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『平成勤労婦人詩集』(鰊パイ互助会:編) [読書(小説・詩)]

 「たとえば文学少女にはなれなかった私を/立派な〈きんろうふじん〉にしてくれた/だから私は今日も〈きんろう〉に励もう」
  (『文学少女のなれずの果て』より。花村あずさ、たてがきのおしごと・26歳)

 20代から60代までの働く女性21名による、ウーマンプロレタリアート詩集。単行本(鰊パイ互助会)発行は2012年11月です。

 まずは、軽くOL川柳からいってみましょう。

 「上司はシュレッダーよりも 溶解にして機密処理」
  (茗子、法人・事務・27歳・神奈川県)

 「IEをインターネットと呼ぶ人達、当然ググるも通じない」
  (moya、超事務員・神奈川県)

 「久しぶりにスカートで出勤したら五秒ほどガン見した挙句エプロンかと思ったとかのたまう上司殴りたい」
  (moya、超事務員・神奈川県)

 「「これは経費で落ちませんか」という あなたの心根の醜さに関わらず それは落ちんよ」
  (いくすけ、製造業・経理・24歳)

 「二十五日 今日給料日の人 寿司おごれ 私は十日 すでにもうやばい」
  (雑務、30歳・東京都)

 「ドラマではOLみんな笑ってたバレーしながらランチ食べてた」
  (浅野巧、某法人・OL・27歳・東京都)

 ちっとも軽くねえよ。毒血を吐き捨てるような叫びだよ。怖いよ。
 第一生命は「サラリーマン川柳」の募集にあたって「女性部門」を別に設けるべきではないでしょうか。

 続いて、詩の部門。まずは、職場の日常から感じられる抒情を丁寧にすくい上げたような作品から。

 「いちめんのコピー用紙
  いちめんのコピー用紙
  いちめんのコピー用紙
  たまに混じるはメモ書き」
  (『夕暮れの光景』より。きりこ、27歳)

 「無茶振りがなんだ、腹をくくれ
  短納期がなんだ、腹をくくれ
  客先のラインが止まりそうだ、腹をくくれ」
  (『戦場の女神』より。きりこ、27歳)

 「とらぶる は なかま を よんだ!
  じょうし が ざんぎょう を めいじた!
  とりひきさき が くれーむ を だした!」
  (『役割-演技-遊戯』より。村崎式子、IT系・SE・28歳・愛知県)

 「ビジョンもない/やりたくない/金だけ欲しい」
  (『やりたくないことはしない』より。wanawo、居酒屋SI屋・居酒屋店員兼SIer・26歳・東京都)

 「眼前の課題はどこまでも深く、可能性に満ちている/お前の目の前の世界が全てだと思うな/私に指図するな/やりたいようにやるさ/さもなくば死ね」
  (『やりたくないことはしない』より。wanawo、居酒屋SI屋・居酒屋店員兼SIer・26歳・東京都)

 抒情ねえよ。どこにもねえよ。戦場だよここ。

 「わたし仕事しに来てるだけなのに
  わたし働きに来てるだけなのに」
  (『味方なら、いません』より。村崎式子、IT系・SE・28歳・愛知県)

 「そういうことってほんとうにあるんですね/(中略)/初芝電機(島耕作の会社です)みたいな漫画の中の会社だけかと思っていました/あのとき入社したばかりで何もできなくてほんとうにほんとうにごめんなさい」
  (『先輩』より。詠み人知らず)

 「こんなにいろいろデキない人が/どうやって愛を成就させたの/働くところ見られていても/この人たち結婚できたのかしら」
  (『face』より。瀬川みつ)

 だんだん読むのが辛くなってきます。
 そして、生き残ってきた者たちの言葉。

 「今年も存分に使ってやった やったやった 福利厚生!」
  (『マイ・スペシャル・ウィークエンド』より。二葉あつこ、28歳・金融業・一般職・内勤・東京都)

 「光輝くビルの夜景は、社畜たちの命の光」
  (『働く一行詩』より。三島凜子、メーカー・28歳・神奈川県)
 
 「私が二度寝する朝も 皆は会社で働いている」
  (『働く一行詩』より。三島凜子、メーカー・28歳・神奈川県)

 「仕事は弁当を作る口実だ」
  (yuurika)

 というわけで、働く女性たちの言葉に、その迫力に、圧倒されるデトックス詩集。いやー、びびった。小さな声でつぶやきますけど、男でよかった。


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