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『ロスト・シング』(ショーン・タン、岸本佐知子:訳) [読書(小説・詩)]

 摩訶不思議な世界。なぜか懐かしい感触。そして忙しさに紛れて見えなくなってしまった小さなものへの共感。『アライバル』、『遠い町から来た話』の著者による美しい絵本です。翻訳は岸本佐知子さん。単行本(河出書房新社)出版は、2012年06月です。

 ある日、ぼくは海岸で不思議なものと出会った。他の人は、やるべきいろんなことをやるのに忙しくて、誰もそいつに気づいてないみたいだった・・・。

 ショーン・タンの初期作品です。忙しさに紛れて見えなくなってしまった、非効率的で、無意味で、金儲けにならず、役にも立たない、でもなくせば次第に人間が人間らしくなくなってしまう、そんな小さなもののことを思い出させてくれる、忙しい大人のための絵本。

 かなりの大型本で、絵本というより画集だと思った方がいいかも。とにかく不思議で懐かしい絵柄が素晴らしく、いつまで眺めていても飽きません。

 絵の一部を構成している文字もごく自然に日本語に翻訳されており、その丁寧な仕事には感心させられます。たとえば、帯を外して、裏表紙をじっくり眺めてみれば、その細かい工夫に感銘を受けることになるでしょう。こういうワザがあちこちに仕掛けられており、何度も読み返して楽しむことが出来ます。

 今年はショーン・タン作品がさらに翻訳出版されるという噂もあり、本当に楽しみです。


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