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『分身』(小野寺修二、カンパニーデラシネラ) [ダンス]

 2017年3月18日は夫婦で世田谷パブリックシアターに行って、小野寺修二さん率いるカンパニーデラシネラの再演(二本立て)を鑑賞しました。二本目の演目は、カンパニーデラシネラ「白い劇場シリーズ」第一弾である『分身』(2015年3月初演)。総計13名が踊る90分の公演です。


[キャスト他]

演出: 小野寺修二
出演: 王下貴司、辻田暁、名児耶ゆり、宮河愛一郎、宮崎吐夢、伊吹卓光、植田崇幸、大樹桜、田中美甫、遠山悠介、友野翔太、豊島勇士、浜田亜衣


 「白い劇場シリーズ」第一弾である本作は、フョードル・ドストエフスキーの『分身』(または『二重人格』)を原作とする演劇的ダンス作品です。主人公を演じるのは王下貴司さん。

 自らの分身にすべてを奪われてゆく(という妄想に追い詰められ発狂してゆく)下級役人の悲劇という物語ですが、舞台は最初からずっと主人公の内面世界を描いているようで、ひたすら悪夢的な雰囲気が続きます。

 何より神経にこたえるのは、周囲の人々は何やらきちんと定まったルールやしきたりに沿って行動しているらしいのに、自分だけがそのルールがまったく分からず取り返しのつかないミスをやって恥をかく、でも何が悪いのかさっぱりわからないままどんどん出世から脱落してゆく、という神経症的な恐怖。うわあ。

 何しろ舞台上はこれすべて悪夢なので、不機嫌というか攻撃的な雰囲気のダンスが多用されます。両手両足に結ばれたロープを背後から引っ張られながら上司に書類を手渡そうと奮闘するがどうしても出来ない、といった悪夢あるあるシーンの動きなど強烈。辻田暁さん(もと「21世紀ゲバゲバ舞踊団」メンバー)の激しいダンスもとても印象的でした。



タグ:小野寺修二
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『椿姫』(小野寺修二、カンパニーデラシネラ) [ダンス]

 2017年3月18日は夫婦で世田谷パブリックシアターに行って、小野寺修二さん率いるカンパニーデラシネラの再演(二本立て)を鑑賞しました。最初の演目は、カンパニーデラシネラ「白い劇場シリーズ」第二弾にして「CoRich舞台芸術まつり!2016春」グランプリを受賞した『椿姫』(2016年2月初演)。総計9名が踊る90分の公演です。


[キャスト他]

演出: 小野寺修二
出演: 崎山莉奈、野坂弘、斉藤悠、大庭裕介、増井友紀子、仁科幸、菅彩美、宮原由紀夫、牟田のどか


 アレクサンドル・デュマ・フィスの小説『椿姫』(La Dame aux camelias)を原作とする演劇的ダンス作品です。マルグリット役は崎山莉奈さん、アルマン役は野坂弘さん。

 舞台上に置かれているのは、簡素なテーブルと椅子。テーブルはしばしば即興の舞台となって、その上で登場人物が踊ります。椅子も活躍します。座っている相手の身体を片手で支えながらすっと椅子を抜いてしまう(が相手はそのまま空気椅子)といった振付など。

 セリフもけっこうあるのですが、登場人物の心理やその場の雰囲気など、ほとんどすべてダンスで表現してしまうところが凄い。動きとしては、ノイマイヤーによるバレエ版『椿姫』を連想させるものが多い、という印象を受けます。あと椅子を駆使した群舞や、椿の花が大量に床に置かれるシーンなど、ピナっぽく感じられる演出も素敵。

 終始シリアスな雰囲気で展開しますが、時系列も適度にシャッフルされ、遺品オークションの場面など小野寺さんらしい不条理ユーモアが炸裂するシーンもちゃんとあって、実に巧みな構成だと思いました。



タグ:小野寺修二
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『すごい進化 「一見すると不合理」の謎を解く』(鈴木紀之) [読書(サイエンス)]

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 地球上の生物の多様性を生み出した進化はそもそも驚嘆に値するもので、私がくり返して強調するまでもありません。ただそうは言っても、すごくないように見える生き物の形や振る舞いがあるのも事実です。しかしながら、そこであきらめずにつぶさに観察していくと、一見すると不合理に見える形質ほど、実は「すごい進化」の秘密が隠されているのだと、私は考えています。
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新書版p.v


