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『another BATIK 『子どもたちの歌う声がきこえる』 『波と暮らして』』(黒田育世、佐多達枝) [ダンス]

 2018年2月3日は、夫婦で世田谷パブリックシアターに行って黒田育世さん率いるBATIKの公演を鑑賞しました。佐多達枝さん振り付けによる新作『子どもたちの歌う声がきこえる』と、2015年に初演された 『波と暮らして』再演のダブルビルです。上演時間は、『子ども』が50分、『波』が70分、総計2時間(+休憩時間20分)。


『波と暮らして』

 メキシコの詩人オクタビオ・パスの短篇小説『波と暮らして』を原作とするデュエット作品。2015年に初演されたものの再演ですが、初演を見逃していたので個人的には今回が初めての鑑賞です。


[キャスト他]

演出: 黒田育世
振付・出演: 柳本雅寛、黒田育世
美術: 松本じろ


 ショパンの夜想曲(アナログレコードの音に針とび等のノイズを混ぜたノルタルジックな音源)が流れるなか、原作における「僕」を柳本雅寛さんが、「波」を黒田育世さんが、それぞれ踊ります。海辺で「波」になつかれた男が、仕方なく彼女を連れ帰って奇妙な同棲生活を始めるのですが……。

 周囲をブルーシート(海を連想させます)で囲まれた空間。アナログレコードプレーヤーを除けばほとんど何もない寒々しい印象を与える部屋で、子どものように無垢で無邪気に男を翻弄する「波」、男の心が離れてゆくことに気づいて愁嘆場を演じる「波」、男の心を取り戻したと思って喜びはしゃぎ戯れる「波」。黒田育世さんの変幻自在で官能的な動きを、柳本雅寛さんがしっかりサポートします。

 とはいえ、黒田育世さんの苦悩の表現(叫び声、うめき声と共に、激しく同じ動作を繰り返す悲嘆のダンス)があまりにも胸に刺さるために、どのシーンも悲しく、切ない印象で上書きされてしまった感があります。もの悲しい犬の遠吠えが耳から離れません。


『子どもたちの歌う声がきこえる』

 黒田育世さんを含むBATIKのメンバー7名と、客演の男性ダンサー3名、合わせて10名が踊る幻想的な作品です。


[キャスト他]

振付: 佐多達枝
台本: 河内連太
振付助手: 斎藤隆子
出演: 
黒田育世、伊佐千明、大江麻美子、大熊聡美、熊谷理沙、田中すみれ、政岡由衣子(以上BATIK)
小出顕太郎(岩田バレエ団)、中弥智博(東京シティバレエ団)、牧村直紀(谷桃子バレエ団)


 投影された抽象絵画(深い森のようにも、カビのコロニーの拡大イメージにも見えます)を背景に、全員がフード付きの白い衣装を着て踊ります。人間界とは関わりのない、深い森の精たちが踊っているのを、こっそりのぞき見ているような印象です。単純に楽しく踊っているかと思うと、大きなものに怯えたり、割とあっさり死んでしまったり、けっこう感情を揺さぶってきます。

 森の木漏れ日を連想させる美しい絵を背景に、手前に倒れて死んでいるシーンはちょっと忘れがたいものが。

 全員が無個性な白い服で登場するにも関わらず、黒田育世さんが登場すると場の雰囲気が変わります。同じ振りでも、非常に細かく、精微に動いていて、どうにも「怖い」という印象が残りました。



タグ:黒田育世
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