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『PANORAMA パノラマ』(フィリップ・ドゥクフレ振付、カンパニーDCA) [ダンス]

 2014年6月15日は、夫婦で六本木ブルーシアターに行って『スキャッタード』を、その後、彩の国さいたま芸術劇場で『パノラマ』を鑑賞しました。

 『パノラマ』は、フランスのコレオグラファー、フィリップ・ドゥクフレが、自身の過去の作品からいくつかハイライトシーンを抽出して再構成したものだそうで、まあドゥクフレ総集編みたいな感じでしょうか。

 吊りを使ったサーカス風のダンスがあるかと思えば、影絵と小芝居があったり、何だかよく分からない着ぐるみでレトロ格闘ゲーム風のコントを大真面目にやったり、みんなで蛸のような謎の生き物(バイキンだと主張するものの説得力なし)になってぞろぞろ動いたり、とにかくバラエティに富んでいます。

 個人的なお気に入りは、天井の滑車でつながった一本のロープの両端に釣られた男女二人のダンサーによって踊られる、無重力痴話喧嘩。何しろ一方が怒って立ち去ろうとする度に他方は宙づりになって大騒ぎ。ゆらゆらと宙を舞うダンサーたちの美しさは息を飲むほどですが、サーカスにありがちなロマンチックな演出に全然ならないのが素敵。

 吊りを使ったシーンはもう一つあって、ゴムのような伸縮性の高いロープで釣られた二人のダンサーが月面のようにびょーんびょーんと飛び跳ねます。こちらも好き。

 あと、影絵(指で色々な形をつくる)とダンサーの姿勢がシンクロするシーンには新鮮な驚きと感動がありました。

 何しろダンサー達の身体能力も技術も凄いのですが、それを実にくだらなくて思わず失笑してしまうようなギャグに使っていたりして、その無駄遣いっぷりが贅沢です。ギャグのセンスは良く、キマるたびに会場に子供たちの歓声が響くという大変嬉しい状態に。文字通り、大人も子供も楽しめる作品でした。楽しかった。

 余談になりますが、ショートコントを次々とつなげてゆき、影絵や芝居などを挟み込むスタイルからは、近藤良平さんが率いている日本のダンスカンパニー「コンドルズ」を連想する人も多いと思います。実際、『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド HYPER』(乗越たかお)では、次のような逸話が紹介されていたり。

 「フィリップ・デュクフレの『シャザム!』のレセプション・パーティで近藤と話した。笑いや非ダンス的な要素満載でありながら、きわめてアーティスティックでもあるフィリップの作品。感想を聞くと、近藤は「困りましたね」と言ったのだった。筆者はおお、と思った。普通なら「スゴイですね」とかなんとか言うものだろう。気持ちの上ではフィリップと対等に立っているのだなと思った」(単行本p.184)

 というわけで、コンドルズ公演『ひまわり』、そしてフィリップ・デュクフレ『パノラマ』を、さあ見比べてみようと言わんばかりに、一カ月にも満たない期間で続けざまに上演してくれた彩の国さいたま芸術劇場に大いに感謝したいと思います。どっちも素晴らしかった。