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『ボンビックス モリ with ラッシュ』(インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック ダンスカンパニー) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 2012年11月23日(金)は、夫婦で世田谷パブリックシアターに行って、インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック・ダンスカンパニーの公演を鑑賞しました。それぞれ40分から50分程度の作品二本立て公演です。

 まず最初の『ラッシュ』。ごく狭い円形のエリアに12脚の椅子を並べ、そこで数名の男女が奇妙なダンスを踊ります。

 天井からつるされた裸電球の光にぼんやり照らし出された舞台は、何だか曖昧な追憶のような、あるいは昔の出来事がぼやけた印象として登場する夢のような感じ。途中で挿入される不思議なアニメーション作品もその雰囲気を強めます。

 そもそも円に12脚ということで、否応なく「時計」、さらには「時間」を連想させるのですが、動きは段々とスピードアップしてゆき、やがて男性ダンサーが女性ダンサーを背負って一列に並べられた椅子の上を歩き始めてからはいよいよ忙しく。

 三名のダンサー達が協力して、男が通り過ぎるはしから椅子を進路前方に移動し続け、いわゆる無限軌道のように延々と続く椅子の例を維持。そこを女を背負ったままひたすら歩き続ける男。個人的に小野寺修二さんの作品によくある演出を思い出します。

 あ、そうか、これは中年期から老年期にかけて時間が猛スピードで流れてゆくあの現象だ、ということはこれまで色々と踊っていたのは「人生」だったのか、などと思っていると、ふと椅子の軌道が途切れ、男はそのまま立ち往生、文字通り。

 何だか、懐かしいような、もの悲しいような、40分のうたた寝のような、そんな不思議な作品です。お気に入り。

 そして『ボンビックス モリ』。タイトルはラテン語で「カイコ(蚕)」という意味だそうで、糸が大活躍する作品です。

 糸といっても伸縮性のある細いロープで、これを口にくわえて他のダンサーに引っ張ってもらったり、ダンサーをぐるぐる巻いてサナギにしたり。壁に開いた出入り口からダンサーがイモムシのように這い出してきたり。「脱皮」してガになったり。何か変な箱(眼が描いてある)背負って四つんばいで歩いたり。まあ薄暗い養蚕場をこっそり覗き込んでいるような舞台です。

 動物や昆虫を連想させる奇怪な人外の動きがキュートで、子供の頃に虫の動きをじっと観察して感嘆したあのときの興奮を覚えます。舞台のあちらこちらで同時に色々なことをやるため意識の焦点を合わせるのが次第に難しくなり、例によって「ちょっとグロテスクで意味不明だけど何だか懐かしい感じのする夢」を見ている気分になってゆくところはさすが。


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