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2011年を振り返る(2) [小説] [年頭回顧]

2011年を振り返る(2) [小説]

 2011年に読んだ小説(SF、ミステリなどのジャンル小説を除く)のうち、印象に残ったものについてまとめてみます。なお、あくまで「2011年に私が読んだ」という意味であって、出版時期とは必ずしも関係ありません。

 まず笙野頼子さんですが、年明け早々に最新作の序章完結編『一番美しい女神の部屋』が文藝2011年春号に掲載され、3月末には単行本『人の道御三神といろはにブロガーズ』が出版されたものの、その後は生存確認のように短いエッセイ『火事場泥棒地震詐欺、その他』を発表しただけ。愛読者としてはとても寂しい。事情は、薄々、想像できるのですが、今はただ静かに復帰を待ちたい。

 今年は星野智幸さんにハマって、全著作を読破した年でした。『最後の吐息』、『嫐嬲(なぶりあい)』、『目覚めよと人魚は歌う』、『毒身』、『ファンタジスタ』、『ロンリー・ハーツ・キラー』、『アルカロイド・ラヴァーズ』、『在日ヲロシヤ人の悲劇』、『虹とクロエの物語』、『われら猫の子』、『植物診断室』、『無間道』、『水族』、『俺俺』と読みましたが、『植物診断室』と『俺俺』が特に気に入りました。

 謎の乙女小説『WANTED!! かい人21面相』で読者を翻弄した赤染晶子さん、『ゴランノスポン』でパンク魂を見せつけた町田康さん、『一一一一一』で小説というものを無効化してしまった福永信さん、今年のお気に入り一般小説三冊はこれで決まり。

 佐藤亜紀さんの、魔法のような文体と構成で読者を唸らせる『醜聞の作法』は凄かったし、金井美恵子さんの少女小説シリーズ『快適生活研究』と『彼女(たち)について私が知っている二、三の事柄』も素敵でした。

 新刊が出ればとにかく読む、という個人的お気に入り作家の方々も、きちんと書いてくれました。

 恋愛小説連作『からまる』、デビュー作を彷彿とさせる幻想譚連作『あやかし草子 みやこのおはなし』を出した千早茜さん。どちらも夢中で読みました。

 久保寺健彦さんは、戦う女子を書いた短篇集『GF ガールズファイト』と、就職活動を青春熱血小説として書いた連作『ハロワ!』と、いずれも読んで血がたぎる二冊を出してくれました。

 池上永一さんは、沖縄諸島を舞台とする連作『統ばる島』、ベストセラーとなった琉球王国時代劇ファンタジー『テンペスト』のスピンアウト連作『トロイメライ』の続編、『唄う都は雨のち晴れ』で相変わらず楽しませてくれました。

 日本SF大賞を受賞してこちらに来るかと思わせた森見登美彦さんは、京都のクサレ大学生がいらぬ試練にあたふたする『四畳半王国見聞録』を出して、作風を変える気がさらさらないことを高らかに宣言してくれました。

 矢崎存美さんは、人気シリーズ「ぶたぶた」の新作を今年は二冊も出してくれました。短篇集『ぶたぶたさん』と長篇『ぶたぶたは見た』です。どちらも読んで心が少しだけ楽になります。

 三崎亜記さんの新作が『海に沈んだ町』(著:三崎亜記、写真:白石ちえこ)一冊だけだったのはちょっと寂しい。新進の作家と歌人が短篇小説と短歌をぶつけあうという『遊星ハグルマ装置』(朱川湊人、笹公人)も印象に残りました。

 海外小説では、年末に出た『短くて恐ろしいフィルの時代』(ジョージ・ソーンダーズ、岸本佐知子訳)が、辛辣さ破天荒さともに強烈でインパクト大でした。

 こうしてみると、海外の一般小説を全然読んでないことが明らか。今年はきちんと読みたいと思います。


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