『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門』(岩瀬昇) [読書(教養)]
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この重要なエネルギー問題に関し、昨今のマスコミ報道をみていると、基本的な情報提供が少なく、一般の人たちをミスリードしているのではないか、と思われることが多い。冷静な事実認識に基づいて論理的に考えるのではなく、ムードに流された議論になっている感が強い。
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Kindle版No.130
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日本がエネルギー資源の乏しい国である事実に変わりはない。だからいつの時代も、エネルギー資源の確保は極めて重要な問題なのである。
それほど重要な問題なのに、我ら日本人全般の、いわゆるエネルギーリテラシーが低いのはなぜだろうか?
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Kindle版No.107
石油の「埋蔵量」が増えてゆくのはどうして。原油価格はどのようにして決まるの。シェールガス革命がアメリカで起きた理由は。エネルギー問題やエネルギー政策を考える際に必要となる基礎知識を一般向けに分かりやすく解説してくれる一冊。新書版(文藝春秋)出版は2014年9月、Kindle版配信は2014年10月です。
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あなたは計画停電は勿論、不慮の停電が発生しても構わない、仕方がない、それに合った生活をすればいいのだ、と思いますか? それとも、少々電力料金が高くなっても停電になるのは困る、安定供給こそ一番大事だと思われますか?(中略)
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我々が大事だと思うことを実行するためにはコストがかかる、すべてはトレードオフなのだという認識を持つことが大事なのではないだろうか。
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Kindle版No.404、415
原発再稼働の是非や電力問題ばかりが注目される世相に対して、石油や天然ガスなど一次エネルギーの確保こそが重要であることを強く訴えつつ、それを理解するために必要となる基礎知識を教えてくれる本です。全体は6つの章から構成されています。
「第1章 日本の輸入ガスはなぜ高いか?」
最初の話題はLNG、つまり液化天然ガス。その価格はそもそもどのようにして決まっているのか、「(原発が再稼働できないため)足元を見られ、日本だけが突出した高値で買わされている」と騒ぐマスコミの主張は妥当なのか。そういった点を分かりやすく解説してくれます。
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発電用燃料の約30%を占めていた原子力が使えないことになり、電力会社は代替燃料の大半をLNGスポットカーゴを臨時に買ってまかなわざるをえなくなった。このLNGスポット輸入が貿易赤字の主因だというのだ。(中略)
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そのLNGの値段が日本向けだけが突出して高い、と新聞が書いているから、皆が話題にするようになったらしい。なぜだろう?
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Kindle版No.151、164
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歴史的背景と、世界のガス市場が三極分化していることから、日本向けが原油価格リンクであるのに対し、欧州は競合燃料であった重油や軽油価格にリンクしており、アメリカでは純粋に国内需給要因によってのみ価格が決まる仕組みとなっているのだ。
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Kindle版No.258
「第2章 進化するシェール革命」
シェール革命を引き起こした技術的ブレークスルーの解説、アメリカでシェール革命が起きた背景と現状、そして他の国々における動きを概観します。
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水圧破砕法により散在しているシェール層の中の天然ガスを一カ所に集め、経済性を維持して生産することに成功した。さらに水平掘削法の導入により井戸1本あたりの生産量を大幅に増やすことに成功した。だが、「革命」がそこで止まっているわけではない。(中略)
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専門家の中には、シェールガスIQはまだ低い、と指摘する人もいる。今後さらに技術的進化の余地が残っているという意味だ。
シェール革命が本格的な世界的拡がりを見せるには、更なる技術革新とシェール井掘削経験者の大幅増加が必要だろう。
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Kindle版No.686、702
「第3章 埋蔵量のナゾ」
このままだと後30年で枯渇する、と言われていた石油。時代が下るにつれて枯渇時期はどんどん先のばしになっている(埋蔵量が増えている?)のはなぜでしょうか。この章では「埋蔵量」がどのようにして決められているのかを解説してくれます。
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新聞などの報道では、EIA発表データがあたかも経済的に生産がほぼ可能な「埋蔵量」であるかのような表現を見かけるが、実は「技術的に回収可能な資源量」なのである。それでは「資源量」と「埋蔵量」の違いとは何なのだろうか?(中略)
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いずれにせよ埋蔵量は、過去の歴史を見ても、技術の進歩と価格の高騰によって、徐々に「成長」しているように見えるのだ。
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Kindle版No.805、856
後半の「第4章 戦略物資から商品へ」、「第5章 もう一度エネルギー問題を考える」、「第6章 日本のエネルギー政策」では、石油の価格が決められるメカニズム(の変遷)をベースに、日本がどのようなエネルギー政策をとるべきなのかを論じます。
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原油の価格決定方式は様々な歴史を経て今日の姿となっている。この章で概略を眺めてきたように、セブンシスターズがコントロールしていた時代、OPECが決定権を持っていた時代を経て、市場に決定権がある現在に至っている。
細部は市場ごとに異なるが、すべての契約価格は原則的に市場連動で決められているといってよい。
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Kindle版No.1633
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石油は、平時にはコモデティだが、非常時には今でも重要な戦略物資なのである。(中略)
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エネルギー基本政策とは、「根本的な脆弱性を抱えている」一次エネルギーをどうするか、から始まるのではなかろうか。地下資源に乏しい我が国がまず考えるべきは、一次エネルギーを如何にして確保するか、であろう。
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Kindle版No.1748、2274
全体的に回りくどい印象はあるものの、解説は丁寧で、読みやすくなっています。知らなかったこと、というより知らないことを意識していなかったことが多く、勉強になりました。
この重要なエネルギー問題に関し、昨今のマスコミ報道をみていると、基本的な情報提供が少なく、一般の人たちをミスリードしているのではないか、と思われることが多い。冷静な事実認識に基づいて論理的に考えるのではなく、ムードに流された議論になっている感が強い。
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Kindle版No.130
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日本がエネルギー資源の乏しい国である事実に変わりはない。だからいつの時代も、エネルギー資源の確保は極めて重要な問題なのである。
それほど重要な問題なのに、我ら日本人全般の、いわゆるエネルギーリテラシーが低いのはなぜだろうか?
