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『真実のお多福豆』(阿賀猥) [読書(小説・詩)]

 「馬鹿面をかぶったままに、邪悪の限りをつくし、裏切りを重ね、男たちが築きあげた物事の根を、崩し、ほぐして、違うものに作り変えて行くのだ。/女はこうして生き延び、こうしてお多福世界を作ってきた。/女は、みなそれを作らねばならない。」
  (『お多福女性論』より)

 『揺るがぬヘソ曲がりの心』が面白かったので、阿賀猥さんの人妻ガールズトーク詩集を読んでみました。単行本(文芸者)出版は、2004年09月です。

 「5月はいらつく/どうしようもなく、いらつく/仕方がないので隣の猫をぶちのめそうとすると、/猫に気どられ、首筋をグサリと引っ掻かれる」
  (『猫』より)

 「私の不潔さが家をおおい、町をおおう/それから、悪運が私を襲う」
  (『悪運』より)

 「むかつく。/必死の努力で、きちんと化粧して、極上の服を着ているつもりなので、/いよいよむかつく。」
  (『むかつく』より)

 「もっともっと鮮烈に、つまりリアルに、怨念を生きたい。怨念を開花させたい。いつか、きっと、華々しく開花させたい」
  (『怨念』より)

 何だかやたら不機嫌な人妻、「私」。さらに、「カラ子」、「A子」という二人の知人も登場して、三人でえぐいガールズトークを始めます。というか本当に三人なのか、実は同一人物なのかは分かりませんが。

 「どういうこと?/つまり「我慢」ってどういうこと?/あの男、この男をつまみ食いしないって事?/じゃあ、これからどうするわけ?/なんでもかんでも食べ放題?」
  (『決意』より)

 「男をペテンにかけようと思っていた。/終止、それしか考えていなかった。/傍目にはそうと見えなかったのは、私のペテンが稚拙過ぎたからだ。」
  (『カラ子の策』より)

 「私は尻の幸福を知らない。/尻の中はもちろん、尻付近そこら一帯の幸福というものを知らない。/そんなものを知る必要があるだろうか?」
  (『尻』より)

 本音が赤裸々に語られます。とてもリアルで、ちょっと怖い。

 コイバナもいっぱいあります。

 「今、彼は精神世界にいるらしい。なんというやっかいな奴だろう」
  (『カラ子の恋 1』より)

 「仕事の合間に、そうですね、10時間のうち、5秒かそこら彼を見るのです。/眺めるわけですね。/それが至上のことでした。/至福の時だったのです。」
  (『カラ子の恋 2』より)

 「カラ子からのメールに、「窓の外に喜び溢れて飛び跳ねる馬系の生物が見えます」とあったけど、その馬系の生物って、あなたのこと?」
  (『カラ子の花婿への質問』より)

 「なんというか、とりとめもない感じの、/そう、/とことんだらしないというか、/しまりがないというか、/もう手の打ちようがない人がいいの、/そして一緒に、/とりとめもなく長々と、ただ長々と/生き続けるの」
  (『ただ長々と(A子の好み 2)』より)

 ここでは引用しませんが、「私」が夫の不倫相手から聞き出した修羅場バナシとか、男をみんな植木にして庭に植えるとか、A子さんはお多福様みたいな感触の「世界的な掘出し物」なので女の私だって抱かれてみたいとか、他にも色々な話がストレートに。フックに。アッパーに。

 おそらく女性読者は大いに共感するんじゃないでしょうか。男性読者としては、ちょっとこう、知らなきゃよかった、みたいな気持ちにもなりますが。


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