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『Dream Child』(林美登利、石神茉莉、田中流) [読書(オカルト)]

 2014年3月29日は、私たち夫婦と私の姪の三名でパラボリカ・ビスに行って、人形作家である林美登利さんの個展を鑑賞すると共に、人形写真集『Dream Child』出版記念サイン会にも参加してきました。

 私と姪、それぞれ一冊ずつサイン本を手に入れましたよ。ふふ。

 すでにサイン会は終了していますが、個展は4月14日までやっていますので、ぜひお立ち寄り下さい。詳しい情報は次のページで。

  林美登利個展「Dream Child」
  http://www.yaso-peyotl.com/archives/2014/03/dream_child.html

 さて、林美登利さんの人形写真集『Dream Child』ですが、撮影は田中流さん、そして「異形コレクション」アンソロジー等でもお馴染みの石神茉莉さんによる書き下ろし短篇小説が収録されているという、たいそう豪華なもの。帯には漫画家の諸星大二郎さんによる推薦イラストも!

 「ムルムルもいるよ」(諸星大二郎氏による帯イラストより)

 ちなみに個展で展示されている人形には諸星キャラも何体か含まれていますので、お立ち寄りの際にはご確認ください。

 さて、可愛らしい女の子と、様々な動物や虫などが融合した、異形のキメラ少女。林美登利さんが創り出す人形たちは、そのグロテスクな外見にも関わらず、なぜか愛らしく、魅力的で、不思議な共感のようなものを呼び起こします。

 異形であることに、孤独であることに、まったく充足して、満ち足りて、まどろみながら永遠の夢をみているような、ある種の憧れの念を抱かせずにはいられない、不思議な少女たち。

 それを田中流さんが野外に持ち出して、ぐっとくる背景と照明で撮影してくれたので、これがまた、陰影の深い、まるで人目の届かない場所でこっそり息づいているとしか思えないような艶かしさを感じさせる、そんな写真集に仕上がっています。80ページ弱です。

 収録されている石神茉莉さんの短篇は、『蛹化』と『夢の少女』の二篇。

 「世界の終わりの日、私たちはここにいる。/ここに蚕がいる。猫もいる。私はお馬に包まれて繭になる。/猫はいつもの通り、とても綺麗だ。世界の終わりと新しい始まりとを見守るのは猫の役目だ。空色と星の色との瞳で。/私も終わってしまう。私はもう、私でなくなってしまう」(『蛹化』より)

 「リンが常に心掛けていることは、とにかく目立たない存在であること。誰からも興味を持たれないこと。秘密を守るためにはとても重要なことだ。どうでもいい人間ならば、どう暮らしていても放っておいてもらえる。(中略)地下室はいつもとても静かで、安全だ。ここで動きまわっているのは、リンだけ。この小さな世界はドクターの「夢」そのもののようだ」

 『蛹化』は、世界から暴力的に拒絶された少女が繭に包まれ宇宙を抱える話。『夢の少女』は、世間から隠れ潜んでいられる場所を守るために侵入者と対峙する少女の話。いずれも、脅威に満ちた外界から逃れ、夢のなかにひっそりと閉じ籠もって自足するような、残酷なのにどこかユートピアめいた物語。世間に対する生きづらさを感じている読者の心に響きます。

 実は、我が家にも「人面魚のジンコちゃん」という林美登利さんの異形少女人形が鎮座しているのですが、いつ見ても満足げに、夢みているご様子。私たちが彼女の安寧を守っている限り、我が家に深刻な不幸は訪れない、ということになっているのです。


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