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『信じられない現実の大図鑑』(ドーリング・キンダースリー:著・編集、増田まもる:監修、翻訳) [読書(サイエンス)]

 木星のなかに地球をぎっしり詰め込んでみる。サハラ砂漠の砂丘のなかにエッフェル塔を埋めてみる。人間が一生で吐く息を気球に詰めて浮かべてみる。ヒッコリー松の幹に人類史年表を書き込んでみる。

 様々なデータを美しいビジュアルで表現した、驚きに満ちたサイエンス図鑑。単行本(東京書籍)出版は2014年7月です。

 私たちは月について、少なくともその外見とサイズについて、よく知っていると思っています。では、おなじみのオーストラリア大陸の直上に月を浮かべてみたら、どんな光景になるか想像できますか。

 ちょっと調べれば、月の直径がオーストラリア大陸の東西幅よりも小さいことはすぐに分かります。しかし、「実際に」オーストラリア大陸の上に浮いているリアルな月の絵を見ると、驚きと感動を禁じ得ません。すごい、絵の力って凄い。

 こんな具合に、そのままでは無味乾燥なデータを、なじみ深いものと並べて描くことで、直観的に理解できるようにした図鑑です。全体は四つの章から構成されています。

 最初の「地球から飛び出す」では、宇宙に関する様々なデータをビジュアル化します。

 太陽の前にずらりと地球を並べる(太陽の直径は、地球を109個並べたものに等しい)、木星の中に地球を詰め込む(木星の体積は地球1320個分)、小惑星ベスタをフロリダ半島の上に浮かべてみる(フロリダ半島に向けて小惑星が落下しつつある光景にも見える)、火星のマリネリス峡谷を北アメリカ大陸の上に刻んでみる(大陸は南北に分断される)、おおいぬ座VYと太陽を正しい縮尺で並べてみる(赤色超巨星VYの直径は太陽の1400倍、無理があった)、無人探査機の「現在位置」を、地球を起点とする物差しの上に並べてみる。

 続いて「驚くべき地球」では、山や河、海についてのデータをビジュル化します。

 北アメリカ五大湖とシベリアのバイカル湖を並べてみる(五大湖をすべて合わせてもバイカル湖を満たすことは出来ない)、ビッグ・ベンとエッフェル塔を位置関係を保ったままアマゾン河の河口に置いてみる(河口の広さはロンドン・パリ間の距離に匹敵する)、ナイアガラの滝の下にオリンピック競泳用プールを置いてみる(一秒間で満杯になる)、クルーベラ洞窟の中にエッフェル塔を入れてみる(地底から地表まで七つ積み重ねられる)、アイランドパーク・カルデラ(火口)に東京都を入れてみる(すっぽり入る)、最長の天然水晶の横に観光バスを並べてみる(同じくらいのサイズ)、最大の氷山の上にベルギーを置いてみる(その逆でないところが凄い)。

 世界中の水を集めてアフリカ大陸の上に置いてみる(サハラ砂漠よりずっと小さい水玉にしかならない)、地球上のすべての氷がとけたら海面はどれだけ上昇するか(自由の女神像は腰まで海につかる)、といったビジュアルも衝撃的ですが、満員のローズボール・スタジアム800個が並んでいる光景のインパクトが凄い。これは、黒死病による死者の数をビジュアル化したものです。もう一つ、8000人の大群衆が集まっている光景。世界人口は一時間でこれだけ増えています。これは一時間ごとにジェット旅客機23機が到着して次々と旅客を降ろしていることに匹敵するのです。

 「人類とあらゆる生物」では生き物に関するデータ、「ここまできている先端技術」ではテクノロジーに関するデータが、それぞれ同様にビジュアル化されます。

 というわけで、ページをめくるたびに驚きを覚える驚異の一冊です。全ページフルカラーで、眺めているだけでも美しい。図鑑好きの子供なら何度も何度も見直して飽きることがないでしょう。大人が見ても様々な発見があります。夏休みに親子で一緒に楽しむ一冊としてお勧めです。


タグ:絵本