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『うとぅ り』(関かおり、PUNCTUMUN) [ダンス]

 2017年6月30日は夫婦でシアタートラムに行って関かおりさんの新作公演を鑑賞しました。関かおりさんを含む10名が出演する75分の作品です。


[キャスト他]

演出・振付: 関かおり
出演: 北村思綺、後藤ゆう、小山まさし、清水駿、鈴木清貴、髙宮梢、矢吹唯、山田花乃、吉田圭、関かおり


 丸く区切られた舞台。奥手側は半円状の「すだれ」で仕切られています。この丸いエリアに出演者たちが唐突に入ってきて、うねうね~と人外な動きを披露し、またふらふら~と舞台袖やすだれの向こうに消えてゆく。常に何人かは舞台上で蠢いていて、数名ずつの出入りによって舞台上にいるメンバーがゆるやかに交替してゆく。

 丸いエリアを観客席から見下ろす感じが、まるで顕微鏡をのぞいたときの視界のよう。

 その不思議な、人間のものとは思えない、しかし生物として説得力のある動きを見ていると、どうしても「謎の微生物のコロニーを顕微鏡で観察している」という印象を受けます。ときどき背景音(チリンチリンという金属音、羽虫がざわざわ蠢いているような羽音、一度だけ何か重い物体を床に倒す音が響いてびびった)が流れる他は、終始無音、という演出もその印象を強めます。舞台衣装も生物的で素敵。

 とにかく動きが素晴らしく冴えていて、同じ振りが繰り返されるということがほとんどないのです。人間のものではない、が、微生物だと思えば分かる、そんな不思議な動きを、あれだけ沢山つくり出すというのがそもそも凄い。実際に踊ってみせる出演者たちも凄い。骨格で支え筋肉で動かす、というヒトとしての基本をてんでなかったことにするような勢い。

 ほとんどの場面は無秩序というか、微生物なりの理に基づいて、うねうね、くねくね、ゆらゆら、ひょこひょこ、ぴくぴく、している個体の集合なのですが、ときどき創発というか自己組織化というか、秩序や構成のようなものがさり気なく生まれて、やがてまたカオスに戻ってゆく。唐突に個体が別の個体に飛びついて合体する(と思ったらときに床に落とす)とか、数個体が何だか変な具合に連結したまま蠢く(生殖しているのか捕食しているのか群体を構成しているのか、何だかよく分からないけど、きもかっこいい)とか。

 黙ってじっと観察しているうちに、生物として在る、というキホンを思い出してゆくような、不思議な感覚が込み上げてくる舞台です。



タグ:関かおり