『宇宙生命論』(海部宣男、星元紀、丸山茂徳) [読書(サイエンス)]
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私たちは歴史上はじめて,地球外に生命の存在を見出すことに大きな科学的期待を抱き,そうした疑問に正面から向き合う時代にいる.世界の多くの天文学,惑星科学,生物学の研究者たちが,宇宙史と生命の本質に関わるこの課題に,真剣に取り組んでいる.その先には,私たち地球上の生命とは,そして知性を持ち文明を築いた人類とは,この宇宙の中でどのような存在なのかを理解してゆく鍵も,見えてくるかもしれない.(中略)本書は,そうした見地を共にする天文学・地球惑星科学・生物学・人類学の研究者の,6年にわたる共同作業から生まれたものである.
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「はじめに 生命の広大な舞台としての宇宙」より
生命はどのようにして誕生したのか。どこでどのようにして地球外生命を探せばいいのか。そしてその発見は、私たち地球生命について何を明らかにするだろうか。各分野の専門家が集まり、現在までに得られている知見を一冊にまとめたアストロバイオロジー(宇宙生物学)の教科書。単行本(東京大学出版会)出版は2015年7月です。
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こうした観測や探査技術の進展から見て,(1)太陽系内の惑星・衛星における過去あるいは現在の生命の存在確証(無人・有人の探査による),(2)系外惑星における生命活動の確証(天文観測による),そして,(3)地球外文明の存在に関して科学的に意味を持つ情報(発展型SETIによる),という3つの探査からの初期的な答えが,いずれも早ければ2030年代,遅くとも21世紀の前半には得られるものと期待している.
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単行本p.172
地球生命の誕生、宇宙生命の探査、これらを研究するアストロバイオロジーの教科書です。生物学、古生物学、物理化学、天文学、地球科学、惑星科学、系外惑星科学、SETI、そして人類学に至るまで、多種多様な研究分野の専門家が集まって、この新しい研究分野に確固たる基礎を築こうとする努力の結晶、といっても過言ではありません。
全体は5つの章から構成されています。
「第1章 生命とは何か」
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生命の定義に迫るには,なぜ遺伝子は核酸なのか,核酸はなぜ4種のプリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドからできている4文字系言語なのか,タンパク質はなぜ,20種のアミノ酸の誘導体なのか,細胞膜脂質はなぜグリセリンの誘導体なのか,なぜ糖代謝の中心はグルコースなのか,核酸の糖はグルコースではいけなかったのかといった生体部品,生体反応の「因果律」を理解する必要がある.これがわかると,地球生命の根源的な理解だけではない,宇宙生命の構成や属性も推理することができるはずである.
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単行本p.36
まずは、生命とは何であるかを論じます。私たちが知っている生命はすべて単一の系統から生じた「多様だが本質的には同じ」ものであるため、地球外生命を視野に入れて考えるためには、生命というものをより本質的・根本的にとらえ直す必要があることを学びます。
生命の定義、生命の起源(ミセル構造、RNAワールド、RNA-タンパク質ワールド、DNAワールド)、生命の基盤となる元素、水の重要性、酸化還元、生物の多様性、など。
「第2章 地球史と生物進化」
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このように,地球における生命の起源と進化,その地球史との関係は,地球固有の問題であると同時に,より普遍的な問題を理解する糸口でもある.太陽系探査や系外惑星観測を通して地球とそこに生息する生物の普遍性と特殊性を明らかにすることは,アストロバイオロジーの必然的な方向性であるといえよう.
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単行本p.84
地球外における生命の進化について考えるための基礎として、地球生命の進化と地球の歴史がどのように相関しているか、地球環境と生命の共進化について学びます。
星間分子雲、生命素材物質の地球への運搬、生命の起源と初期進化、全球凍結(スノーボールアース)と生命進化、地球史と生命進化の相関、など。
「第3章 ハビタブル惑星」
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これまでの観測データや惑星形成モデルからの推定によると,ハビタブルゾーンの地球サイズ程度の惑星を太陽型恒星が持つ確率は10%を超えるだろうとされている.(中略)少なくとも,惑星の軌道半径やサイズ(または質量)で言う限り,地球のような惑星はあり余るほど存在するということが明らかになってきたのである.
