『あそこ』(望月裕二郎) [読書(小説・詩)]
「下の名をあめりあという下の名前なんてすけべえだなとおもいながら」
「さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく」
「百万歩ゆずって犬はやめにしようゆずるのに半年はかかるが」
世界に全力でつっこみ入れる中学生男子の魂ほとばしる歌集。単行本(書肆侃侃房)出版は2013年11月です。
「ほんとうにそれでいいのか、他に候補はないのか、版元も違和感を訴えている、などと進言したのだが、単なる指示代名詞にも関わらず隠語として特定の意味を負わされたこの語をタイトルとして歌集を出したい、という望月さんの強い意志は変わることがなかった」(東直子さんによる「解説 言葉の裏をめくる」より)
「言葉が「言外の意味」に縛られているということを批判的に提示するため、「あそこ」を選んだのだ。品がない、タイトルを見ただけで読むのをやめる人がいる、と方々から大反対をいただいたが、譲れなかった」(著者による「あとがき」より)
著者がそこまでこだわったというタイトル。もしや性的なことをテーマとした隠微な成人向け作品が多いのかしらんとか期待して読むと、いやいや、どちらかと言えば中学生男子がどきどきしながら口にするときの「あそこ」ですよ。
「下の名をあめりあという下の名前なんてすけべえだなとおもいながら」
「背表紙を指で隠して『セックスの人類学』を電車で読んだ。」
「トランクスを降ろして便器に跨がって尻から個人情報を出す」
あー、中学生男子の魂ほとばしってますね。他にも、「口」に対するつっこみなんか、いかにも。
「どの口がそうだといったこの口かいけない口だこうやってやる」
「ぺろぺろをなめる以外につかったな心の底からめくれてしまえ」
「穴があれば入りたいというその口は(おことばですが)穴じゃないのか」
何にいらついてるのか自分でも分からないけど、とにかく、もう見るもの聞くものすべてにつっこんでしまうのが中学生男子ですよ。著者はそろそろ30歳も近い年齢のはずですけど。
「玉川上水いつまでながれているんだよ人のからだをかってにつかって」
「新宿に鼻の先だけつっこんで知ったふうだな西部新宿」
「だらしなく舌をたれてる(牛だろう)(庭だろう)なにが東京都だよ」
「吹田市は「すいたし」と読む「ふきたし」と読めばそこから砕ける地球」
すぐに地球が砕けるとか言い出す中学生男子。こうなると他の作品もみんな「中学生男子がいかにも言いそうなことシリーズ」に見えてくるから不思議です。
「この世界創造したのが神ならばテーブルにそぼろ撒いたのは母」
「生活に革命を起こせばそれは生活でなく革命である」
「アマゾンの蝶が鱗粉ふり撒いて山手線のダイヤ乱れる」
「おまえらはさっかーしてろわたくしはさっきひろった虫をきたえる」
「さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく」
「百万歩ゆずって犬はやめにしようゆずるのに半年はかかるが」
男子中学生はこの世の不思議を発見しては、このことに気づいたのが世界中でたった一人、自分だけであるということに、毎日畏怖の念を覚えています。でも、他人はわかってくれません。他人は馬鹿だから。
「同じ通りで蛙を二匹見た。二匹とも確かに歩いていた。」
「いつもの道でヒキガエルを見る。雨でない日は何をしているのか。」
「ドーナツをそれとして齧れば齧り始めた場所で齧り終わる」
「満を持して吊革を握る僕たちが外から見れば電車であること」
「真剣に湯船につかる僕たちが外から見ればビルであること」
「考えてみればもともと考えることはなかった七字余った」
「テロ活動をすることを目的に入国するつもりですか。 □はい □いいえ」
というわけで、20代もそろそろ終わるお年頃の歌人が、失われゆく中学生男子の魂を刻み込んだようなインパクトのある歌集です。
「さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく」
「百万歩ゆずって犬はやめにしようゆずるのに半年はかかるが」
世界に全力でつっこみ入れる中学生男子の魂ほとばしる歌集。単行本(書肆侃侃房)出版は2013年11月です。
「ほんとうにそれでいいのか、他に候補はないのか、版元も違和感を訴えている、などと進言したのだが、単なる指示代名詞にも関わらず隠語として特定の意味を負わされたこの語をタイトルとして歌集を出したい、という望月さんの強い意志は変わることがなかった」(東直子さんによる「解説 言葉の裏をめくる」より)
「言葉が「言外の意味」に縛られているということを批判的に提示するため、「あそこ」を選んだのだ。品がない、タイトルを見ただけで読むのをやめる人がいる、と方々から大反対をいただいたが、譲れなかった」(著者による「あとがき」より)
著者がそこまでこだわったというタイトル。もしや性的なことをテーマとした隠微な成人向け作品が多いのかしらんとか期待して読むと、いやいや、どちらかと言えば中学生男子がどきどきしながら口にするときの「あそこ」ですよ。
「下の名をあめりあという下の名前なんてすけべえだなとおもいながら」
「背表紙を指で隠して『セックスの人類学』を電車で読んだ。」
「トランクスを降ろして便器に跨がって尻から個人情報を出す」
あー、中学生男子の魂ほとばしってますね。他にも、「口」に対するつっこみなんか、いかにも。
「どの口がそうだといったこの口かいけない口だこうやってやる」
「ぺろぺろをなめる以外につかったな心の底からめくれてしまえ」
「穴があれば入りたいというその口は(おことばですが)穴じゃないのか」
何にいらついてるのか自分でも分からないけど、とにかく、もう見るもの聞くものすべてにつっこんでしまうのが中学生男子ですよ。著者はそろそろ30歳も近い年齢のはずですけど。
「玉川上水いつまでながれているんだよ人のからだをかってにつかって」
「新宿に鼻の先だけつっこんで知ったふうだな西部新宿」
「だらしなく舌をたれてる(牛だろう)(庭だろう)なにが東京都だよ」
「吹田市は「すいたし」と読む「ふきたし」と読めばそこから砕ける地球」
すぐに地球が砕けるとか言い出す中学生男子。こうなると他の作品もみんな「中学生男子がいかにも言いそうなことシリーズ」に見えてくるから不思議です。
「この世界創造したのが神ならばテーブルにそぼろ撒いたのは母」
「生活に革命を起こせばそれは生活でなく革命である」
「アマゾンの蝶が鱗粉ふり撒いて山手線のダイヤ乱れる」
「おまえらはさっかーしてろわたくしはさっきひろった虫をきたえる」
「さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく」
「百万歩ゆずって犬はやめにしようゆずるのに半年はかかるが」
男子中学生はこの世の不思議を発見しては、このことに気づいたのが世界中でたった一人、自分だけであるということに、毎日畏怖の念を覚えています。でも、他人はわかってくれません。他人は馬鹿だから。
「同じ通りで蛙を二匹見た。二匹とも確かに歩いていた。」
「いつもの道でヒキガエルを見る。雨でない日は何をしているのか。」
「ドーナツをそれとして齧れば齧り始めた場所で齧り終わる」
「満を持して吊革を握る僕たちが外から見れば電車であること」
「真剣に湯船につかる僕たちが外から見ればビルであること」
「考えてみればもともと考えることはなかった七字余った」
「テロ活動をすることを目的に入国するつもりですか。 □はい □いいえ」
というわけで、20代もそろそろ終わるお年頃の歌人が、失われゆく中学生男子の魂を刻み込んだようなインパクトのある歌集です。
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