 不完全な擬態、まずい餌に特化した食性、壊滅的なまでに非効率な生殖システム。自然界にあふれる「すごくない」性質は、何らかの制約により進化が途中で止まってしまった結果なのか、それとも隠された理由まで考慮すると実は最適化されているのか。制約と適応のせめぎ合いから見えてくる意外に「すごい進化」の興味深い実例を通して、進化生態学の考え方を紹介するサイエンス本。新書版(中央公論新社)出版は2017年5月、Kindle版配信は2018年3月です。


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 生物の形質は常に適応と制約のせめぎ合いによって、完璧とはいえない状態にとどまっていると考えることができます。特に、機能的にあまりうまくいっていないように見える形質については、最適化されていない疑いが強く、制約の重要性の根拠とされてきました。
 ところがよくよく調べてみると、これまで制約だと片付けられていた現象の中には、実は制約がそれほど効いていないようなものも含まれていました。そこで、「適応をあきらめない」という姿勢を貫くことで、より合理的な仮説を立てることができました。自然界には不合理に見える現象があふれていますが、実はなんだかんだうまくできている――これが、本書全体を通じて伝えてきたメッセージでした。
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新書版p.224


 全体は4つの章から構成されています。


第一章 進化の捉え方
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 現在生き残っている生物は、すなわち自然淘汰を経てきたわけですから、「生物の形質は適応的である」という仮定は一定の正しさを含んでいます。ただし前に述べたように、生物の形質は必ずしも完璧ではありません。(中略)それでも、最適化を仮定して新たな仮説に取り組むほうが、「制約のせいで現在の形質には適応的な機能がない」という見方よりも実り多い研究プログラムなのです。予測が外れたときの適応主義による対応をグールドは批判しましたが、その対応こそが最適化アプローチの最大の強みだったといえるでしょう。
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新書版p.21、26

 生物の形質や振る舞いは適応的である・あるはずだ。いや、様々な制約により生物の特性は必ずしも適応的とは限らない。進化生物学で長年続いてきた適応主義をめぐる論争を整理して、「適応主義を仮定した研究アプローチは、実り多い成果をもたらすことが多い」という本書の立場を説明します。


第二章 見せかけの制約
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 しかしここで主張したいのは、形態的制約という暗黙の前提を取り除くことで、適応にもとづいた新たな仮説を提示するきっかけになったということです。栄養卵の進化に関しては、形態的制約という一応の説明があったせいで、「大きい卵で対処しない理由」について進化生態学者の思考が停滞していました。
(中略)
 ウラナミジャノメとテントウムシの研究で見たように、一見すると制約が効いていそうな形質も、調べてみると生存や繁殖に大した影響がないことがあります。このような「見せかけの制約」は、進化生態学の研究でしばしば登場します。制約が見せかけかどうかを判別するには丹念な観察と実験が必要ですが、そこにこそ進化生態学の醍醐味があるといっていいかもしれません。
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新書版p.58、59

 わざわざ孵化しない卵を産むテントウムシ、特定の植物しか食べない昆虫、共進化仮説。一見すると不合理な形質を発見したときに、「制約」の存在を前提に納得するか、それともあくまで「適応を信じて」仮説を探求するか。興味深い実例を通じて、適応主義的なアプローチの有効性を解説します。


第三章 合理的な不合理――あるテントウムシの不思議
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マツオオアブラムシはテントウムシにとって「まずい」「少ない」「捕まえにくい」という三拍子そろってひどいエサであるといえそうです。私たちの経済感覚でいうならば、まずくて食べづらくて高価なものにわざわざお金を払って毎日食べているようなものです。(中略)こんな罰ゲームのような生活は自然淘汰の結果なのでしょうか。
 まわりにおいしいエサがたくさんあるのに、なぜあえてまずいエサを食べるのか。クリサキテントウの不合理な選択を理解するためには、共進化や競争といったこれまで生態学で試されてきた正攻法ではうまくいきません。だからこそ、不合理な行動とみなされているのです。そこで私が取り組んだのは、異種への誤った求愛という「不合理な選択」を解明するところから、不合理なエサ選びを理解するというアプローチです。
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新書版p.101、110

 実験室では平気で他のエサを食べるのに、自然界ではわざわざまずいエサを選んで食べるテントウムシの謎。その理由は、他種のメスにも誤って求愛するオスの存在にあった……。意外な結末に驚愕する、まるでミステリー小説のような研究成果を紹介します。