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単行本p.111
既に統計処理の対象になるほど大量に発見されている太陽系外惑星について、その基礎を学び、生命の発生が期待できる条件について論じます。
惑星形成モデル、スーパーアース、水の供給プロセス、ハビタブル条件、など。
「第4章 地球外生命の探査」
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系外惑星の探査とその統計的分類は,すでに天文学における中心的研究分野として確立した.しかしそこからさらに宇宙生物学へ踏み出すためには,地球型惑星の直接撮象・分光観測を通じて,惑星の大気組成と表面環境を探ることが不可欠である.(中略)
その模擬観測とも言うべき画像が,宇宙探査機ボイジャー1号が1990年2月14日,太陽からおよそ60億km離れた場所から,わが地球を撮影した「ペイル・ブルー・ドット」である.さらに2013年7月20日には,土星探査機カッシーニが,地球と月を撮影した.事前の呼びかけに応じて,その瞬間地球上で2万人を超える人々が,土星の方向に手を振っていたという.むろん実際の「もう1つの地球」の撮象は段違いに困難であるが,それがもたらしてくれるであろうワクワク感は容易に想像できる.
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単行本p.140
地球外生命を発見するためには、どこを、どのようにして探せばいいのか。火星、エウロパ、系外惑星探査を取り上げ、現在までの探査状況と今後の展望をまとめます。
火星探査、エウロパ探査、太陽系外惑星探査の歴史、探査手法、精密調査の方法、将来計画、など。
「第5章 人類・文明と宇宙知的生命探査」
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ある天体で発生した生命から,「どのようにして」「どのような条件で」「どれくらいの割合で」知性が出現し技術文明に至るものか,実証的にはもちろん未知数である.ここで私たちは,かつて惑星の存在について,また生物の発生に関して提起されたと同じ疑問を,文明について問うことになる.「地球文明は,宇宙で2つとない奇跡の産物だろうか?」
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単行本p.170
私たちの「知性」はどのようにして進化してきたのか、それは系外惑星でも普遍的に生じ得るものか、そしてその文明はどのくらいの期間継続するものなのか。地球外文明探査、SETIの概要を学びます。
脳の進化、知的生物としてのヒトの特徴、人類史、ドレイク方程式と宇宙文明交信トライアルの歴史、SETIの可能性、など。
というわけで、幅広い研究分野にまたがる最新の知見を一冊にまとめたテキストで、アストロバイオロジーに興味がある方は必読だと思います。もちろん参考文献リストは充実しており、ここを手がかりにさらに深く知りたい分野の本を読み進めるのがよいでしょう。
巻末には「アストロバイオロジーを学べる大学,研究できる大学院」の情報も載っています。我こそはと意気込む若者の皆さんが、本書をきっかけに、アストロバイオロジストへの道を切り拓いてゆくことを期待します。
私たちは歴史上はじめて,地球外に生命の存在を見出すことに大きな科学的期待を抱き,そうした疑問に正面から向き合う時代にいる.世界の多くの天文学,惑星科学,生物学の研究者たちが,宇宙史と生命の本質に関わるこの課題に,真剣に取り組んでいる.その先には,私たち地球上の生命とは,そして知性を持ち文明を築いた人類とは,この宇宙の中でどのような存在なのかを理解してゆく鍵も,見えてくるかもしれない.(中略)本書は,そうした見地を共にする天文学・地球惑星科学・生物学・人類学の研究者の,6年にわたる共同作業から生まれたものである.
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「はじめに 生命の広大な舞台としての宇宙」より
生命はどのようにして誕生したのか。どこでどのようにして地球外生命を探せばいいのか。そしてその発見は、私たち地球生命について何を明らかにするだろうか。各分野の専門家が集まり、現在までに得られている知見を一冊にまとめたアストロバイオロジー(宇宙生物学)の教科書。単行本(東京大学出版会)出版は2015年7月です。
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こうした観測や探査技術の進展から見て,(1)太陽系内の惑星・衛星における過去あるいは現在の生命の存在確証(無人・有人の探査による),(2)系外惑星における生命活動の確証(天文観測による),そして,(3)地球外文明の存在に関して科学的に意味を持つ情報(発展型SETIによる),という3つの探査からの初期的な答えが,いずれも早ければ2030年代,遅くとも21世紀の前半には得られるものと期待している.
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単行本p.172
地球生命の誕生、宇宙生命の探査、これらを研究するアストロバイオロジーの教科書です。生物学、古生物学、物理化学、天文学、地球科学、惑星科学、系外惑星科学、SETI、そして人類学に至るまで、多種多様な研究分野の専門家が集まって、この新しい研究分野に確固たる基礎を築こうとする努力の結晶、といっても過言ではありません。
全体は5つの章から構成されています。
「第1章 生命とは何か」
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生命の定義に迫るには,なぜ遺伝子は核酸なのか,核酸はなぜ4種のプリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドからできている4文字系言語なのか,タンパク質はなぜ,20種のアミノ酸の誘導体なのか,細胞膜脂質はなぜグリセリンの誘導体なのか,なぜ糖代謝の中心はグルコースなのか,核酸の糖はグルコースではいけなかったのかといった生体部品,生体反応の「因果律」を理解する必要がある.これがわかると,地球生命の根源的な理解だけではない,宇宙生命の構成や属性も推理することができるはずである.
