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『愛しき駄文具』(きだてたく) [読書(教養)]

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不便でぼんくらでムダばかりで、でも楽しい。
駄目な文房具の数々を、御覧ください。
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新書版p.5

 ペンを立てる度に断末魔の悲鳴を上げるペン立て。楽器として使うために開発された定規。ハサミとセロテープを合体させたらハサミとしてもセロテープとしても使えなくなった謎の文房具。役に立つとは言い難いものの、なぜか憎めない、そんな駄文房具の数々をカラー写真と解説で紹介してくれる魅力的なカタログ。新書版(飛鳥新社)出版は2014年9月です。

 「自称世界一の色物文具コレクション(5,000点以上)に囲まれながら暮らす」(新書版p.152)著者が、その膨大なコレクションの一部を紹介してくれます。どれもカラー写真つき。

 まず目をひくのは、「鉛筆と消しゴムを合体させたら超便利」という発想から企画され、どこかで引き返せないまま商品化してしまったと思しき物件の数々。

 例えば「ハサミとセロテープを合体させる」という着眼点は悪くないのかも知れませんが、実際に作ってみたらハサミとしてもセロテープとしても実用に耐えないほど使いにくくなってしまった文具。同様に、ペンとシュレッダーを合体させた証拠隠滅ペン。

 ペンとつめ切りを合体させてみたものの、どういう状況で便利なのかよく分からなくなり、“仕事を選ばない”キティちゃんをプリントして誤魔化してみました、としか思えない文具。

 ソロバンと電卓とホワイトボードを合体させて「3DS」(3つ折り電卓そろばん)という商品名のインパクトのみで売ろうとしている文具。

 ついには、ペンと耳掻きを合体させたものの耳掻きが短すぎて耳の穴に届かない、よく考えてみればそもそもなぜペンと耳掻きを合体させる必要があるのかよく分からない、という、すでに現代アートの領域に踏み込んでいる文具。

 次に目立つのは、声や動きのある文具。

 ペンを立てると断末魔の声をあげながらバタバタと痙攣するペン立て。セロテープを切るたびに「せろー…てーーぷっ!!」と雄叫びを上げるテープカッター。

 メモを乗せて相手の席めがけて物理的に投射する卓上投石機。さらにペンの軸をバネにすることで、移動中でも投射可能にしたモバイル投石機ペン。

 形がヘンなもの、使用目的があまりに限定されたもの、など。

 1cmを正確に図ることに特化したチタン製の高級定規。赤と青の二色の鉛筆をセットし、立体メガネ(左右に赤青のセロファンが張ってあるアレ)用の飛び出す絵を描くための専用ペン。楽器として演奏する(机の端にセットして、指で弾いて、びよんびよん、と鳴らす)ための定規。

 「と、私も前々から考えていた。」という文言があらかじめ印刷されている付箋。そもそも付箋は駄文具の宝庫らしく、メガネ形の付箋、舌や耳などリアルな人体パーツ型の付箋など、困惑させられるものがいっぱい収録されています。

 まるで『となりの関くん』(森繁拓真)が大人になってから開発し、商品化にまでこぎ着けてしまったような珍文具の数々。眺めているうちに、脱力したり、妙に感心したり、困惑したり、いろいろと楽しめます。こういう文具ほしいかも、という気になったり。けっこう本気で。

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 皆さんも疲れた時は無理に仕事をせず、駄目な文房具で遊びましょう。
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新書版p.151


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