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『今日』(翻訳:伊藤比呂美、イラスト:下田昌克) [読書(小説・詩)]

「わたしは、この子が眠るまで、おっぱいをやっていた
 わたしは、この子が泣きやむまで、ずっとだっこしていた」

 ニュージーランドの子育て支援施設の壁に張ってあったという詠み人知らずの短い詩。育児に疲労困憊し、くじけそうになっている母親を支えるその言葉を、伊藤比呂美さんが翻訳し、下田昌克さんがイラストがイラストを付けてくれました。単行本(福音館書店)出版は、2013年02月です。

 「いつのまにか、詩はわたしたちの手を離れ、ネット上の疲れた母たちの底力に支えられて、ちまたに流布していきました」(単行本p.49)。

 生活はぐちゃぐちゃ、家事も放置、他人からは陰口をたたかれ、もう何もかも最悪に感じられる一日。でも今日、わたしはちゃんと母親をやった。

 全文(原文)がすべて表紙に書かれているという、ごく短い詩です。内容も「他人が何と言おうと、あなたはがんばっているんだから、そのままでいいのよ」系というか、安っぽいJポップ歌詞みたいに思えるのですが、原文の力なのか伊藤比呂美さんのマジックなのか、これがじわじわと効いてくる。

 まったく子育てと無関係な私でさえ感動するのですから、実際に子育てに悩み苦しみ疲れ果てた母親が読めば、号泣してもおかしくない詩です。奥さんに育児の苦労を押しつけているという自覚のある男は、すぐに購入してプレゼントした方がいいです。その前に自分でもきちんと読むこと。

 なお、オマケ的に、同じくよみ人知らずで伊藤比呂美さんが翻訳した『虹の橋』という、犬と死別した飼い主をなぐさめる詩も収録されていますが、こちらはまあ、愛犬家なら感動するのかも知れませんね。猫派としては、ふううん、ですが。


タグ:伊藤比呂美
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