『ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛』(リチャード・ブラント) [読書(教養)]
「ベゾスはテキサスの山岳地帯の私有地に桁外れに巨大な一種の鳩時計を建築中だ。何トンもある錘りが150メートルの垂直なトンネル内を降下していくのを動力として時を刻む(中略)この鳩時計はなんと向こう1万年動作することを目標にしている」(Kindle版No.3325)
インターネット商用利用の黎明期、大量に生まれたいわゆるドット・コム企業のうち生き残ったのはほんの一握りの企業だけ。そのなかで常にトップをひた走り、成功を積み重ねてきたのがネット通販最大手のAmazonである。そのAmazonを率いるジェフ・ベゾスとはどんな人物なのか。なぜAmazonはこれほどまでの成功をおさめることが出来たのか。
ジェフ・ベゾスの伝記の電子書籍版を、Kindle Paperwhiteで読みました。単行本(日経BP社)出版は2012年10月、Kindle版の出版は2013年08月です。
高速検索、ワンクリック注文、カスタマーレビュー、履歴に基づくお勧め機能、さらには電子書籍リーダーの使い心地に至るまで、細部に行き届いたサービスと使い勝手のよいインタフェースでネット通販最大手となったAmazon。
「細かな点への配慮こそがアマゾン・ドット・コムを成功に導いた原動力でもある。アマゾン・ドット・コムを使いやすくするためなら、ジェフ・ベゾスはどんなことでもするのだ」(Kindle版No.257)
「業界2位の10倍になるには、実は10パーセントだけ優れていればいいのです」(Kindle版No.275)
一方で、出版社に脅しをかけ不当に値下げを強要する、独立系書店を駆逐している、社員を洗脳してこき使うカルト的ブラック企業である、姑息な手で課税を逃れている、などと非難されることも多い巨大帝国、Amazon。この類まれな企業は、どのようにして生まれ、成長してきたのでしょうか。その歴史をひもといた一冊です。
全体は17個の章に分かれています。
最初の「第1章 ワンクリックではまだ不満」は導入部となっており、「第2章 生い立ち」から「第4章 ベゾス、インターネットを発見する」までは、Amazon創設に至るまでのベゾスの人生を扱います。
「ベゾス」がスペイン語で「キス」という意味だという話から、ねじ回しでベビーベッドを分解してしまった赤子期、ガレージにこもって「ラジオを修理したり、様々な実験装置を製作したり、電気掃除機をばらしてホバークラフトを作ったりした」幼少期、「プログラミングが大好きなオタク」となった少年期、といった具合に、若きベゾスの姿が描かれます。典型的なハッカー気質、並ぶものなき天才。
インテル、ベル研究所、アンダーセン・コンサルティングといったトップ企業からの勧誘を次々と断り、投資銀行の通信ネットワーク設計という仕事に就いて、10ヶ月後にはバンカース・トラストの最年少の副社長になってしまったベゾス。そこで「年率2300パーセントで成長している」インターネットに注目した彼は、あっさり辞めて独立してしまうのです。
「ベゾスには優秀な人材を集められる人脈があった。それだけではない。ベゾスにはモハメド・アリの自信とジョン・F・ケネディの熱意、トーマス・エジソンの頭脳があった」(Kindle版No.954)
「第5章 ガレージの4人組」から「第13章 アマゾンは書店を駆逐しつつあるのか?」では、Amazonの創設から驚くべき急成長を遂げた歴史が語られます。
利益を出さずひたすら成長を続けるというドット・コム企業のビジネスモデルをどのようにして実現したのか、そして事業が曲り角に到達し、上昇を続けてきた株価が暴落し、膨大な累積赤字に押しつぶそうになったとき、どのようにして黒字化に成功し、成長を続けたのか。その奇跡のような経営手腕には目を見張るばかりです。
「第14章 おかしな笑い方をするクールな男」と「第15章 では、ベゾスはどういうマネージャーなのだろうか」では、ベゾスの下で働いたことがある社員から業界誌のインタビューまで様々な証言を元に、ベゾスの人となりを探求してゆきます。この男はいったい何者なのか、何を考えているのか。
「病的なまでに幸福感が強く、その情熱には強い伝染力がある」(Kindle版No.2706)
「他人に対する共感はベゾスが不得意とするところだ」(Kindle版No.2747)
「計算高い誇大妄想狂ではなく、ナイーブと言えるほど楽観的なギーク」(Kindle版No.2776)