第四章 適応の真価――非効率で不完全な進化
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有性生殖は二倍のコストという明らかな欠点を含んでいるにもかかわらず、自然界の生殖システムとして卓越しています。この矛盾が、進化学最大の問題という称号を与えられた所以です。ここからは、二倍のコストを克服していく生物学者の挑戦と限界を見ていきましょう。
(中略)
遺伝的多様性も赤の女王も、二倍のコストを覆すには十分ではありません。そこで最後に、生物学の教科書に載っていないばかりか、専門家の間ですらいまだほとんど知られていない、とっておきの仮説を紹介します。この仮説は、既存の仮説の問題点をクリアし、二倍のコストの問題に異なるアプローチから迫るものです。ひょっとしたら、真実に最も近い合理的なアイデアとして、今後世界に広まっていくかもしれません。
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新書版p.180


 無駄な形質や行動の進化を説明するハンディキャップ理論。あまりにも非効率な「性」という生殖システム。不完全でいいかげんな擬態。様々な実例を通じて、自然界にあふれる無駄と非効率こそ実は「すごい進化」であることを解明する研究を紹介してゆきます。なかでも、有性生殖がいかにして進化してきたのかという謎に対する(従来の、遺伝的多様性仮説や「赤の女王」仮説とは根本的に異なる)新しい仮説の紹介は必読です。



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『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子) [読書(小説・詩)]

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笑いながら「これ、ほんもの?」と指で押すサンプルだって信じてたから
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覚め際で最後の一段踏み外しひとりのベッドに放りだされた
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うまい棒コーンポタージュ味でごまかしたさびしさという空腹がある
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ガリガリ君冷凍庫のなか生き延びて目が合う度に老け込んでゆく
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今日もまた前回までのあらすじを生きてるみたい 雨が止まない
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ほんとうはあなたは無呼吸症候群おしえないまま隣でねむる
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 日常生活や恋愛のささいな光景から、ふと生じる不思議な感覚や空想、それをリアルに表現した生活妄想歌集。単行本(書肆侃侃房)出版は2017年3月、Kindle版配信は2017年4月です。


 まず、普通はくっつかない複数の言葉や状況をあえて組み合わせることで、日常のなかで感じる奇妙な感覚や空想を巧みに描いた作品が印象に残ります。


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だとしてもいつまでたってもとけきらぬオブラートの味すこしこわくて
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「最近は眠れてますか」と問う医師の台詞のあとのト書きが知りたい
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笑いながら「これ、ほんもの?」と指で押すサンプルだって信じてたから
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覚め際で最後の一段踏み外しひとりのベッドに放りだされた
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会見の総理の横の手話だけが本当のことを伝えてくれそう
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うまい棒コーンポタージュ味でごまかしたさびしさという空腹がある
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カラコロと返却口へ落ちてゆくコインの気持ちをつかみかけてた
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わたしが、と思わず胸にあてた手がピンマイクを打ち爆音となる
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できるだけ人道的に捨ててきたサンドイッチのパンの耳なら
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できるなら絶対誰ともかぶらない(仮名)を探りあてたい
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押しボタン式だとずっと気づかずに見つめ合ってた横断歩道
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単3か単2か迷うその間ひかりのことだけ思っていたい
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さくらにも運命はありあんぱんのへそにすわってしっとりと咲く
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 また、実際にはありえないけれど、なぜか不思議なリアリティというか実感のこもった妄想を扱った作品もたくさんあります。


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早送りすればテレビの画面から通過電車のような風受く
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ガリガリ君冷凍庫のなか生き延びて目が合う度に老け込んでゆく
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〈*画像はイメージです〉というテロップを見つけてしまう星空の窓
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ペンネームだったんですかと戸惑いぬトマトを包む生産者の名に
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今日もまた前回までのあらすじを生きてるみたい 雨が止まない
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〈散骨の代行サービスございます〉海のきらめくパンフレットに
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路地裏でひっそり月を待っている〈刃物研ぎます〉という看板は
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わたしからはみ出したくて真夜中にじわりじわりと伸びてゆく爪
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イソジンのうがい薬の褐色でひとり残らず殺せる気が、した
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自販機に〈なまぬるい〉のボタン見つけたらわたしはきっと次の段階(ステージ)
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プラチナのペーパーナイフで空を裂き回想シーンから出て行かなくては
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 定型的あるいは形式的で陳腐な表現を、巧みに「ずらす」ことで、何とも言えないおかしさと不気味な緊張感が同時に漂う作品。


