SSブログ

『SFマガジン2013年7月号 コニー・ウィリス特集』 [読書(SF)]

 SFマガジン2013年7月号は、コニー・ウィリス特集ということで、新作中篇と、ヒューゴー賞受賞短篇を翻訳掲載してくれました。


『エミリーの総て』(コニー・ウィリス)

 「わたしがここに立ち、声を嗄らして、この先まともな役につけなくなる危険をおかしているのは、あの夜、(中略)存在しない心の奥底から際限なく言葉をほとばしらせていたエミリーが、わたしにそっくりだったからだ」(SFマガジン2013年07月号p.45)

 ブロードウェイの大女優が出会った一人の娘、エミリー。ショーダンサーになりたいという熱意だけで不可能に挑む彼女の姿に、大女優はかつての自分の姿を重ねるが・・・。

 映画やミュージカルのネタを大量に含んだ華やかなロボットSF。夢や情熱に対する人々の想いが聖夜の奇跡を起こす、というパターンを忠実になぞります。しかし、米国人って本当にこの手の話が好きなんだなあ。


『ナイルに死す』(コニー・ウィリス)

 「死は、ナイルでも、予期したとおりのものだったのか? (中略)彼らもまた、あらゆる手がかりにもかかわらず、自分たちがまだ生きていると思いつづけていたのか?」(SFマガジン2013年07月号p.80)

 エジプト観光旅行に出かけた三組の夫婦。愛憎のもつれから惨劇が・・・起きそうで起きないし、もちろんエルキュール・ポワロ氏も登場しない。

 ピラミッド、ナイル川、王家の谷、ファラオの墓、裁きの間へと向かう超現実的な旅路の途中で、語り手の心に恐るべき疑惑が生じる。もしかして私たち、自分では気づかないうちに、すでに・・・。

 『トワイライトゾーン』的な雰囲気のまま進んでゆく旅。アガサ・クリスティと『死者の書』を重ね合わせるという異色のサイコスリラー。あざといほどの巧みさに感心させられます。


[掲載作品]

『エミリーの総て』(コニー・ウィリス)
『ナイルに死す』(コニー・ウィリス)


タグ:SFマガジン
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: