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『天才的な時代』(勅使川原三郎、佐東利穂子、川村美恵、鰐川枝里、加藤梨花) [ダンス]

 2014年11月30日は、夫婦で両国シアターχに行って勅使川原三郎さんの公演を鑑賞しました。ブルーノ・シュルツの短篇『天才的な時代』を原作とするダンス公演です。


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 だが、時間のなかに己の場を持たない出来事、遅すぎて到着した出来事について、われわれはどうすればいいのか----すでに全時間が分配され、分割され、区分されてしまった以上、いまやいわば分け前もなく、配列されぬまま、空中に宙吊りとなり、家もなく行く当てもないそれらの出来事を?
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ブルーノ・シュルツ『天才的な時代』より(工藤幸雄:翻訳)


 最初に短い導入があり、それから勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが踊ります。簡素な黒い服装、何も置かれていない(部分的に上下して段差を作る)舞台、朗読、照明、それに後半に背景として投影される青空の写真一枚。それだけでシュルツの幻想世界を現出させてしまう魔術には、もう感服する他はありません。

 公演時間は約1時間ですが、勅使川原三郎さんはほとんどずっと踊りっぱなしでした。『天才的な時代』のテキスト朗読に合わせた動作を取り込んだり、ゆるやかに動いていたかと思うといきなり激しい動きに移行したり、痙攣するような動きから空間を大きく使った流れるような動きにつなげたりと、変幻自在。

 個人的に面白いと思ったのは、原作で主人公が「天才的な早書き」で絵を描くシーン。何と、ロックミュージックに乗せて手首を激しく振る勅使川原さん。それが、絵筆をふるっているようにも、エレキギターをかき鳴らしているようにも見えるところがツボです。

 勅使川原三郎さんが軽快なロックでがんがん踊るという光景は、個人的には先日の『睡眠 -Sleep-』で初めて見たのですが、これがむっちゃかっこいい。もっと見たい。

 他に、幻想の野獣たちが部屋にあふれるシーンも印象的。勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが動物の動きをえんえんとやります。大きな角が互いに絡み合って抜けなくなるシーンとか、どこか滑稽で、思わず見入ってしまいます。


[キャスト]

振付・演出・構成: 勅使川原三郎
出演: 勅使川原三郎、佐東利穂子、川村美恵、鰐川枝里、加藤梨花


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