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『dancetoday2013 ダブルビル』(島地保武+酒井はな、関かおり) [ダンス]

 2013年10月20日(日)は、夫婦で彩の国埼玉芸術劇場に行って、ダブルビル公演を鑑賞しました。

 前半の演目は、アルトノイ(島地保武+酒井はな)振付による『詠う~あなたが消えしまうまえに~』で、二人が踊る45分の作品。続いて、25分の休憩をとって、観客を全員追い出した上で舞台整備。

 そして後半、関かおり振付による『アミグレクタ』が始まります。5名のダンサーが踊る55分の作品。これが、凄いのです。

 先日、青山円形劇場で『Hetero』という、関かおり振付作品を観て、まずこれが衝撃的でした。無音のなか、関かおりさんと岩渕貞太さん、二人のダンサーが向きあって、ゆっくり動き、静止する。関係性があるようでないようで、それをひたすら続けるというこの異次元感覚。なのになぜか飽きるということがなく、その奇妙な動きの組み合わせから目を離すことが出来ません。なにこれ。

  2013年06月03日の日記:
  『DANCE-X13 MONTREAL:TOKYO:BUSAN 3rd Edition』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2013-06-03

 さすがにこんな異次元ばかり創っているわけではないだろう、などと考えていた私は甘かった。関かおりさんの今回の新作『アミグレクタ』は、まるで『Hetero』を時間的にも空間的にも人数的にも、3倍に拡張したような作品。

 意識できないくらい微かな環境音が流れるほぼ無音の空間で、関かおりさんと岩渕貞太さんを含む総計5名のダンサーが踊ります、というか動きます。

 舞台上に開いた孔からダンサーが這い出てきて、ゆっくりゆっくり、奇怪な動きを繰り広げ、単独で床を這って、ときどき両足でぴょんっと跳んだり、複数のダンサーが組み合わさって不可解なオブジェか群体のようなものを構成したり、意外にアクロバティックに仰向けのまま他人を足で持ち上げるリフトなどゆーらゆら、そしてまた這いながら、ゆっくりゆっくり、個別に孔から「巣」に戻っていったり。

 それは人間の動きとは思えず。まるで人間の肉体に何か別の、節足動物とか、爬虫類とか、軟体生物とか、そういういきものが乗り移り、それが人間の肉体の使い方を色々とイチから試しているような具合。植物、あるいは定着性刺胞動物に見えることもあります。

 それを一時間近く続けるわけです。どう考えても途中で飽きるに違いない、と思いきや、同じ動きが繰り返されるということがなく、常に新しい動きを「発見」し続ける。人外のなにかが人間の肉体を使って新しい動きの要素を探求し続けている、そんな異界の実験室のような舞台から、なぜか目が離せません。炭酸水の泡がはじけるように、微細な衝撃が続くのです。一時間弱も。

 最後は関かおりさんと岩渕貞太さんの二人が残り、次第に動きに繰り返しが生じると共に、何となく「意志」のようなものが感じられるようになってきます。あ、意識が生まれたか、というところで、終演。気がつけば一時間、なにしていたんだろう、私。「異星人に誘拐された」と語る人々の気持ちが少し分かります。

 これを作品として成立させてしまった異界的な力量には脱帽。これから創られる作品に、期待よりもむしろ不安が先立ってしまいます。なるべく観ようと思います。


タグ:関かおり