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『カラス/Les Corbeaux』(振付・出演:ジョセフ・ナジ、音楽・演奏:アコシュ・セレヴェニ) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 先週の金曜日(2012年2月17日)は、夫婦で世田谷パブリックシアターに行ってジョセフ・ナジの新作を観てきました。ナジの舞台を観るのは、2007年の『遊*ASOBU』(黒田育世、斉藤美音子、そして大駱駝艦のメンバー四名を共演させるという驚嘆の公演)以来。今回はダンサーを起用せず、自ら踊るというから期待が高まります。

 ちょっと見怪しげなガジェットの数々(実は楽器)と白いスクリーン、机などがごちゃごちゃと並べられ、雑然とした印象を受ける舞台。出演者は二名だけ。アコシュ・セレヴェニが前衛的音楽(音響)を響かせ、それに合わせてジョセフ・ナジが奇怪な、カラスのようなダンスを踊るという趣向。

 まずアコシュ・セレヴェニの演奏が凄い。明らかに設計者の想定外だろうという変則的なやり方で楽器を「演奏」し、思いもよらぬ音を出してみせる。硬いものをこすり合わせるようなきしり音、銅鑼の響きのような深みのある音、リズミカルなスタッカート音、空気を裂く呼吸音、などなど、一見して楽器に見えない様々なものから飛び出してくる耳慣れない音が、不思議な音楽を形作ってゆきます。

 天井から吊るした逆円錐形のバケツ、そこから流れ落ちる砂を金属製の筒(砲弾の薬莢?)に当てて「さらさら」という音を出してみるなど、色々と実験というか子供の悪戯みたいなことをやったり。「バイ、ジョン・ウッド、アンド、ポール・ハリスン」というナレーションが聞こえてきそうな二人。

 そしてナジが踊り始めます。手首を変な角度に曲げてビシッとポーズ決めたり、決然と片足を踏み出したり、鳥類の首の動きで手を振ったり、なるほど「カラス」です。

 まるで人間の身体に慣れてないナニカが無理やり歩こうとしているような、ぎくしゃくしたグロテスクな動き。そして転倒。見たことがないと思わせる奇怪な動作が繰り返される様には思わず息を飲んでしまいます。

 全体的に暗闇に沈み込んだような舞台で、照明で観客の視線を誘導するのですが、ときどきその隙をついてこっそり物を動かしたりすり替えたりしていたような気がしてならない。たぶん気のせいですが、そう感じさせるのも演出意図かも。

 そして舞台上にいつの間にか現れた大きな壺。中には黒々とした液体がたっぷり。水面で照明が反射して、壁にその揺れがうつし出されています。静かにそこに沈み込んでゆくナジ。ポスターやプログラムの表紙であらかじめ知ってはいたのですが、やはりびっくりします。

 全身からぼたぼたと黒い液体(たぶん顔料)を垂らし、それを墨汁に見立てて床の白紙に撒いたり、手をなすり付けて「絵」を描いたり、全身真っ黒のままカラス踊りを再演したり、やりたい放題。どこまでも「ASOBU」のひとだなあ。

 というわけで、ダンスを中心に、舞台上で描く絵、実験的音響、照明効果など、様々な要素を組み合わせて異界を作り上げた舞台。世田谷パブリックシアターを皮切りに全国を回る予定だそうで、以下に今後の上演予定を書いておきます。もちろん責任は持てませんので、興味がある方は必ず劇場に確認して下さい。

『カラス/les Corbeaux』上演予定

2月21日(火)・22日(水)愛知芸術文化センター
愛知芸術文化センター 052-971-5511 

2月25日(土)・26日(日)AI・HALL [兵庫・伊丹市]
アイホール  072-782-2000

3月3日(土)・4日(日)金沢21世紀美術館 [石川・金沢市] 
金沢21世紀美術館・交流課 076-220-2811 

3月9日(金)・10日(土)富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ 049-268-7788  


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