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『ちちこわし』(金子鉄夫) [読書(小説・詩)]

 「クソっブタ町、クソっ/どうせならここで死ねっ/路上で死ねっ」

 乱暴で下品な悪態を重ねてみたら、宿便おとしたみたいに気分すっきり。馬鹿が書いた攻撃的パンク・ロックの歌詞をお利口さんが現代詩に変換したかのような挑発的なデビュー詩集。単行本(思潮社)出版は、2012年04月です。

 父強し? 乳壊し?

 よく分からないタイトル。中身もよく分からないけど、イライラしたときに読むと気分が良くなる謎の詩集。

 まず表紙が真っ赤というのが挑発的ですが、目次からしてこんな感じ。

 「うみなんていくな」
 「死にぞこないのクズ」
 「おまえのせいだよ」
 「ズブズブっ、ズっ」
 「クソっブタ町」
 「混じるなよ」

 うわ、いきなり中指立ててくるし。落ち着いて、まずは表題作に目を通すと、こんな感じ。

 「(裂けろっ、ばかっ/うねうねでうねうね」
  (『ちちこわし』)

 うねうねでうねうね、うねうねでうねうね、繰り返しのリズムを刻み、そこに「零度の肌/に散る熱力学」などという訳の分からない言葉が挿入され、戸惑いながら読み進めると、いきなりこうきます。

 「とそこまでだろう/きみの読解力」
  (『ちちこわし』)

 そこで読者を挑発するか。むっ、として読み進めると、さらにこんな感じでだだっーと。

 「むすび萌える萌えるデジタル塗れに/血ィをまわせよ/(ハローっハローっ)/血ィをまわせよ/ちぃさいひと/(へらへらわらってんじゃねぇ)」
  (『うみなんていくな』)

 「うるせぇ、うるせぇよ/そのまま死んでしまえよ/なにもかもなにもかも」
  (『吐きそうさ、ニシオギクボ』)

 「「おまえのせいだよ」/「てめぇがわるいのさ」/ヤミヤミでまわるあまたのこし/思想(塩ビ使用)なんかじゃないぜ/カラフルなペンキに塗れた頭を端からたいらげてゆく経験/(はっ、ここはどういったセミナーだよ)」
  (『おまえのせいだよ』)

 「よぉっよぉっばかみてぇじゃん/おればかみてぇじゃん/あやういあたまうらがえる/肝、もえ(くずれる)まちにてである」
  (『肝、もえ(くずれる)まちにて』)

 「ちがう血ぃを浴びて/やみやみにやみれてズブズブっ、ズっ/(ゲロにゲロれて)/ズブブブっ、ズっ/(クソにクソれて)/砂嚙んで幸せだねっ」
  (『ズブズブっ、ズっ』)

 「濁音にまみれた消去法を孕んで卒倒していく/ぼくのゆきずりちゃん/許してはなんだよバーカ」
  (『モンキーブック』)

 「クソっブタ町、クソっ/あたりを跳びはねてカワイイ電脳/からあふれだすプルンプルンの「アタシ」の歴史だって/コミュニケーションじゃない?/コミュニケーションが大事じゃぁなぁい?」
  (『クソっブタ町』)

 「クソっブタ町、クソっ/どうせならここで死ねっ/路上で死ねっ」
  (『クソっブタ町』)

 くそったれ、死ね、肛門、恥部、ねばねば、バーカ、脳みそプルンプルン。小学生レベルの悪態を細かく砕いて緻密なアルゴリズムに従って敷きつめていったような、馬鹿が書いた攻撃的パンク・ロックの歌詞をお利口さんが現代詩に変換したかのような。

 ここにあるのは身体から出た叫びというより、こざかしい挑発小僧の得意気な顔。「無数の鬼のくび/(嫌じゃないし、嫌いじゃないし)」(『青空』)。

 気分がくさくさしているときなど、効きます。電車の中で(小声でぶつぶつと)朗読すれば気分すっきり。こじらせてしまった潜伏性思春期の反逆精神ぶり返しで困っている人にも、仕事も金もなくむしゃくしゃしている方にも、お勧め。路上で刺すな、ちちこわし。


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