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『Chouf Ouchouf シュフ ウシュフ』(振付・演出:ズィメルマン エ ド・ペロ、出演:タンジール・アクロバティックグループ) [ダンス]

 2013年06月09日は、夫婦で東京芸術劇場に行って、スイスのアーティスト・ユニットとモロッコのアクロバティック集団のコラボレーションにより制作された公演を鑑賞しました。

 数年がかりで世界中をめぐり、約300回も上演された作品ですが、本日が千秋楽。各国から観客が集まっています。

 モロッコのタンジール・アクロバティックグループのメンバー総勢12名が、開演前から舞台上に揃って、思い思いに準備をしています。数名が談笑しているかと思えば、ひたすらジョギングしているメンバー、タンブリングの練習をしているメンバー、ストレッチに勤しむメンバーなど。

 出演者が投げ捨てた空のペットボトルが舞台上に巨大なゴミの山を作っていて、もう既に何時間も、もしかしたら何日間も、彼らがずっと出番を待ってここで待機し続けていることが分かります。って、まさかそんなはずはなく、既に演出は始まっているのです。

 舞台上には巨大な壁。それを前に、アクロバットが始まります。軽快なリズムに乗って、まずは人間タワー。続いて様々なタンブリング。続けざまにとんぼを切ってみせる派手な大技に観客大いに盛り上がり、拍手喝采です。

 やがて壁が分解して五本の柱となり、それが舞台上を静かに滑りながら移動を始めます。柱が通り過ぎる度に消えたり現れたりする出演者、ある者は民族楽器を演奏し、またある者は歌い、さまざまな人々の生活が断片となって舞台に現れ、また消えてゆきます。

 市場の喧騒、歌と踊りのざわめき、夕方の倦怠感、夜の静けさ。おそらくはモロッコの日常生活を切り取ったのであろう様々な小芝居に、超絶的なアクロバット、例えば、倒立姿勢から足を床につかないまま腕立て伏せ姿勢に筋力だけで移行しまたもとの状態に戻すとか、片手倒立のまま様々な動きを見せるパワームーブだとか、そんなワザが生活感あふれる場面に溶け込んでいる、その演出の自然さときたら、逆に小憎らしいほど。

 移動する中空の柱(というか、背丈の三倍ほどのサイズの巨大ロッカーとでもいうべきでしょうか)を使った様々な演出はクールで、観客を飽きさせません。例えば、柱の側面にある扉から出演者がぞろぞろと中に入ってゆく。そして扉が閉まる。どう見ても柱の中に十名の人間が入れるはずはないので、これは何かのトリックだろうと思っていると、柱が裏返って、本当に十名のメンバーがアクロバティックな姿勢でびっしり入っているのを見せたり。

 出演者のフィジカルな技量と演技力もたいしたものですが、個人的には、民族性を前面に押し出した演出とアクロバットショーの見せ物的爽快感を自然に融合させるという困難をあっさりとやってのけた「ズィメルマン エ ド・ペロ」の構成・演出に感心しました。

 数年に渡るワールドツアー最終日ということで、終演後には巨大なモロッコ国旗が広げられ、振付演出チームから出演者全員に花が配られるなどのイベントもあって、客席も大いに盛り上がりました。


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