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『前向き!タイモン』(ミクニヤナイハラプロジェクト、作・演出・振付:矢内原美邦) [ダンス]

 2013年08月25日(日)は、夫婦でこまばアゴラ劇場に行って、ミクニヤナイハラプロジェクトの岸田賞受賞作の再演を鑑賞しました。

 演劇的要素が強いダンス作品で、出演者たちが80分近くひたすら全力で踊り続けるハイテンションな公演、80分。シェイクスピア作の戯曲『アテネのタイモン』が原作らしいのですが、残念ながら未読です。

 いくつか白い箱や枠のようなものが置かれているシンプルな舞台。箱を組み合わせることで机や階段を作ったり、箱から小道具(例えば携帯電話)を取り出したり、箱から人が這い出してきたり、また箱の表面に映像を投影したりします。

 登場人物は、富豪(タイモン)、メイド、リンゴ農家という三名。ストーリーはないも同然で、実のところ普通の意味でいうセリフもありません。長い長いセリフを早口でわめきたて、各人が同時にしゃべったり、絶叫したりしますが、こうした発話行為も「身体の動き」としてダンス振付になっています。旋回するように早口連続長ゼリフ、跳躍するように絶叫。

 発話だけでも体力消耗しそうな勢いですが、それに加えて舞台を走り回ったり、全員がユニゾンで動いたり、そして変なポーズを決めたり、踏み台昇降運動したりと、観客も精神的に疲労困憊するようなハイテンション舞台。

 ときおり、あちこちに置かれた白い箱の表面に映像が投影されます。この場にいない他の人物が映される(そして出演者たちによって、あてレコされる)場面もありますが、「走るトナカイの群れ」や「次々と降り注いでは底からたまってゆくリンゴ」といった、いかにもニブロールっぽいCGイメージ動画が非常に効果的に使われています。

 というわけで、役者のレベル向上にともなって、出演者の人数がどんどん減ってきた(一人当たりのセリフ量がどんどん増大してきた)ミクニヤナイハラプロジェクト。ついに本作で出演者三名になりました。ちなみに、現時点での最新作『静かな一日』は出演者二名。人間は全身運動しながら大声での発話をどのくらい続けられるものか、その限界に挑むような矢内原美邦さんの次回作に期待したいと思います。

[キャスト]

作・演出・振付: 矢内原美邦
出演: 笠木泉、鈴木将一朗、山本圭佑


タグ:矢内原美邦
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