「社員を思いやることもない。ベゾスは、ガレー船を奴隷にこがせた人も顔負けというほど社員を働かせる」(Kindle版No.2753)
「ベゾスには茶目っ気もある。(中略)技術勘があり、どの機能は会社のためになり、どの機能はならないのかわかるのも、ベゾスの強みである。技術も問題も解決策も、すべて理解できる」(Kindle版No.2777)
「1万年後に思いをいたすために日本円で32億円もかけて鳩時計を作ってしまうベゾスはたしかに笑顔のエイリアンだ」(Kindle版No.3335)
「ベゾスを過小評価するのだけは避けなければならない」(Kindle版No.2866)
並外れた頭脳と情熱を持った、人を動かす天才。常人には狂気の沙汰としか思えないことに真面目に取り組み、ひたすら我慢強く着実に進めてゆく頑固さ。他人の気持ちや、自分がやったことがどういう影響を及ぼすか、一顧だにしない傲慢さ。
ベゾスに対する評価はばらばらで、分かりやすい通俗的な人物像をイメージすることが難しいことがよく分かります。全員の意見が一致しているのは、「彼を過小評価するのだけは避けなければならない」という一点。
「第16章 頭をクラウドに突っ込んで」では、今や業界最大手となったAmazonのクラウドサービス事業について、「第17章 一歩ずつ、果敢に」では、将来に向けた投資としてベゾスが力を入れている宇宙開発プロジェクトについて、それぞれ教えてくれます。
個人的には、ベゾスが本気で「安全・低価格な宇宙旅行ビジネス」を目指しているという話には胸が躍りました。彼なら、本当にやってのけるかも知れない、と。
「高校時代のジェフ・ベゾスは宇宙旅行に夢中だった。彼にとってSFは単なる娯楽ではなく、未来に向けて自分の思考を高めてくれるものだった。卒業生総代あいさつでも、宇宙への移住こそが人類の運命だと語っている」(Kindle版No.601)
「多くの人が宇宙へ行けるように、また、人類が太陽系の探査を継続できるように、我々は、辛抱強く、一歩ずつ、宇宙飛行のコスト削減に取り組んでいます」(Kindle版No.3059)
「事業として成立する日が来たら、そのとき、ベゾスにとってはアマゾンよりも大事な事業になるだろう。人生最初の大望は、おそらく、宇宙探査だったのだから(中略)彼は仕事を続け、再発明する、新しいものを試す、星に向けて手を伸ばすなどするだろう。 そしていつか、本当に到達してしまうのかもしれない」(Kindle版No.3096、3114)
インターネット商用利用の黎明期、大量に生まれたいわゆるドット・コム企業のうち生き残ったのはほんの一握りの企業だけ。そのなかで常にトップをひた走り、成功を積み重ねてきたのがネット通販最大手のAmazonである。そのAmazonを率いるジェフ・ベゾスとはどんな人物なのか。なぜAmazonはこれほどまでの成功をおさめることが出来たのか。
ジェフ・ベゾスの伝記の電子書籍版を、Kindle Paperwhiteで読みました。単行本(日経BP社)出版は2012年10月、Kindle版の出版は2013年08月です。
高速検索、ワンクリック注文、カスタマーレビュー、履歴に基づくお勧め機能、さらには電子書籍リーダーの使い心地に至るまで、細部に行き届いたサービスと使い勝手のよいインタフェースでネット通販最大手となったAmazon。
「細かな点への配慮こそがアマゾン・ドット・コムを成功に導いた原動力でもある。アマゾン・ドット・コムを使いやすくするためなら、ジェフ・ベゾスはどんなことでもするのだ」(Kindle版No.257)
「業界2位の10倍になるには、実は10パーセントだけ優れていればいいのです」(Kindle版No.275)
一方で、出版社に脅しをかけ不当に値下げを強要する、独立系書店を駆逐している、社員を洗脳してこき使うカルト的ブラック企業である、姑息な手で課税を逃れている、などと非難されることも多い巨大帝国、Amazon。この類まれな企業は、どのようにして生まれ、成長してきたのでしょうか。その歴史をひもといた一冊です。
全体は17個の章に分かれています。
最初の「第1章 ワンクリックではまだ不満」は導入部となっており、「第2章 生い立ち」から「第4章 ベゾス、インターネットを発見する」までは、Amazon創設に至るまでのベゾスの人生を扱います。
「ベゾス」がスペイン語で「キス」という意味だという話から、ねじ回しでベビーベッドを分解してしまった赤子期、ガレージにこもって「ラジオを修理したり、様々な実験装置を製作したり、電気掃除機をばらしてホバークラフトを作ったりした」幼少期、「プログラミングが大好きなオタク」となった少年期、といった具合に、若きベゾスの姿が描かれます。典型的なハッカー気質、並ぶものなき天才。
