作品です。「青い花」を佐東利穂子さんが、その青い花を追い求め各地を遍歴する「詩人」を勅使川原三郎さんが、それぞれ踊ります。

 最初のシーンは、時計や風の音が流れるなか、「詩人」が夢をみる場面。


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壁の時計がものうげに時をきざみ、がたがたなる窓の外で、風がうなり声をあげていた。月の光が射して部屋が明るくなったかとみると、また暗くなった。青年は眠られぬまま寝台の上を輾転として、あの旅の人のこと、その口から語られたあれこれを思いだしていた。
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『青い花』(ノヴァーリス、青山隆夫:翻訳)より


 やがて彼は夢のなかで出会った「青い花」を求めて様々な場所をさまようことに。潮騒や嵐、轟く雷鳴など、多様な音が流れ、この音響効果と照明効果によって場所や天候の変化が劇的に示されます。

 憧れ、困惑、焦り、人間的な表情を浮かべる勅使川原さん。青い照明を浴びて目の前に立つ夢幻のような佐東利穂子さん。どちらも強烈な印象を残します。


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葉が輝きをまして、ぐんぐん伸びる茎にぴたりとまつわりつくと、花は青年に向かって首をかしげた。その花弁が青いゆったりとしたえりを広げると、中にほっそりとした顔がほのかにゆらいで見えた。この奇異な変身のさまにつれて、青年のここちよい驚きはいやが上にも高まっていった。
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『青い花』(ノヴァーリス、青山隆夫:翻訳)より


 大きく、激しく、きっぱりとした動きが特徴的で、とにかく大盤振る舞いというか、かっこいいダンスがたくさん観られて単純に嬉しい。勅使川原さんの作品をはじめて観るなら、これが最適ではないでしょうか。いずれアップデートされて劇場で公開されることを期待したいと思います。

 来月はシアターΧで新作公演『調べ』、続いてアップデートダンス新作も公開されるそうで、もうこうなったら、ぜんぶ観る。



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