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『なっちゃんのなつ(科学絵本「かがくのとも」2003年9月号)』(伊藤比呂美:文、片山健:絵) [読書(小説・詩)]

 なっちゃん、ひとりで、かわらあれくさ。伊藤比呂美さんの詩が生と死に肉薄する、5歳から6歳向けの科学絵本。単行本(福音館書店)出版は2003年9月です。

 友だちの家に誰もいなかったので、一人で川原に遊びに出かけた、なっちゃん。


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せいばんもろこしが ほを ゆすって
なっちゃんの ほっぺたに さわる
せいたかあわだちそうが ぐんぐん のびる

おおあれちのぎくが ゆれる
ひめむかしよもぎも ゆれる
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 草木の生命力に圧倒されそうな緑のなか、情け容赦なしに全力で生きているなっちゃん。


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せみの ぬけがらは
もう みつからない
そのかわり ほら
せみの しがいが おちている
あそこにも ここにも
しずかに しずかに しんでいる せみ
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 生きるということは、いずれ死ぬということ。おばあちゃんに連れられてお墓参りに行ったなっちゃんは、かすかに、そのことに気づいたようです。


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みずが ながれる
おそなえを ながす

だれが のってるの?
どこまで いくの?

むこうぎしで
がまのほが ゆれている
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 というわけで、

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子供の強い好奇心=科学の芽を大きく伸ばす

子どもたちに身近な植物、動物、モノ、現象を、それまで子どもたちが見ていた視点とは異なる視点で見せてあげる
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福音館書店「月刊 かがくのとも」ウェブページより。

という主旨で作られた絵本なのですが、やはり伊藤比呂美さんが書くと、生と死に肉薄するような詩作になってしまうというのが恐ろしい。


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