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『睡眠 -Sleep-』(オーレリー・デュポン、佐東利穂子、勅使川原三郎、鰐川枝里、加藤梨花) [ダンス]

 2014年8月17日は夫婦で東京芸術劇場プレイハウスに行って、勅使川原三郎さんの新作公演を鑑賞しました。パリ・オペラ座エトワールのオーレリー・デュポンがゲストダンサーとして参加したことでも話題になった80分の舞台です。

 まず、舞台演出に目を奪われます。おそらくアクリル製と思われる透明素材で作られた様々なオブジェクト(沢山の板、机、椅子、壁など)が天井から吊り下げられ、それらが自在に上下移動して、舞台上から消えたり現れたりします。

 このシンプルな仕掛けが、絶妙な照明効果と相まって、舞台上に異空間を創り出す様は驚異的。光、闇、かすかに反射する透明なオブジェクトに囲まれた出演者たちは、あるときは海中(水槽内かも)、またあるときは無機質な閉塞空間、ときに光輝く美しい夢、ときに歪んだ空間の悪夢、そのなかを漂いながら、踊ります。

 前半は、手をゆらゆらと触手のようにゆらめかしたり、不意に脱力させたり、ゆるやかな動きが印象的なシーンが続きます。音楽も、静かな器楽曲にノイズを乗せたものが続き、静謐な印象です。透明オブジェクトの配置が変わるたびに舞台の印象も大きく変わってゆきます。

 そして後半になるや、音楽もアップテンポになり、次から次へと見せ場が続くことになります。ここから終幕までのサービス連打は凄い。まず鰐川枝里さんと加藤梨花さんの二人が、それまで舞台に漂っていた海底のような静かな沈滞感を吹き飛ばす勢いで、高速かつパワフルなダンスを若々しく情熱的に踊って、ぐいぐい盛り上げます。

 続いて勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが踊るのですが、音楽が何とベタなロックミュージック。ロックのリズムに乗せてがんがん踊る勅使川原さんと佐東さんというのは、個人的には初めて見たシーンですが、これがもう、抜群にかっこいい。素敵です。ここだけ何度も観たい。

 続いて、バレエ音楽に女性の悲鳴とガラスが割れる音をかぶせた不穏な音源に乗せてコメディホラー風の大仰なダンス(貞子演出が可笑しい)、そしてラストは佐東利穂子さんがゆったりしたスケールの大きなソロを踊って拍手喝采。

 ゆったりした静かな前半、激しく盛り上がる興奮の後半、どちらも忘れがたい印象が残る劇的な公演でした。勅使川原三郎さんは最初から最後まで、それこそ体力がもつのかいらぬ心配をしてしまうほど、たっぷり踊ってくれて、とても嬉しかった。

[キャスト]

構成・振付: 勅使川原三郎
出演: オーレリー・デュポン、佐東利穂子、勅使川原三郎、鰐川枝里、加藤梨花


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