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『病気になるサプリ 危険な健康食品』(左巻健男) [読書(教養)]

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 本書に書かれているような情報は、今までほとんど消費者の目に触れることはありませんでした。私は日本のサプリメントが問題ばかりだといっているわけではありません。広告情報からだけでは見えない情報がたくさんあります。まずはそのことを知っていただきたいと思っています。
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Kindle版No.1719


 今や年間売り上げ規模2兆円に迫る巨大産業と化し、50代以上の約3割が「ほぼ毎日摂取している」というサプリなどの健康食品。しかし、それらに効果があるという証拠はなく、逆に健康被害は確実に起きている。サプリや健康食品業界の危険な内幕を明らかにする一冊。新書版(幻冬舎)出版は2014年7月、Kindle版配信は2014年9月です。

 サプリや健康食品の危険性を明らかにする本。全体は7つの章から構成されています。

 まず最初の「第1章 健康食品・サプリが人を殺す」では、サプリや健康食品による健康被害の事例が紹介されます。


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 世間には「健康食品・サプリは薬ではなく食品だから安全」というイメージが浸透しているようですが、実際には数多くの健康障害報告があります。
 一般に安全とされているサプリであっても、適切な摂取量が守られていなけれは健康障害が起こる可能性があります。
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Kindle版No.138


 「必須アミノ酸の過剰摂取で死者38名、被害者6000人」「半年で58人が死亡したダイエット飲料」「カプセル状サプリで急性肝炎29人」などの見出しがずらずらと並び、背筋が寒くなります。

 意外なのは、健康被害報告数で最も多いのが、馴染み深いクロレラやウコンだという事実。摂取している人が多いためでしょう。健康食品やサプリは、どんなに有名で普及しているものであっても、決して安全とは言えないことが分かります。


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 健康食品・サプリ・民間薬でもっとも多く報告される健康被害は、肝機能障害です。異物を分解、解毒する肝臓のはたらきが影響を受けるのです。
 原因物質としてはやせ薬の被害が多いのですが、単一の成分としての報告は、俗に「肝臓によい」といわれるウコンが一番多いのです。
 1994~2003年に日本で発生した、やせ薬以外の健康食品・民間薬による薬剤性肝機能障害の4分の1を占めています。
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Kindle版No.241


 続く「第2章 なぜ健康食品・サプリは危ないのか」では、サプリ等についてはそもそも安全性を保証する仕組みがないことが解説されます。


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 健康食品・サプリも、保健機能食品も、法的にはあくまで食品のなかまであって医薬品ではありません。
 つまり、有効性と安全性の科学的な根拠がなくても、販売できてしまうのです。
 また医薬品と違い、健康食品・サプリは、品質の均一性、再現性、客観性、純度が保証されていません。
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Kindle版No.338

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 多くのメーカーは自前の工場をもっておらず、健康によさそうなイメージのある成分を委託先の工場につくらせます。次に医学博士号をもった健康評論家先生にそれをもち上げる原稿を書かせます。それを健康雑誌や女性誌、テレビが取り上げるようにもっていきます。
--------(中略)
 国内で、健康食品・サプリをつくっている工場は4000~5000か所あるようですが、そのうちGMP(医薬品レベルに準じた管理基準)で製造している工場は120か所程度しかありません。
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Kindle版No.373、395


 安全性の保証がなく、効果・効用を保証する必要もない。本やTV番組を使って流行を作り出し、広告だけで売ってしまう。こうしたサプリや健康食品の危ない実態には、不安を禁じ得ません。

 続く「第3章 恐怖のダイエットサプリ」「第4章 間違いだらけのアンチエイジング」「第5章 抗がん健康食品・サプリの罠」では、それぞれのカテゴリに分類されるサプリ・健康食品・健康法を具体的に取り上げ、それぞれ効果はない(あるという証拠がない)のに危険性は高い、ということを明らかにしてゆきます。

 「第6章 健康食品・サプリの正しい選び方」では、何を頼りにしてサプリや健康食品を選べばいいのかを考えてゆきます。「体験談」や「バイブル本」はまったく信用できない、「トクホ」に期待するな、など。また、気をつけるべきキーワードが示されます。


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「好転反応」に科学的根拠はありませんので、商品説明の表現として好転反応をうたうものには十分注意しましょう。
--------(中略)
 毒になる健康食品・サプリがあり、肝機能障害やアレルギーなどの健康障害が起きる場合もありますから、摂取していて体調が悪くなった場合には、すぐに使用を中止すべきです。
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Kindle版No.1183、1187


 「第7章 健康常識のウソ・ホント」では、健康食品やサプリから少し外れて、世間に広まっている信用できない健康商品をやり玉にあげてゆきます。

 取り上げられているのは、マイナスイオン、波動商法、経皮毒、ゲルマニウム、岩盤浴、デトックス、リノール酸、酸性食品・アルカリ性食品、栄養ドリンク、ニンニク注射、など。さらには有機農作物や国産作物の安全性、白砂糖有害論、コーラを飲むと骨が弱くなる説、などの俗説についても解説されます。

 付録として、医者から見たサプリメント情報の問題点を指摘する特別寄稿、そして人気サプリの評価(グルコサミン、コラーゲン、各種ビタミン、青汁、カルシウム、ヒアルロン酸、DHA、ローヤルゼリー、ブルーベリー、コエンザイムQ10、食物繊維、乳酸菌、ニンニク、ウコン、黒酢、亜鉛、アミノ酸、葉酸、EPA、ルテイン、プラセンタ、マグネシウム、イチョウ葉、鉄、パントテン酸、大豆イソフラボン)が掲載されていますので、自身が摂取または気になっているサプリ成分について確認してみるとよいでしょう。

 結論は簡単です。栄養バランスのよい食事と適度な運動を心掛け、身体が不調になれば医者にかかる、というのが最も信頼性と効果の高い健康法であり、医者の指示がない限りサプリや健康食品に手を出すべきではない。当たり前のことです。しかし、人の心は弱いもの。この当たり前のことを守るのが難しいわけです。

 というわけで、サプリや健康食品に頼る前に、せめてその問題や危険性については知っておくべきではないでしょうか。


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