『海、悲歌、夏の雫など』（千葉聡） [読書（小説・詩）]
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ディフェンスは腰を落として顔上げて世界（コート）で起こることすべて見ろ
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海へ行け ビーチで百本ダッシュしろ ディフェンスで手を抜いてた奴は
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黙り込む仲間に代わり「もっとやります」とカズムは言った 言い切った
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バスケ部の第二顧問という（微妙な）立ち位置から見た、部活に汗を流す若者たちの姿。ありそうでなかったような気がする、熱血スポーツ根性歌集。単行本（書肆侃侃房）出版は2015年4月です。
自分の名前や部員の呼び名がばんばん出てくるのが生々しく、定型詩としての短歌というより、日記の一節がたまたま五七調になっていただけ、という錯覚すらおぼえるような、そんな自然な描写が続きます。季節感も、体育会系。
春は部活。
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野球部の応援のための練習を応援している教師ちばさと
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部活顧問一覧 今年もバスケ部の第二顧問である千葉聡
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何度地に落ちても何度も跳ね上がるバスケットボールと三十七人
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ディフェンスは腰を落として顔上げて世界（コート）で起こることすべて見ろ
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「始めまーす」マイに続いて全員が「はい」と叫んでアップ始まる
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ラントレ中うつむく一年女子に二年女子が「行けるよ」「行けるよ」と言う
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夏は合宿。
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車窓から海が見えると「わぁ」となりホテルが見えるとみな黙りこむ
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全員で土田先生に礼をして午後練（連続五時間）開始
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海へ行け ビーチで百本ダッシュしろ ディフェンスで手を抜いてた奴は
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海は海 唇噛んでダッシュする少年がいてもいなくても海
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合宿は終わってバスを見送って俺に戻った俺（カバン重っ！）
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秋は試合。
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ノリヒコが走る 未来を突き刺して逃げるボールをただ追いかけて
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まだ膝の痛いナオキが踏ん張って打ったシュートに夕日ひとすじ
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フリースロー一本外し二本目は祈り（やその他）のぶん重くなる
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このチームを、チームの誰かを思うゆえ、アオイはルーズボールを追った
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公式戦敗れて土田先生が部員に求めるやる気と誇り
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黙り込む仲間に代わり「もっとやります」とカズムは言った 言い切った
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顧問の土田先生は、たぶん熱血24時間なのでしょうが、第二顧問のちばさとは歌人でもあるため、他にも気がかりなことが色々と。例えば、自分の歌を批判されて落ち込んだり。
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Ｔの字は震えに震え「真剣に歌を詠めよ」と説教ばかり
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「千葉Ｑの歌は未熟だ。歌らしく言葉を加工すべきだ」と説く
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千葉Ｑは強くないから二時間半便座に座って考え込んだ
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Ｔに出す手紙「ご批評感謝します」きっとこの「ご」はきっと、痛い
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ネット上に「千葉の短歌は未熟だが熱い」とあり、ただじっと見つめる
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雑誌にエッセイを連載しないかという話が来たり。
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地下鉄にまず我が影を乗せ千葉に連載させようという雑誌社へ
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編集のＫさんの名刺こんなにも輝く紙がこの世にあるとは
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連載のコンセプトを練る 漫画家の打ち合わせみたいでただただ照れる
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帰りがけに古書店に寄り文庫本『人間失格』初版を購入
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雑誌社に呼ばれたくらいではしゃいでた俺を突き刺す太宰治は
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バスケより、部活より、孤独で厳しく辛い、それが執筆。
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メールにて「連載原稿書き直しのお願い」が来る 胸に重く来る
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面白くなると思って書いたのにダメな比喩、ダメな文、ダメなネタ
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なぜ書けない なぜ一行も浮かばない 閉じたくて閉じられないパソコン
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かっこよく見せる必要なんてない 今までに書いたものすべて消す
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自分らしいダメさおかしさくだらなさ一気に書いてエッセイは成る
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編集のＫさんからのメールにて「ちばさと流」と褒めてもらった
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「連載の初回はこれでいきましょう。また引き続きお願いします」
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というわけで、「真剣に歌を詠めよ」「歌らしく言葉を加工すべきだ」という批判も恐れず（二時間半便座で凹むけど）、見たこと聞いたこと感じたことをびっくりするくらい直球で表現した、内容以前に表現から熱血を感じさせるスポ根歌集です。