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私を何でお知りになりましたか? ①ブログで②口コミで③真夜中の悲鳴で
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今後の参考にさせて下さい。その他に○がついていますね
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参考になったでしょうか失敗をしない訂正印の捺し方なども
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「ありのままのあなたを誰も愛さないでしょう」にこやかに告ぐ気象予報士
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紅茶葉をひらかせながらこの秋も平年並のさびしさでした
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これ以上きみには嘘をつけないと雨は霙に姿を変えた
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 恋愛妄想(準備中)


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見つめられ息を止めれば皮膚呼吸 器用にできてる 進化している
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好かれたいひとにはいつも好かれないシステムだけがわたしを守る
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取説の「故障かなと思ったら」の頁に差し込む指がほしくて
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ほしいのは「トイレの電気点けっぱなし!」と叱ってくれるアンドロイド
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 恋愛妄想(前期)


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ああ君が空を見上げてるってことはもうこの世にわたしがいないってこと
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本心が読み取れなくて何回もバーコードリーダー擦り付けてた
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前髪の分け目をひだりに変えました今度はあなたがひざまずく番
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〈起こさずにこのまま行くよ〉と右頬にポストイットを貼られた夜明け
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同罪だ。魚肉ソーセージのビニールを咬み切るわたしとみているあなた
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帰るならウェットスーツ脱ぐようにあなたのからだ置いていってよ
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伝書鳩の味がしたんだほろほろと君を想って食むハトサブレー
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 恋愛妄想(後期)


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「一時間経ったら起こせ」と言ったきりあなたは隣で内海になる
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この指輪はずしてミンチをこねるときわたしに出来ないことなんてない
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ほんとうはあなたは無呼吸症候群おしえないまま隣でねむる
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車いす押して海辺を歩きたい記憶喪失のあなたを乗せて
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無意識に肩紐のよじれ直すだろうあなたが死んで号泣する夜も
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 というわけで、親近感しみじみあふれる妄想が群れなす歌集です。



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『サイバー攻撃 ネット世界の裏側で起きていること』(中島明日香) [読書(サイエンス)]

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Cyber Grand Challengeを通じて、プログラムが自動的に脆弱性の発見から攻撃までをおこなえることが、大々的に実証されました。つまりこれは、今まで技術者がおこなってきた武器(攻撃コード)づくりを、完全に自動化できるようになったということです。もっと言えば、武器を自動的に大量生産することが可能になったのです。これは、セキュリティの歴史的転換点となる出来事だと言えます。
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新書版p.233


 あらゆるものがインターネットでつながる現在、サイバー攻撃による損害はますます深刻化している。金銭目的のマルウェア攻撃から国家間のサイバー戦争まで、サイバー攻撃の基礎知識とサイバー犯罪市場の現状を一般向けに分かりやすく解説してくれる一冊。新書版(講談社)出版は2018年1月、Kindle版配信は2018年1月です。


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 現在、ありとあらゆる機器に情報技術が組み込まれ、かつインターネットにつながるようになり、私たちの暮らしは便利に、そして豊かになりました。しかしその反面、あらゆるものがサイバー攻撃の対象となっています。今や人間の命にも密接に関係する、自動車、電気・水道なとの社会インフラも攻撃の対象です。本書中では過去の実例を出して、いかに現代社会がサイバー攻撃の脅威にさらされているかを紹介しました。
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新書版p.243


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金銭目的のサイバー犯罪はせいぜいコンピュータとインターネット環境、そして銀行口座があれば始められます。また、インターネットを利用すれば、世界中のどこからでも、国境を越えた犯罪活動が可能で、匿名性も簡単に確保できます。また、犯罪の証拠や痕跡を隠すことも容易です。取り締まる側にとっては非常にやりにくい相手と言えます。一説によると、サイバー犯罪者が逮捕される割合は5%程度と言われています。
 このように、サイバー犯罪は犯罪者にとって“おいしい”ビジネスなのです。
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新書版p.195


 攻撃プログラムのソースコード例を使った技術的解説から、サイバー犯罪ビジネスの競争とイノベーション、そしてサイバー戦争。全体は7つの章から構成されています。


「第1章 サイバー攻撃で悪用される「脆弱性」とは何か」
「第2章 サイバー攻撃は防げるか 脆弱性の発見・管理・修正」
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脆弱性データベースができた1999年当時は、脆弱性の報告数は年間1000件以下でした。しかし、2005年以降は年間4000件以上の報告がなされています。脆弱性情報の報告のペースが、6年で4倍以上に伸びたということです。2014年にいたっては1年間で8000件近い脆弱性が報告されており、これはなんと1日に平均約22件報告された計算になります。
 このデータから、脆弱性がいかに日常的に発見・報告されているかがわかります。さらに言えば、これらはあくまでも報告された脆弱性の数であり、報告されずに開発者が人知れず修正した脆弱性は含まれません。そのため、実際にはもっと大量に見つかっているものと考えられます。
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新書版p.53

