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『カラマーゾフの兄弟(2)』(ドストエフスキー、翻訳:亀山郁夫) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

 女と金をめぐる家族内の争い。三男アリョーシャの導き手たる長老の死。奸計をめぐらす料理人と次男イワン。様々な人間模様が描かれるなか、来るべき惨劇への準備は着々と整えられつつあった・・・。数年前にベストセラーとなった亀山郁夫さんの新訳カラマーゾフ、その第2巻。文庫版(光文社)出版は2006年11月です。

 おそらく世界で最も有名な長篇ミステリ。その第2巻です。全体は四部構成(+エピローグ)となっていますが、その第二部に当たります。第一部の感想については、2012年01月13日の日記を参照して下さい。

 そろそろ親父が殺されるかと思いきや、これがなかなか死なない。長男は金策に駆けずり回り、次男は何やら含みのある言動をとり、三男は師の最後を看取るのに忙しい。

父親フョードル:「かわいいわたしのヒヨコちゃん」
長男ドミートリー:「グルーシェニカは俺の嫁」

 父親と長男、どちらにも気を持たせて楽しんでいるらしい美女グルーシェニカ。いい歳してマジな顔で「彼女と結婚して全財産を譲る。息子たちには一銭もやらん」と言い出し、彼女に渡す大金を封筒に入れて寝室に置く好色親父。

 それまでけっこう好感(しょうがないオヤジだなあ)を持って読んできた父フョードルですが、その封筒に「わたしのヒヨコちゃんへ」と書いてある、という描写には怒髪。死ねばいいのに。私見ですが、きっとこれが殺害に至る直接のきっかけになると見た。

カテリーナ:「あの人を救えるのは私だけなの」
次男イワン:「それ、典型的なだめんずうぉ~か~の言い草ですよ」

 長男ドミートリーの婚約者カテリーナは、何としてもこの駄目な男を自分が救わなければ、という使命感に燃えて、あるいはそういう「健気な」自分に陶酔して、たぶん後者でしょうけど、言い寄る次男イワンにもなびかない。

料理人スメルジャコフ:「お父上がトラブルに巻き込まれるよう小細工など」
次男イワン:「ふっふっふっ。お主も悪よのう」

 おそらく「カラマーゾフの兄弟」の一人(少なくとも自分ではそう信じているに違いない)料理人スメルジャコフが奸計をめぐらし、そのことを知らされる次男イワン。待てよ、親父と兄貴を排除すれば、遺産とカテリーナの両方が手に入るじゃん。

三男アリョーシャ:「ああ、親父も兄貴たちも何て見苦しいんだろう。ボクは神にこの身を捧げ、女と縁のない清らかな生活を送ることにしよう」
幼なじみのリーザ:「大好きです。大人になったら結婚して下さい」
三男アリョーシャ:「はい」

 あるときは長老に云われたので使いっ走りとなり、またあるときはお兄さんに云われたので使いっ走りとなる。そんな下っぱ体質が身についた三男アリョーシャ。幼なじみの病弱美少女リーザからの恋文ひとつであっさり陥落。もっと自分を大切に、というか、自分というものを持った方がいいと思う。

長老ゾシマ:「アリョーシャ、死ぬ前に告白しておくことがあるのじゃ」
三男アリョーシャ:「何でしょうか」
長老ゾシマ:「わたしが、おまえの、父だ」
三男アリョーシャ:「のぉぉぉぉぉーっ!」
長老ゾシマ:「というのは冗談として、みんなぱらいそさいくだ!」
三男アリョーシャ:「長老様ーっ」

 魂の導き手たるゾシマ長老の死を看取る三男アリョーシャ。そうこうしている間にカラマーゾフ家には悲劇が着々と迫っています。たぶん迫っていると思う。文庫版で一千ページ読み進めてきてもまだ親父がぴんぴんしている(かわいいかわいいわたしのヒヨコちゃん)のは困ったことです。第三部へと続きます。


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