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Kindle版No.107
石油の「埋蔵量」が増えてゆくのはどうして。原油価格はどのようにして決まるの。シェールガス革命がアメリカで起きた理由は。エネルギー問題やエネルギー政策を考える際に必要となる基礎知識を一般向けに分かりやすく解説してくれる一冊。新書版(文藝春秋)出版は2014年9月、Kindle版配信は2014年10月です。
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あなたは計画停電は勿論、不慮の停電が発生しても構わない、仕方がない、それに合った生活をすればいいのだ、と思いますか? それとも、少々電力料金が高くなっても停電になるのは困る、安定供給こそ一番大事だと思われますか?(中略)
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我々が大事だと思うことを実行するためにはコストがかかる、すべてはトレードオフなのだという認識を持つことが大事なのではないだろうか。
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Kindle版No.404、415
原発再稼働の是非や電力問題ばかりが注目される世相に対して、石油や天然ガスなど一次エネルギーの確保こそが重要であることを強く訴えつつ、それを理解するために必要となる基礎知識を教えてくれる本です。全体は6つの章から構成されています。
「第1章 日本の輸入ガスはなぜ高いか?」
最初の話題はLNG、つまり液化天然ガス。その価格はそもそもどのようにして決まっているのか、「(原発が再稼働できないため)足元を見られ、日本だけが突出した高値で買わされている」と騒ぐマスコミの主張は妥当なのか。そういった点を分かりやすく解説してくれます。
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発電用燃料の約30%を占めていた原子力が使えないことになり、電力会社は代替燃料の大半をLNGスポットカーゴを臨時に買ってまかなわざるをえなくなった。このLNGスポット輸入が貿易赤字の主因だというのだ。(中略)
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そのLNGの値段が日本向けだけが突出して高い、と新聞が書いているから、皆が話題にするようになったらしい。なぜだろう?
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Kindle版No.151、164
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歴史的背景と、世界のガス市場が三極分化していることから、日本向けが原油価格リンクであるのに対し、欧州は競合燃料であった重油や軽油価格にリンクしており、アメリカでは純粋に国内需給要因によってのみ価格が決まる仕組みとなっているのだ。
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Kindle版No.258
「第2章 進化するシェール革命」
シェール革命を引き起こした技術的ブレークスルーの解説、アメリカでシェール革命が起きた背景と現状、そして他の国々における動きを概観します。
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水圧破砕法により散在しているシェール層の中の天然ガスを一カ所に集め、経済性を維持して生産することに成功した。さらに水平掘削法の導入により井戸1本あたりの生産量を大幅に増やすことに成功した。だが、「革命」がそこで止まっているわけではない。(中略)
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専門家の中には、シェールガスIQはまだ低い、と指摘する人もいる。今後さらに技術的進化の余地が残っているという意味だ。
シェール革命が本格的な世界的拡がりを見せるには、更なる技術革新とシェール井掘削経験者の大幅増加が必要だろう。
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Kindle版No.686、702
「第3章 埋蔵量のナゾ」
このままだと後30年で枯渇する、と言われていた石油。時代が下るにつれて枯渇時期はどんどん先のばしになっている(埋蔵量が増えている?)のはなぜでしょうか。この章では「埋蔵量」がどのようにして決められているのかを解説してくれます。
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新聞などの報道では、EIA発表データがあたかも経済的に生産がほぼ可能な「埋蔵量」であるかのような表現を見かけるが、実は「技術的に回収可能な資源量」なのである。それでは「資源量」と「埋蔵量」の違いとは何なのだろうか?(中略)
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いずれにせよ埋蔵量は、過去の歴史を見ても、技術の進歩と価格の高騰によって、徐々に「成長」しているように見えるのだ。
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Kindle版No.805、856
後半の「第4章 戦略物資から商品へ」、「第5章 もう一度エネルギー問題を考える」、「第6章 日本のエネルギー政策」では、石油の価格が決められるメカニズム(の変遷)をベースに、日本がどのようなエネルギー政策をとるべきなのかを論じます。
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原油の価格決定方式は様々な歴史を経て今日の姿となっている。この章で概略を眺めてきたように、セブンシスターズがコントロールしていた時代、OPECが決定権を持っていた時代を経て、市場に決定権がある現在に至っている。
細部は市場ごとに異なるが、すべての契約価格は原則的に市場連動で決められているといってよい。
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Kindle版No.1633
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石油は、平時にはコモデティだが、非常時には今でも重要な戦略物資なのである。(中略)
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エネルギー基本政策とは、「根本的な脆弱性を抱えている」一次エネルギーをどうするか、から始まるのではなかろうか。地下資源に乏しい我が国がまず考えるべきは、一次エネルギーを如何にして確保するか、であろう。
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Kindle版No.1748、2274
全体的に回りくどい印象はあるものの、解説は丁寧で、読みやすくなっています。知らなかったこと、というより知らないことを意識していなかったことが多く、勉強になりました。
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