 サイバー攻撃の現状から始まって、ソフトウェアの「脆弱性」に関する基礎知識を解説します。


「第3章 プログラムの制御はいかにして乗っ取られるか バッファオーバーフローの脆弱性」
「第4章 文字列の整形機能はいかにして攻撃に悪用されるか 書式指定文字列の脆弱性」
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本節では、ソフトウェア(実行ファイル形式)の実装の不備によってできる各種の脆弱性を紹介します。本節では7種類の脆弱性を取り上げますが、これまでのおさらいも兼ねて、バッファオーバーフローと書式指定文字列の脆弱性も再度簡単に説明します。
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新書版p.129

 ソフトウェア脆弱性の例として「バッファオーバーフロー」と「書式指定文字列の脆弱性」を取り上げ、攻撃の仕組みを解説します。さらに、代表的な脆弱性として以下の7つを紹介します。また、防御技術として「脆弱性緩和技術」「サンドボックス技術」を解説します。

・バッファオーバーフロー (Buffer Overflow)
・整数オーバーフロー (Integer Overflow)
・書式指定文字列の脆弱性 (Format String Bug)
・解放済みメモリ使用 (Use-After-Free)
・二重解放 (Double Free)
・ヌルポインタ参照 (Null Pointer Dereference)
・競合状態 (Race Condition)


「第5章 いかにしてWebサイトに悪意あるコードが埋め込まれるか クロスサイト・スクリプティングの脆弱性」
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Web関連の脆弱性は多様ですが、とくに大きな割合を占めるのが、クロスサイト・スクリプティングという攻撃が可能な脆弱性です。過去に日本の脆弱性報告窓口(IPA)に報告されたWebの脆弱性のうち、なんと半数以上がクロスサイト・スクリプティングの脆弱性だった、という報告もあります。(中略)クロスサイト・スクリプティングの手法は、大きく3種類に分けられます。すなわち、「反射型XSS」と「持続型XSS」と「DOM Based XSS」です。本節では、これら3種類のXSSを説明していきます。
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新書版p.156、159

 Webページに対する攻撃の例として「クロスサイト・スクリプティング (XSS) 」を取り上げ、その仕組みを解説します。


「第6章 機密情報はいかにして盗まれるか SQLインジェクションの脆弱性」
――――
「サイバー攻撃によって、X社から個人情報がXX万件流出しました」という報道を目にしたことがあると思います。このような事件の裏では、SQLインジェクションがおこなわれています。
 本章では、最初にデータベースの基礎を説明した後、SQLインジェクションの脆弱性の原理と具体的な攻撃手法を紹介します。
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新書版p.172

 データベースに対する攻撃の例として「SQLインジェクション」を取り上げ、その仕組みを解説します。


「第7章 脆弱性と社会 脆弱性市場からサイバー戦争まで」
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 現在のサイバー犯罪市場では、高度な技術をもたない攻撃者でも使える、サイバー攻撃のためのツールキット「Exploit Kit」が流通しているのです。これを使えば、特定のソフトウェアの一般ユーザに対して、金銭の窃取を目的としたマルウェアを巧妙に感染させられます。
(中略)
 Exploit Kitは値段も手頃で、執筆時点では、日本円にして数万~数十万円で購入できるようです。これを「高い」と感じる方もいるかもしれませんが、将来的に何十万~何百万円も稼げると思えば、「安上がり」と言っていいでしょう。
(中略)
 サイバー犯罪ビジネスにおいて、SaaSのExploit Kit版ともいうべきビジネスモデル、Exploit as a Service (EaaS) が現れました。これは、構築済みの悪性Webサイトを貸し出すサービスです。
――――
新書版p.196、200、202


 いまや大規模ビジネスとして発展しているサイバー犯罪市場の現状を解説します。サイバー犯罪市場における苛烈なビジネス競争、新しいビジネスモデルの台頭などのイノベーション。さらには、それにビジネスの手法を応用して対抗する「脆弱性報奨金制度」「バグハンター」などの話題も紹介します。



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