インテル、ベル研究所、アンダーセン・コンサルティングといったトップ企業からの勧誘を次々と断り、投資銀行の通信ネットワーク設計という仕事に就いて、10ヶ月後にはバンカース・トラストの最年少の副社長になってしまったベゾス。そこで「年率2300パーセントで成長している」インターネットに注目した彼は、あっさり辞めて独立してしまうのです。
「ベゾスには優秀な人材を集められる人脈があった。それだけではない。ベゾスにはモハメド・アリの自信とジョン・F・ケネディの熱意、トーマス・エジソンの頭脳があった」(Kindle版No.954)
「第5章 ガレージの4人組」から「第13章 アマゾンは書店を駆逐しつつあるのか?」では、Amazonの創設から驚くべき急成長を遂げた歴史が語られます。
利益を出さずひたすら成長を続けるというドット・コム企業のビジネスモデルをどのようにして実現したのか、そして事業が曲り角に到達し、上昇を続けてきた株価が暴落し、膨大な累積赤字に押しつぶそうになったとき、どのようにして黒字化に成功し、成長を続けたのか。その奇跡のような経営手腕には目を見張るばかりです。
「第14章 おかしな笑い方をするクールな男」と「第15章 では、ベゾスはどういうマネージャーなのだろうか」では、ベゾスの下で働いたことがある社員から業界誌のインタビューまで様々な証言を元に、ベゾスの人となりを探求してゆきます。この男はいったい何者なのか、何を考えているのか。
「病的なまでに幸福感が強く、その情熱には強い伝染力がある」(Kindle版No.2706)
「他人に対する共感はベゾスが不得意とするところだ」(Kindle版No.2747)
「計算高い誇大妄想狂ではなく、ナイーブと言えるほど楽観的なギーク」(Kindle版No.2776)
「社員を思いやることもない。ベゾスは、ガレー船を奴隷にこがせた人も顔負けというほど社員を働かせる」(Kindle版No.2753)
「ベゾスには茶目っ気もある。(中略)技術勘があり、どの機能は会社のためになり、どの機能はならないのかわかるのも、ベゾスの強みである。技術も問題も解決策も、すべて理解できる」(Kindle版No.2777)
「1万年後に思いをいたすために日本円で32億円もかけて鳩時計を作ってしまうベゾスはたしかに笑顔のエイリアンだ」(Kindle版No.3335)
「ベゾスを過小評価するのだけは避けなければならない」(Kindle版No.2866)
並外れた頭脳と情熱を持った、人を動かす天才。常人には狂気の沙汰としか思えないことに真面目に取り組み、ひたすら我慢強く着実に進めてゆく頑固さ。他人の気持ちや、自分がやったことがどういう影響を及ぼすか、一顧だにしない傲慢さ。
ベゾスに対する評価はばらばらで、分かりやすい通俗的な人物像をイメージすることが難しいことがよく分かります。全員の意見が一致しているのは、「彼を過小評価するのだけは避けなければならない」という一点。
「第16章 頭をクラウドに突っ込んで」では、今や業界最大手となったAmazonのクラウドサービス事業について、「第17章 一歩ずつ、果敢に」では、将来に向けた投資としてベゾスが力を入れている宇宙開発プロジェクトについて、それぞれ教えてくれます。
個人的には、ベゾスが本気で「安全・低価格な宇宙旅行ビジネス」を目指しているという話には胸が躍りました。彼なら、本当にやってのけるかも知れない、と。
「高校時代のジェフ・ベゾスは宇宙旅行に夢中だった。彼にとってSFは単なる娯楽ではなく、未来に向けて自分の思考を高めてくれるものだった。卒業生総代あいさつでも、宇宙への移住こそが人類の運命だと語っている」(Kindle版No.601)
「多くの人が宇宙へ行けるように、また、人類が太陽系の探査を継続できるように、我々は、辛抱強く、一歩ずつ、宇宙飛行のコスト削減に取り組んでいます」(Kindle版No.3059)
「事業として成立する日が来たら、そのとき、ベゾスにとってはアマゾンよりも大事な事業になるだろう。人生最初の大望は、おそらく、宇宙探査だったのだから(中略)彼は仕事を続け、再発明する、新しいものを試す、星に向けて手を伸ばすなどするだろう。 そしていつか、本当に到達してしまうのかもしれない」(Kindle版No.3096、3114)
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