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『up』(勅使川原三郎、山下洋輔、佐東利穂子、馬) [ダンス]


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ここでは「勅使川原作品」のオブジェになる覚悟をしなければならないと思っている。何しろ「本物の馬」を出すという人ですからね。こればっかりはぼくも初めての経験だ。馬の表現にどう呼応すれば良いのか。蹴られたらどうしよう。
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山下洋輔(公演パンフレットより)


 2016年10月9日は、夫婦で東京芸術劇場プレイハウスに行って、勅使川原三郎さんと山下洋輔さんが共演する公演を鑑賞しました。山下洋輔さんのピアノ演奏、勅使川原三郎さんと佐東利穂子さん(そして馬)のダンス。80分の舞台です。


[キャスト他]

振付・演出: 勅使川原三郎
ピアノ演奏: 山下洋輔
出演: 勅使川原三郎、山下洋輔、佐東利穂子、馬


 舞台中央やや左よりにグランドピアノが置いてあり、ここで山下洋輔さんががんがん演奏します。勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが、交替で、ときに一緒に、踊ります。馬は出演者にカウントするとして、他に舞台装置はなく、ひたすら勅使川原三郎さんの魔術的な照明効果だけで観客を魅了してしまう手際が素晴らしい。

 これまで観た勅使川原三郎さんの公演からはいつも鬼気迫るような迫力が感じられたのですが、今回はとても楽しそうな印象。後半、ピアノ演奏がないまま無音で踊るシーンがけっこうあるのですが、耳には聞こえないピアノが脳裏で鳴り続けているような、その音と一体で踊っているような、そんな錯覚にとらわれます。

 佐東利穂子さんが乗った馬が登場するシーンは最大の見せ場で、ピアノの周囲をかっぽ、かっぽ、かぽ、かっぽ、とリズミカルに音を立てて歩き(その足音がタップダンスを踊っているような感じに響く)、山下洋輔さんのピアノがそれに見事にあわせてゆきます。

 一周だけかと思ったら、何周も続けてくれる馬パーカッション。ときどきピアノと合わさるようにぴたりとポーズを決めたり。「山下洋輔+ピアノ+馬+佐東利穂子」という構図がそのまま影絵になるシーンなど、もう思わず息をのむ美しさ。馬、すごいな馬。

 ピアノもがんがん盛り上がり(ひじ打ち出た)、勅使川原さんも佐東さんも延々と踊り続けるラストはもう大盤振る舞いというか、最初に体力が尽きるのは誰か状態で盛り上がりました。



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