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『UFOにあいたかった 三島由紀夫から吉田類まで』(朝日新聞、小泉信一) [読書(オカルト)]

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1970年代の日本を席巻したUFOブーム。テレビや新聞で、連日のようにUFO発見談が報じられたあの時期、不可思議な存在へと惹かれた人々は当時何を思い、今は何を考えているのか。UFO発見談が語り継がれる土地を訪ねながら考えました。
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Kindle版No.5


 あの空前のUFOブームとは何だったのか。三島由紀夫から吉田類まで、「UFOふれあい館」から銚子電鉄「ロズウェル」駅まで、日本各地のUFOゆかりの土地と人をたずねて回った取材記。2017年10月、朝日新聞に連載された記事をまとめた電子書籍。Kindle版(朝日新聞社)配信は2017年12月です。


 UFOにまつわる土地に行って関係者に取材する、という朝日新聞の連載記事をまとめた一冊です。事件として取り上げられているのは「甲府事件」「介良事件」「うつろ舟」「銚子事件」「毛呂山事件」など、UFOファンにはお馴染みのものばかり。特に新しい情報などはありません。その辺を期待して読むと、たぶんがっかりします。

 ちなみにUFOは、ほぼ完全に「懐かしいあの時代の象徴」「あの頃のアイドルは今」という、ノスタルジーの対象として扱われています。

 全体は10の章から構成されています。


第1章 核の脅威を考えた三島由紀夫
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「アメリカでは円盤を信じないなんてのは相手にされないくらい、一般の関心も研究も盛んですよ。ラジオでも午前1時の深夜放送に円盤の時間があるからね」
 みずからの人生と肉体をもって思想を現実化させようとした三島。およそ純文学の世界になじまないように思われる空飛ぶ円盤に本格的な興味を抱いたのは、フランスの新聞記者A・ミシェルが書いた「空飛ぶ円盤は実在する」(56年、邦訳)を読んでから。
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Kindle版No.29

 「日本空飛ぶ円盤研究会」の会員にして、『美しい星』を書いた三島由紀夫。そのUFOとの関わりを取材します。


第2章 理解されない「高遠なる趣味」
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 熱海(静岡県)でも夏、三島はホテルに双眼鏡を携え、毎晩、夜空を観察していたそうである。「ついに目撃の機会を得ませんでした。その土地柄からいっても、ヘタに双眼鏡に凝っていたりすると、疑はれて困ります。世間はなかなか高遠なる趣味を解しません」。日本空飛ぶ円盤研究会の会誌「宇宙機13号」(57年7月発行)にそう書いた。
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Kindle版No.54

 三島由紀夫が駆けつけた「目撃スポット」である静岡県の爪木崎。その足跡をたどり、目撃者を探します。


第3章 空飛ぶ円盤、光るわけは
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 電線を使わずに電力を送る「テスラコイル」の実演をしてくれた。コイルを巻いた装置に円形の蛍光灯を近づけると高周波、高電圧の働きで放電され、光るというのである。たしかに光る、光る。
 「遠い宇宙からやって来るUFOも、この無線送電によって光るのではないか」
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Kindle版No.98

 福島市飯野町の「UFOふれあい館」をたずね、元館長の木下次男に取材します。


第4章 茶色い顔で「キュルキュル」と
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 「そんなものは絶対に存在するはずはないと笑いものになったときもある。でも、存在するかもしれない。『かもしれない』という気持ちが大切なんです」
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Kindle版No.112

 「UFOふれあい館」で、甲府事件について調べました。


第5章 中学生が捕まえた小型物体
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 あれから45年。少年たちは60に手が届く年齢になっているだろう。地元の情報通を通じて、取材を申し込んだ。
 だが8月下旬、私が高知入りしたとき、「申し訳ないが、お断りしたい」と返事が寄せられた。
(中略)
 それでも現場だけは行きたい。訪れると、介良富士とも呼ばれる小富士山が見えた。高さ170メートルほど。ふもとには住宅や田畑が広がり、ニュータウンも造成されている。「介良事件」という名前すら知らない新住民が結構大勢いるのではないか。
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Kindle版No.145

 高知県の介良に行き、介良事件の現場を訪れます。


第6章 天の災い?漂着の「うつろ舟」
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 民俗学者の柳田国男は論文「うつぼ舟の話」(1926年)の中で、絵に描かれた文字が世界のどこにも存在しないことから「駄法螺(だぼら)」と切り捨てた。だがその後、同じような内容を伝える江戸時代後期の古文書がこれまでに約10点あちこちから見つかっている。しかもほとんどの文書に「舟」と「箱を抱える女性」、解読不能の謎の「異形文字」という3点セットが描かれているのだ。
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Kindle版No.172

 みんな大好き「うつろ舟」を紹介。現場へと向かいます。


第7章 言葉が通じない謎の美女
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犬吠駅の隣駅は「ロズウェル」と愛称がついている。渡辺に尋ねると、「1956年に起きた銚子事件がもとになっています。日本のロズウェル事件と呼ばれているのです」。
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Kindle版No.214

 「うつろ舟」を求めて千葉県銚子に向かったところ、「日本のロズウェル事件」こと銚子事件に興味が湧きました。


第8章 「ロズウェル駅」の由来は
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江戸時代の「うつろ舟」伝説を研究する岐阜大名誉教授の田中嘉津夫(70)は推測する。
 そのうえで田中は「私はUFOには懐疑的だ。だが毛呂山事件の興味深い点は、失われた時間(ミッシングタイム)に似た体験を、UFOマニアとは思えない男性がしたことだろう」と話す。
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Kindle版No.246

 銚子事件を追って銚子電鉄の君ケ浜駅こと「ロズウェル駅」に向かい、そこで「うつろ舟」研究者から毛呂山事件について話を聞きます。


第9章 あの酒場詩人も……
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四国山地の尾根沿いを走る天空の道は「UFOライン」とも呼ばれている。同じような場所は各地にあるのだろう。 北海道南西部の渡島(おしま)半島にある八雲(やくも)町もその一つ。(中略)このあたりでUFOがよく消えることから、マニアの間では「UFOの墓場」とさえ言われていた。
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Kindle版No.272

 四国に飛んで、人気テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」に出演する酒場詩人、吉田類に取材します。


第10章 地球が平和だからこそ
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「日本のピラミッド」説もある黒又山(くろまたやま)(標高281メートル)に向かった。別名「クロマンタ」。きれいな円錐(えんすい)形をしているのが分かる。「昔、あるグループが地下レーダー調査をしたことがありました。ふもとから山頂にかけて階段状になっており、頂上の下に空洞があることが分かったのです」
 黒又山の近くには不思議な形状をした大湯環状列石(おおゆかんじょうれっせき)(ストーンサークル)がある。「石が持つ特別なエネルギーを感知してUFOが飛来する」。そう語る愛好家もいるが、さすがに可能性は低いだろう。
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Kindle版No.295


 最後の取材先は秋田県鹿角市。「鹿角不思議研究所」所長の駒ケ嶺政也と共に「日本のピラミッド」説もある黒又山へ。

「未知なるものへのロマンが、世俗にそまった私たちの心を洗ってくれるはずだ。地球が平和だからこそ、UFOも楽しめるのである」(Kindle版No.308)という、いかにも朝日新聞らしいシメで終わります。旅費取材費すべて新聞社負担で、全国のUFOスポットをまわる旅。個人的には、それこそが本当のロマンというものではないかと、そう思いました。


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