『ブルーバックス通巻2000番小冊子』 [読書(サイエンス)]
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水深6500メートルの深海に潜って未知の生物を探す研究者もいれば、地上400キロメートルに浮かぶ宇宙ステーションで活動する研究者もいる。ペンと紙だけで理論と格闘する分野もあれば、何百人もの研究者が一丸となって、1周27キロメートルもの巨大加速器で実験を行う科学もある。1ミリメートルの1000分の1よりも小さな細胞小器官の働きを解き明かそうとする研究もあれば、何十万光年にも広がる銀河の謎を探る研究もある。ふつうに暮らしていたら出会うことのないような「すごい」人たちがいて、「すごい」研究があって、科学の世界は興味が尽きることがありません。
そんな科学の面白さを、専門家ではない一般の読者に伝えることを使命とするブルーバックスは、2017年、創刊から55年目を迎え、刊行点数2000点を達成しました。
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Kindle版No.1
講談社ブルーバックスの通巻番号2000番突破記念として発行された小冊子。出版は2017年2月、Kindle版配信は2017年2月です。
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日本が希望と熱気に満ちていた1963年9月、「科学をあなたのポケットに」を発刊のことばとしてブルーバックスは創刊した。
有人宇宙船ボストーク1号に搭乗し、人類で初めて宇宙空間に飛んだソ連の宇宙飛行士ガガーリンが「地球は青かった」と言ったのが1961年。その言葉が人々の記憶にまだ新しく、ブルーは科学を表す象徴的な色ということで、シリーズ名称が決まった。現在も刊行している新書レーベルとしては、岩波新書(1938年創刊)、中公新書(1962年創刊)についで日本で3番目に長い歴史を持つ。
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Kindle版No.31
というわけで、いつもお世話になっている「科学をあなたのポケットに」の講談社ブルーバックス。その通巻番号2000番突破記念小冊子です。小冊子とはいってもけっこうな読みごたえがあります。全体は4つのパートから構成されています。
「第1部 科学技術とブルーバックス2000冊のあゆみ」
創刊から現在に至るまでのブルーバックスの歴史が語られます。ベストセラーの背後には、そのときの世相や科学界での話題が強く影響しているということがよく分かります。
「第2部 特別エッセイ」
著者や著名人がブルーバックスについて語るエッセイ。
著者が語る私とブルーバックス
『物理はなぜ不人気か』(小林誠)
『ブルーバックスのせいでサイエンス作家になってしまったオレ』(竹内薫)
『ブルーバックスという連鎖』(池谷裕二)
『ブルーバックスによせて』(福岡伸一)
『インフレーション理論、天文学的実証への期待』(佐藤勝彦)
『超弦理論が究極の基本法則となる日には』(大栗博司)
『「死なないやつら」とは何か』(長沼毅)
『科学者への夢を断った日』(山根一眞)
私の本棚にあるブルーバックス
『ポケットサイズだからこそ』(上橋菜穂子)
『私が「常備」する4書目』(佐藤優)
『「理系の知の世界」を知るための地図』(森田真生)
『ブルーバックスから広がる想像力』(山崎直子)
『立ち読み気分で手軽に楽しめる科学新書』(松尾貴史)
『私にとってのブルーバックス』(松本大)
ブルーバックスを彩るイラスト
『ブルーバックス2000番によせて』(永美ハルオ)
『ブルーバックスのせいでサイエンス作家になってしまったオレ』(竹内薫)より
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オレもすでに56歳になった。最近は朝の3時から夜の7時まで、一日16時間も働いているし、土日もない。こんな状態では、いつ地獄からお迎えが来るかわからないので、編集長さま、どうか、「しゃべる」企画でブルーバックスからベストセラーを出す、というオレの夢をかなえておくれ。
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Kindle版No.501
『ブルーバックスによせて』(福岡伸一)より
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ブルーバックスは理系少年のスイートスポットを実に巧みにくすぐってくると思う。本棚からは『図解・地下鉄の科学』や『図解・超高層ビルのしくみ』も出てきた。わたしたちオタクはこういう図解ものに極めて弱いのである。つい買ってしまう。
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Kindle版No.575
「第3部 データでみるブルーバックス」
ブルーバックスシリーズに関する様々なランキング。
・歴代発行部数ベスト10
・21世紀の発行部数ベスト10
・歴代刷数ベスト10
・著者別冊数ランキング
歴代発行部数ランキングでは、2位と3位がそれぞれ累計63万部で並んでいるのに対して、1位だけ76万部と突出したベストセラー。この三冊の書名を当てられればブルーバックスマニアといえるでしょう。
21世紀の発行部数ランキングでは、21世紀になってから発行されたブルーバックスのうち最も売れた本が、実は21世紀に入って最初に出版された一冊だという豆知識。書名が当てられますか?
歴代刷数ランキングでは、100刷に達した本がブルーバックス全体でもわずか一冊しかないという事実が意外です。しかもその本は歴代発行部数ベスト1ではないという。
著者別冊数ランキングでは、6位の著者が10冊、2位の著者でも12冊なのに、1位の著者だけ17冊という著書数をほこっているのに驚きます。誰だか分かりますか?
「第4部 編集部が選ぶ30冊一気読み」
選ばれた30冊から、序文や「はじめに」などの導入部を抜粋して掲載してくれます。例え話をしたり、エッセイ風だったり、煽ったり、はったりかましたり。とにかく様々な工夫により何とか読者を読む(買う)気にさせようと払っている涙ぐましい努力に刮目。
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