『春戦争』(陣崎草子) [読書(小説・詩)]
「ええとても疲れるしとてもさびしいでもクレヨンの黄はきれいだとおもってる」
「困るのはボタンがたくさんあることで どれを押してもオシッコが出る」
「日曜はミニチュアの汽車の車輪ぺきぺきとはがして口に投げこむ」
ややおかしいけどまっとう、奇妙だけどわかる、生活への懸命さに心ひかれる歌集。単行本(書肆侃侃房)出版は、2013年09月です。
先日読んだ『短歌ください』(穂村弘)で、個人的に最も気になったのが陣崎草子さんの作品でした。ちなみにKindle版読了時の紹介はこちら。
2014年06月25日の日記:
『短歌ください』(穂村弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
その陣崎草子さんの歌集が「新鋭短歌シリーズ」から出ていると知って、急いで読んでみました。本書『春戦争』です。
まず、『短歌ください』で個人的に気に入った作品は、ちゃんと収録されています。嬉しい。
「好きでしょ、蛇口。だって飛びでているとこが三つもあるし、光っているわ」
「海亀の目は何故あんなおそろしい 人をやめてしまいたくなる」
「どうせ死ぬ こんなオシャレな雑貨やらインテリアやら永遠めいて」
「朝食のベーコンはぜる罪深い第五日曜(戦車の目覚め)」
やっぱり、いい。こういう不思議で魅力的な作品を創るのはどんな人なのか。よっぽど変な人なのでしょうか。
「どれでもいいというような瞳で厳密に選んでいる夏の元気な野菜」
「野菜多く買ってなにやら安心しお茶のんで正座しておれば虫」
「草花の生き残る工夫おしえられ攻める姿勢で分け入る山野」
「指を入れてはいけないと目を閉じる星降る夜にまわるミキサー」
「一杯の砂糖すくってぶちまけて 腹が立ってることに正直だ」
普通というか、まっとうというか、健全で、多くの人が共感できる感情をまっすぐに表現したような作品に、ほっとします。
恋愛をうたった作品も、いい感じです。
「君のかかと少しさわって満たされてなんでも我慢しそうになる」
「ランボルギーニらんぼるぎーにランボルギーニLamborghini男はバカだ」
「赤暗き耳穴にさじ差しいれてあなたを支配する冬の夜」
しかし、読み進むにつれて、エキセントリックな気配が漂ってきます。
「先制を仕掛けた朝の美しさ(テーブルクロスを引き抜いたのさ)」
「日曜はミニチュアの汽車の車輪ぺきぺきとはがして口に投げこむ」
「こんなにもだれか咬みたい衝動を抑えて紫陽花の似合うわたしだ」
「ええとても疲れるしとてもさびしいでもクレヨンの黄はきれいだとおもってる」
次第に共感のハードルが高くなってゆきます。
「キリンたちのたふたふ揺れるくちびるに鎖骨をたふたふされつつ眠る」
「困るのはボタンがたくさんあることで どれを押してもオシッコが出る」
「カーテンの下の方の黒くなっているとこらへんを友だちとする」
「わたしこの陰毛とても大切にするわ名前は静(しずか)にするわ」
こうなると読者だって困りますが、でも何となく分かる気もします。奇妙だけどわかる。生活への懸命さが伝わってくる。そんなとこが魅力的。
「何故生きる なんてたずねて欲しそうな戦力外の詩的なおまえ」
「ぼくはややおかしいけれどまっとうで 離島で黄色い自転車飛ばす」
「軽く罪にぎって風の中をゆく さほどでもなき人生をゆく」
というわけで、歌集を読んで改めて感心しました。『短歌ください』で気になった他の作者も、新鋭短歌シリーズから歌集が出てたりしないか、チェックしてみようと思います。
「困るのはボタンがたくさんあることで どれを押してもオシッコが出る」
「日曜はミニチュアの汽車の車輪ぺきぺきとはがして口に投げこむ」
ややおかしいけどまっとう、奇妙だけどわかる、生活への懸命さに心ひかれる歌集。単行本(書肆侃侃房)出版は、2013年09月です。
先日読んだ『短歌ください』(穂村弘)で、個人的に最も気になったのが陣崎草子さんの作品でした。ちなみにKindle版読了時の紹介はこちら。
2014年06月25日の日記:
『短歌ください』(穂村弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
その陣崎草子さんの歌集が「新鋭短歌シリーズ」から出ていると知って、急いで読んでみました。本書『春戦争』です。
まず、『短歌ください』で個人的に気に入った作品は、ちゃんと収録されています。嬉しい。
「好きでしょ、蛇口。だって飛びでているとこが三つもあるし、光っているわ」
「海亀の目は何故あんなおそろしい 人をやめてしまいたくなる」
「どうせ死ぬ こんなオシャレな雑貨やらインテリアやら永遠めいて」
「朝食のベーコンはぜる罪深い第五日曜(戦車の目覚め)」
やっぱり、いい。こういう不思議で魅力的な作品を創るのはどんな人なのか。よっぽど変な人なのでしょうか。
「どれでもいいというような瞳で厳密に選んでいる夏の元気な野菜」
「野菜多く買ってなにやら安心しお茶のんで正座しておれば虫」
「草花の生き残る工夫おしえられ攻める姿勢で分け入る山野」
「指を入れてはいけないと目を閉じる星降る夜にまわるミキサー」
「一杯の砂糖すくってぶちまけて 腹が立ってることに正直だ」
普通というか、まっとうというか、健全で、多くの人が共感できる感情をまっすぐに表現したような作品に、ほっとします。
恋愛をうたった作品も、いい感じです。
「君のかかと少しさわって満たされてなんでも我慢しそうになる」
「ランボルギーニらんぼるぎーにランボルギーニLamborghini男はバカだ」
「赤暗き耳穴にさじ差しいれてあなたを支配する冬の夜」
しかし、読み進むにつれて、エキセントリックな気配が漂ってきます。
「先制を仕掛けた朝の美しさ(テーブルクロスを引き抜いたのさ)」
「日曜はミニチュアの汽車の車輪ぺきぺきとはがして口に投げこむ」
「こんなにもだれか咬みたい衝動を抑えて紫陽花の似合うわたしだ」
「ええとても疲れるしとてもさびしいでもクレヨンの黄はきれいだとおもってる」
次第に共感のハードルが高くなってゆきます。
「キリンたちのたふたふ揺れるくちびるに鎖骨をたふたふされつつ眠る」
「困るのはボタンがたくさんあることで どれを押してもオシッコが出る」
「カーテンの下の方の黒くなっているとこらへんを友だちとする」
「わたしこの陰毛とても大切にするわ名前は静(しずか)にするわ」
こうなると読者だって困りますが、でも何となく分かる気もします。奇妙だけどわかる。生活への懸命さが伝わってくる。そんなとこが魅力的。
「何故生きる なんてたずねて欲しそうな戦力外の詩的なおまえ」
「ぼくはややおかしいけれどまっとうで 離島で黄色い自転車飛ばす」
「軽く罪にぎって風の中をゆく さほどでもなき人生をゆく」
というわけで、歌集を読んで改めて感心しました。『短歌ください』で気になった他の作者も、新鋭短歌シリーズから歌集が出てたりしないか、チェックしてみようと思います。
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