SSブログ

『空時計サナトリウム』(振付演出:勅使川原三郎) [ダンス]

 2014年3月29日は、夫婦で両国シアターχに行って勅使川原三郎さんの新作公演を鑑賞しました。ブルーノ・シュルツの短篇『砂時計サナトリウム』を原作とする60分の作品。タイトルの差異は、翻訳の版の違いによるものでしょうか。

 寝台やベンチ、天井から釣り下がった光源(オレンジ色)など、最小限のものだけを使ったシンプルな舞台。照明効果と朗読によって、そこが列車の中、森、廊下、病室、町、戦場など、様々な場所に見立てられます。

 照明と影の効果が素晴らしい。背後の壁に投影される影はまるで生きているように感じられ、ときどき実在する出演者とその影が逆転して見えることさえ。森の木立の影や、暗闇のなか静かに揺れる光源など、底知れない不気味さが存分に感じられます。奇怪な音響効果も加わったりして、ちょっとしたホラー映画のよう。

 そんな薄暗い不穏な舞台で、勅使川原三郎さん、佐東利穂子さんを含む、総勢九名が踊ります。

 何と言っても勅使川さんのダンスが超絶的。しなやかで、強靱で、とてつもないバランスで繰り出される動きは、流水のごとくというか、放電のごとくというか、まるで時の流れすら自在に操るよう。思わず息を飲みます。

 ダンスによって創り出された「人為的に引き延ばされた空虚な時間」あるいは「流れない時のよどみ」のなかにいるという感覚、いやそんなものをダンスで表現できること自体が魔法みたいなものですが、これが朗読されるテキストとも共振して、ぞっとするような劇的な効果をもたらします。圧巻の舞台です。

[キャスト]

振付演出構成: 勅使川原三郎

出演: 勅使川原三郎、佐東利穂子、
川村美恵、鰐川枝里、高木花文、加藤梨花、林誠太郎、ディッダ、鳥居美由紀


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