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『静かな一日』(矢内原美邦) [ダンス]

 2013年02月17日(日)は、夫婦で吉祥寺シアターに行って、矢内原美邦さんの新作公演を鑑賞しました。出演者二名のこじんまりとした舞台です。

 まず、舞台上に並べられた18列×18行の小さな白い家の群れが目をひきます。客席から舞台を見下ろす形になっているので、まるで床に白い正方形の街が広がっているようにも感じられます。

  参考
  http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/P1040504.JPG

 このミニチュアの「街」を、小型ビデオカメラを搭載した模型電車が走り回り、街中の「風景」やそこに立つ出演者を下から見上げる構図(怪獣映画みたい)で撮影してはリアルタイムに映写したり、街を白いスクリーンと見なして上から映像をプロジェクションマッピングしたり、個々の家に別々に照明を当てたり、家ごとに色を変えたり、街中に雨を降らせたり(これが特に素晴らしい)。

 これまでの作品においても凝った映像を舞台上に投影していましたが、今回はこの特殊な視覚効果が抜群に面白いと思いました。インスタレーションというのでしょうか。次作にも期待したいところです。

 ライブアクションの方は、基本的にはこれまでの作品と同じく、出演者たちが激しく身体を動かしながら息も切らさず早口で長セリフをしゃべりまくり絶叫する、それをダンスとして見せます。

 叫ぶという行為そのものが振付なので、セリフには特に意味はないものと思われますが、それでも「平穏無事であるべき日常に、唐突に理不尽に不可抗力的にやってくる死や破局」といったイメージを喚起させる会話はとても印象的です。同じセリフの繰り返しも巧み。

 一時間半近く、街の周囲を全力疾走したり、机にとび乗りとび降りかいくぐり、夫婦喧嘩も絶え間なく、しかもその間ずっと正確にしゃべり絶叫しなければならない出演者も体力的に大変でしょうが、その必死な感じから何ともいえない切実さが伝わってきて感動させられました。

[キャスト]

演出・振付: 矢内原美邦
映像・美術: 高橋啓祐
出演: 川田希、松永大輔


タグ:矢内原美邦
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