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『ふしぎの国のアリス』(小野寺修二、カンパニーデラシネラ) [ダンス]

 2017年6月11日は夫婦で新国立劇場に行ってカンパニーデラシネラの新作を鑑賞しました。ルイス・キャロルの原作をもとにした105分(途中休憩20分を含む)の公演です。


[キャスト他]

振付・演出: 小野寺修二
出演: 荒悠平、王下貴司、大庭裕介、斉藤悠、崎山莉奈、仁科幸、藤田桃子、小野寺修二


 「夏のこども劇場セット」の一部ということで子供にも楽しめる作品となっていますが、そこはやはり小野寺修二さんの作品。

 舞台上にニヤニヤ笑う小野寺さんが立っていて、崎山莉奈さんが「バッカみたい」と吐き捨て、藤田桃子さんが「んまー、なんてこと!」とか脈絡なく叫び、大庭裕介さんが大真面目な顔で観客に状況説明するふりをして、その背後でみんなが不思議な踊りを踊っていれば、そのまま『不思議の国のアリス』の世界。なぜ今までやらなかったのかと思うほど、カンパニーデラシネラにぴったりの題材です。

 最初に舞台上に置いてある傾いて歪んだ台形の机から始まって、様々なサイズの椅子、壁になったり部屋になったりと大活躍する複数のドアなど、舞台道具そのものがキュートです。実質的な扉として使われるルービックキューブも印象的。

 それらのギミックを駆使しつつ、全員が完璧な振付でぶつからずに紙を受け渡す同時多発的書類まわし、アリスが歩くスピードに合わせて次に踏むべき椅子をみんなで背後から前に受け渡し続ける無限軌道空中歩行など、人気の演出が出し惜しみなく投入されます。

 穴への落下、大きくなったり、小さくなったり、涙に溺れたり、といったシーンの演出がひとつひとつ工夫されていて飽きません。ようやくドアを開けてワンダーランドに入ったところで前半が終わり、後半はもう赤の女王、という大胆な途中省略もクール。

 大胆といえば、前半のアリス役が、傍観者の立場で事態が混乱してゆくのを眺めているような崎山莉奈さんと、積極的に事態を混乱させてゆく藤田桃子さんのダブルキャスト、というのも見事な演出だと思います。

 あと、崎山莉奈さんのアリスがレザージャケットびしっと決めて啖呵を切るのがカッコよくて、どちらかといえばエミリー・ザ・ストレンジ。そういやエミリーってアリスが下敷きになってますよね。原作のアリスもけっこう相手構わず喧嘩売ってゆくタイプだし。それと崎山莉奈さんが唐突にソロで踊るシーンは素敵でした。

 幕間には、子供たちが飽きないようにと玩具を用いた参加型パフォーマンスで注意を引きつけつつ、そのままホールから座席に誘導してゆくという気配り。親子で楽しめる演目として、小野寺版『ロミオとジュリエット』のように何度も上演されることになるといいなあと思います。



タグ:小野寺修二
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