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『MORPHED モーフト』(振付:テロ・サーリネン) [ダンス]

 2015年6月21日は、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行って、フィンランドのテロ・サーリネン・カンパニーの公演を鑑賞しました。エサ=ペッカ・サロネン作曲の3曲に乗せて8名の男性ダンサーたちが踊る1時間の舞台です。

 今回のテロ・サーリネン・カンパニー初来日公演、そのわずか数日前(2015年6月18日)に、「大駱駝艦」を旗揚げした室伏鴻さんが死去、というニュースが流れました。かつて日本で「舞踏」を学んだというテロ・サーリネン氏にとってもかなりショックだったらしく、急遽パンフレットに次のような追悼を書いた紙が加えられていました。

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  私たちはこの公演を室伏鴻氏の想い出と
  彼のダンス芸術への貢献に捧げます。

    テロ・サーリネン・カンパニー
    彩の国さいたま芸術劇場
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 さて、幕が上がると、天井から太いロープが多数垂れ下がって、簾のように舞台の三方を囲んでいます。8人のダンサーたちが、それぞれ黒いフードを着て個性を消し、機械的な動き(数歩あるいては直角ターン)を単調に繰り返します。

 個人的には、学ランを着ているように見えて、あ、『コンドルズ』だ、などと思いましたが。

 曲が進むにつれて、かぶっていたフードを脱ぐ、上着を脱ぐ、最後は上半身裸体、といった感じで肉体を露出してゆくと共に、ダンサーとしての個性も前面に出してきます。正直、そうなるとダンス技量のばらつきが目立つのですが、こう、誰もが自分なりのやり方で頑張って踊っています、という感じが、それこそ『コンドルズ』のような効果を上げています。各人に思い入れを感じるようになるんですね。

 背筋を弓なりにそらして両手をぐぐーっと広げて手首ひらひら、思いっきりジャンプして空中で両手脇に揃えたまましゅっと背筋伸ばし、両膝曲げて四股踏む格好で右手を身体の前に左手を身体の後ろに配置してせーので腰を落として床に触る、とか、特徴的な動きが何度も登場します。結構、好き。音楽との調和も気持ちいい。

 ロープも単なる半透明垂れ幕あつかいではなく、揺らしたり、首吊りしたり、束ねて背負ったり、両手を広げたまま歩いて地引き網方式で集めたり、手足をからめてぶら下がってイワン雷帝ごっこ、といった感じで色々と活用します。照明と音楽の効果は素晴らしく、うごめくロープ簾が様々に変化する印象を与えてくれます。

 「室伏鴻に捧げる」と宣言したので、かなり「舞踏」の影響が強いのかと思っていましたが、あまりそういう印象は受けませんでした。ただ、最後に二人のダンサーがそれぞれじわーっと動く強烈で感動的なソロダンスのシーンがあり、ここはそういう感じも。もう一度観たい場面です。

 全体的に男っぽさむんむん漂う作品で、人によってはセクシーさにやられるかも知れません。

 まったくの余談ですが、与野本町駅前にある巨大な動く彫像(タイトルは『太陽の神話』、私たち夫婦は「謎の宇宙生物」と呼称)が台座だけ残して消えていたのですが、あれは定期的なメンテナンスのためなんでしょうか。撤去されたら悲しい。


振付: テロ・サーリネン
音楽: エサ=ペッカ・サロネン
      無伴奏ホルンのための演奏会用練習曲(2000年)
      フォーリン・ボディーズ(2001年)
      ヴァイオリン協奏曲(2009年)
出演: テロ・サーリネン・カンパニー


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