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『MM9 -destruction-』(山本弘) [読書(SF)]

 「これはヒメの運命だけじゃなく、地球の運命を決める戦いだ----まさに地球最大の決戦だよ」(Kindle版No.3960)

 侵略遊星人の策略に倒されたヒメ。そして地球に降臨する最強の宇宙怪獣神。巫女の力により召還された地球怪獣と自衛隊が連携してこれを迎撃するも、力の差は圧倒的だった・・・。シリーズ最大の激闘をえがくMM9版『三大怪獣 地球最大の決戦』。単行本(東京創元社)出版は2013年05月、私がKindle Paperwhiteで読んだ電子書籍版も2013年05月に出版されました。

 巨大怪獣という物理的にあり得ないはずの存在をハードSFとして書いて好評を博したMM9シリーズ。その第一長篇『MM9 -invasion-』のストレートな続篇です。前作で残された謎や伏線がすべて回収され、物語は最大のクライマックスを迎えることになります。

 前作のラストから数日後。侵略遊星人の魔手から逃れるため、政府に保護された主人公たちは首都近郊の某神社に潜伏することに。何しろ共同生活することになったのが、巫女(美少女)、幼なじみ(美少女)、怪獣(美少女)、というラノベのようなシチュエーション。主人公も消耗激しく。

 「贅沢な、あなたにとってはハーレムじゃない。かわいい女の子ばかりで」
 「・・・・・・本命と対抗と穴馬が顔を突き合わせてるなんて修羅場だよ」
 (Kindle版No.2032)

 おーい侵略遊星人、何をぐずぐずしている、早く怪獣送り込んでこいつ踏みつぶしてやって!

 読者の心の叫びに呼ばれるように、UFO編隊が来襲、そして合体。巨大化して戦うヒメ。だが、全ては侵略遊星人の計画通りだった。

 「私はこの戦いで敗北します----この未来は変えられません。決定事項なんです」(Kindle版No.2847)

 ついに明らかになる侵略遊星人の真の目的。それは、かのグレッグ・イーガンの某長篇のメインアイデアをベースに、神話伝承ロジック(地球にやってくるような宇宙人は、当然ながら自然法則ではなくこれに従っています)を駆使した恐るべき侵略計画。危うし、地球。というか自然法則。

 「異星の主神----最強かつ最凶の宇宙怪獣が地球に降臨した」(Kindle版No.2847)

 姿を現したMM9クラスの宇宙怪獣神。巫女が召還した地上怪獣二体と自衛隊が連携して迎撃するも、圧倒的な力の差は明らかだった。ヒメがいない限り人類に勝ち目はない。気特隊メンバーが、科学者が、自衛隊員が、死力を尽くして戦うなか、すべての希望は主人公に託された。

 「前にさくらさんが言ってました。ヒメは天命なんだって、人事を尽くさない限り、天命は下りてこないんだって。だったら僕も人事を尽くしたい。たとえ無駄に終っても、自分にやれるだけのことはやりたい」
 「いいぞ」伊豆野は微笑んだ。「それでこそ男の子だ」(Kindle版No.4953)

 東宝怪獣映画とウルトラセブンのあれやこれやのプロットを好き勝手に組み合わせ、お気に入りの怪獣をコラージュした上でばんばん登場させ、しかもハードSFや伝奇小説の手練手管で無茶を通してしまう。今の男の子はどうだか知りませんが、昔の男の子は大喜び。

 前半のラノベ調や長々とした説明はちょっとどうかと思いますが、ラスト1/4の盛り上がり、というより、はしゃぎっぷりに、ぐっと来ました。

 独立した長篇ではありますが、やはり前作『MM9 -invasion-』を先に読んでおくことをお勧めします。そもそもMM9シリーズを読んだことがない方は、まずはヒメ幼女篇『MM9』、そしてヒメ少女篇『『MM9 -invasion-』、それからヒメ成人篇『MM9 -destruction-』という順番でどうぞ。


タグ:山本弘
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