ディフェンスは腰を落として顔上げて世界（コート）で起こることすべて見ろ
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海へ行け ビーチで百本ダッシュしろ ディフェンスで手を抜いてた奴は
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黙り込む仲間に代わり「もっとやります」とカズムは言った 言い切った
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バスケ部の第二顧問という（微妙な）立ち位置から見た、部活に汗を流す若者たちの姿。ありそうでなかったような気がする、熱血スポーツ根性歌集。単行本（書肆侃侃房）出版は2015年4月です。
自分の名前や部員の呼び名がばんばん出てくるのが生々しく、定型詩としての短歌というより、日記の一節がたまたま五七調になっていただけ、という錯覚すらおぼえるような、そんな自然な描写が続きます。季節感も、体育会系。
春は部活。
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野球部の応援のための練習を応援している教師ちばさと
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部活顧問一覧 今年もバスケ部の第二顧問である千葉聡
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何度地に落ちても何度も跳ね上がるバスケットボールと三十七人
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ディフェンスは腰を落として顔上げて世界（コート）で起こることすべて見ろ
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「始めまーす」マイに続いて全員が「はい」と叫んでアップ始まる
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ラントレ中うつむく一年女子に二年女子が「行けるよ」「行けるよ」と言う
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夏は合宿。
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車窓から海が見えると「わぁ」となりホテルが見えるとみな黙りこむ
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全員で土田先生に礼をして午後練（連続五時間）開始
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海へ行け ビーチで百本ダッシュしろ ディフェンスで手を抜いてた奴は
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海は海 唇噛んでダッシュする少年がいてもいなくても海
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合宿は終わってバスを見送って俺に戻った俺（カバン重っ！）
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秋は試合。
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ノリヒコが走る 未来を突き刺して逃げるボールをただ追いかけて
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まだ膝の痛いナオキが踏ん張って打ったシュートに夕日ひとすじ
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フリースロー一本外し二本目は祈り（やその他）のぶん重くなる
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このチームを、チームの誰かを思うゆえ、アオイはルーズボールを追った
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公式戦敗れて土田先生が部員に求めるやる気と誇り
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黙り込む仲間に代わり「もっとやります」とカズムは言った 言い切った
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顧問の土田先生は、たぶん熱血24時間なのでしょうが、第二顧問のちばさとは歌人でもあるため、他にも気がかりなことが色々と。例えば、自分の歌を批判されて落ち込んだり。
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Ｔの字は震えに震え「真剣に歌を詠めよ」と説教ばかり
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「千葉Ｑの歌は未熟だ。歌らしく言葉を加工すべきだ」と説く
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千葉Ｑは強くないから二時間半便座に座って考え込んだ
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Ｔに出す手紙「ご批評感謝します」きっとこの「ご」はきっと、痛い
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ネット上に「千葉の短歌は未熟だが熱い」とあり、ただじっと見つめる
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雑誌にエッセイを連載しないかという話が来たり。
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地下鉄にまず我が影を乗せ千葉に連載させようという雑誌社へ
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編集のＫさんの名刺こんなにも輝く紙がこの世にあるとは
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連載のコンセプトを練る 漫画家の打ち合わせみたいでただただ照れる
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帰りがけに古書店に寄り文庫本『人間失格』初版を購入
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雑誌社に呼ばれたくらいではしゃいでた俺を突き刺す太宰治は
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バスケより、部活より、孤独で厳しく辛い、それが執筆。
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メールにて「連載原稿書き直しのお願い」が来る 胸に重く来る
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面白くなると思って書いたのにダメな比喩、ダメな文、ダメなネタ
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なぜ書けない なぜ一行も浮かばない 閉じたくて閉じられないパソコン
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かっこよく見せる必要なんてない 今までに書いたものすべて消す
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自分らしいダメさおかしさくだらなさ一気に書いてエッセイは成る
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編集のＫさんからのメールにて「ちばさと流」と褒めてもらった
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「連載の初回はこれでいきましょう。また引き続きお願いします」
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というわけで、「真剣に歌を詠めよ」「歌らしく言葉を加工すべきだ」という批判も恐れず（二時間半便座で凹むけど）、見たこと聞いたこと感じたことをびっくりするくらい直球で表現した、内容以前に表現から熱血を感じさせるスポ根歌集です。
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