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『カラマーゾフの兄弟』(小野寺修二、カンパニーデラシネラ) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 昨日(2012年02月12日)は、ドストエフスキーを原作とするカンパニーデラシネラ(構成・演出:小野寺修二)の新作を観るために、夫婦で新国立劇場(小劇場)に行ってきました。

 マイム、ダンス、演劇を見事に融合させる小野寺さんの演出です。あの長大な原作から印象的なシーンを抜き出してマイム化し、ストーリー展開どころか時系列すら無視する勢いでつなげてゆきます。

 マイムですから基本的にセリフなし。大真面目な顔で変なことをやったり、妙なことに執拗にこだわったり、基調はシリアスですがどこかとぼけた雰囲気を作り出すのが絶妙に巧い。

 同一出演者が異なる人物を演じるなんてあたりまえ、ときに場面転換もなしにするりと役柄を別人に移行させたり。ほとんど何も説明しないので、原作を読んでない観客は、そもそもいまそこで誰と誰が何をしているのか、さっぱり分からないシーンも多かった、というかそれが大半だったんじゃないかと思います。

 あらかじめ原作を読んでおいて助かりました。

 しかしまあ、たとえストーリーが分からなくても、小野寺さん振付の「動き」の妙を味わうのに支障はありません。複数のキャストがぴたりと同期して動き、無言のまま奇妙な運動が絡み合う様を観ていると、心が浮き立つようです。

 なお、カンパニーデラシネラの藤田桃子さんが怪我で降板し、代りに江角由加さんが出演していました。女性キャストは彼女だけということもあって、全体的にやたら“男臭い”舞台です。何しろ、原作ではヒロイン扱いのグルーシェニカが、服という「記号」でしか登場しない。徹底的に「うっとうしい男の世界」でしたね。

 有名な裁判シーンをばっさり削ってしまい、裁判前夜に悪魔が現れるシーンをクライマックスにして、そのまま終幕に持ち込んでしまう、という構成には驚きました。後で考えると、実にスマートな手口です。

 こういった構成上の工夫により、断片的なマイムをつなげた80分強の公演でちゃんとカラマーゾフらしさを醸し出してしまうのが印象的な舞台でした。

[キャスト]

浅野和之、森川弘和、河内大和、大庭裕介、川合ロン、江角由加
小野寺修二


タグ:小野寺修二