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単行本p.36
まずは、生命とは何であるかを論じます。私たちが知っている生命はすべて単一の系統から生じた「多様だが本質的には同じ」ものであるため、地球外生命を視野に入れて考えるためには、生命というものをより本質的・根本的にとらえ直す必要があることを学びます。
生命の定義、生命の起源(ミセル構造、RNAワールド、RNA-タンパク質ワールド、DNAワールド)、生命の基盤となる元素、水の重要性、酸化還元、生物の多様性、など。
「第2章 地球史と生物進化」
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このように,地球における生命の起源と進化,その地球史との関係は,地球固有の問題であると同時に,より普遍的な問題を理解する糸口でもある.太陽系探査や系外惑星観測を通して地球とそこに生息する生物の普遍性と特殊性を明らかにすることは,アストロバイオロジーの必然的な方向性であるといえよう.
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単行本p.84
地球外における生命の進化について考えるための基礎として、地球生命の進化と地球の歴史がどのように相関しているか、地球環境と生命の共進化について学びます。
星間分子雲、生命素材物質の地球への運搬、生命の起源と初期進化、全球凍結(スノーボールアース)と生命進化、地球史と生命進化の相関、など。
「第3章 ハビタブル惑星」
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これまでの観測データや惑星形成モデルからの推定によると,ハビタブルゾーンの地球サイズ程度の惑星を太陽型恒星が持つ確率は10%を超えるだろうとされている.(中略)少なくとも,惑星の軌道半径やサイズ(または質量)で言う限り,地球のような惑星はあり余るほど存在するということが明らかになってきたのである.
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単行本p.111
既に統計処理の対象になるほど大量に発見されている太陽系外惑星について、その基礎を学び、生命の発生が期待できる条件について論じます。
惑星形成モデル、スーパーアース、水の供給プロセス、ハビタブル条件、など。
「第4章 地球外生命の探査」
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系外惑星の探査とその統計的分類は,すでに天文学における中心的研究分野として確立した.しかしそこからさらに宇宙生物学へ踏み出すためには,地球型惑星の直接撮象・分光観測を通じて,惑星の大気組成と表面環境を探ることが不可欠である.(中略)
その模擬観測とも言うべき画像が,宇宙探査機ボイジャー1号が1990年2月14日,太陽からおよそ60億km離れた場所から,わが地球を撮影した「ペイル・ブルー・ドット」である.さらに2013年7月20日には,土星探査機カッシーニが,地球と月を撮影した.事前の呼びかけに応じて,その瞬間地球上で2万人を超える人々が,土星の方向に手を振っていたという.むろん実際の「もう1つの地球」の撮象は段違いに困難であるが,それがもたらしてくれるであろうワクワク感は容易に想像できる.
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単行本p.140
地球外生命を発見するためには、どこを、どのようにして探せばいいのか。火星、エウロパ、系外惑星探査を取り上げ、現在までの探査状況と今後の展望をまとめます。
火星探査、エウロパ探査、太陽系外惑星探査の歴史、探査手法、精密調査の方法、将来計画、など。
「第5章 人類・文明と宇宙知的生命探査」
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ある天体で発生した生命から,「どのようにして」「どのような条件で」「どれくらいの割合で」知性が出現し技術文明に至るものか,実証的にはもちろん未知数である.ここで私たちは,かつて惑星の存在について,また生物の発生に関して提起されたと同じ疑問を,文明について問うことになる.「地球文明は,宇宙で2つとない奇跡の産物だろうか?」
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単行本p.170
私たちの「知性」はどのようにして進化してきたのか、それは系外惑星でも普遍的に生じ得るものか、そしてその文明はどのくらいの期間継続するものなのか。地球外文明探査、SETIの概要を学びます。
脳の進化、知的生物としてのヒトの特徴、人類史、ドレイク方程式と宇宙文明交信トライアルの歴史、SETIの可能性、など。
というわけで、幅広い研究分野にまたがる最新の知見を一冊にまとめたテキストで、アストロバイオロジーに興味がある方は必読だと思います。もちろん参考文献リストは充実しており、ここを手がかりにさらに深く知りたい分野の本を読み進めるのがよいでしょう。
巻末には「アストロバイオロジーを学べる大学,研究できる大学院」の情報も載っています。我こそはと意気込む若者の皆さんが、本書をきっかけに、アストロバイオロジストへの道を切り拓いてゆくことを期待します。
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