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『ぶたぶたは見た』(矢崎存美) [読書(小説・詩)]

 毎年、年の暮れが近づくとやってくる素敵なクリスマスプレゼント。矢崎存美さんの人気シリーズ「ぶたぶた」最新作です。今回は長篇。職業は、タイトルからも明らかなように、家政夫さん。派遣先の家庭でぶたぶたが見たものとは。彼の身に危険が迫る(?)。文庫版(光文社)出版は2011年12月です。

 外見はかわいいぶたのぬいぐるみ。心はしっかり中年男。家族は奥さんと二人の娘。そんな山崎ぶたぶた氏に出会った人々に、少しだけ幸福が訪れる。「ぶたぶた」シリーズはそういう素敵な物語です。愛読者には女性が多いそうですが、私のような中年男性をも、うかうかとファンにしてしまう魅力があります。

 というわけで、今年もやってきました、これがないと年の暮れを無事に迎えることが出来ないとまで云われる、「ぶたぶた」シリーズの新作。夏に『ぶたぶたさん』が出ているので、今年は二冊も読めるわけで、とても嬉しい。2011年は良い年だった、と思うことにしましょう。

 母親が交通事故で入院したため、会社員である父親、大学生の息子、中学生の娘という平凡な家庭にハウスキーパーさんがやってくる。ピンク色のぶたのぬいぐるみである、という点を除けば何の変哲もない家政夫さんだったが、家事の腕前は超少女明日香なみ。

 “マイ脚立”をえっちらおっちら運んできて(カバーにも描いてありますが、これがラブリー)、それに乗って料理、掃除、洗濯と何でもてきぱきこなしてしまう働き者。すっかりなついてしまう家族の面々。

 しかし、この幸福な家庭に怪しい影が忍び寄る。家族に付きまとう謎の男。不審な怪電話。警察がやってきて言う。奥さんが事故にあったとき、背後から誰かが背中を押した、という目撃証言があると。彼女は殺されかけたのだろうか。誰に、なぜ。そして犯人は今も機会をうかがっているのだろうか。

 果たして事件の真相やいかに。

 ぶたぶたの名推理(ネットで検索して見つけました)、バイオレンス(ぶたぶたをつかんで投げつける犯人。ぽふっ)、そして犯人との息詰まる対決(ご飯できましたよ、ここに置いておきますね)、という具合にサスペンスミステリー仕立てです。帯も「ミステリーしてます」と主張してますし。

 しかし、まあ、いつものぶたぶただと思って間違いないです。どちらかといえば、ぶたぶたの活躍によって家族が絆を取り戻すハートウォーミングな物語、という方が正直なところ。活躍というか普通にお仕事ですが。ともあれ気持ちよく読了することが出来ますので、ご安心。

 今年は色々とつらいこともありましたが、本書を読んで温かい気持ちになり、家族のことをちょっと振り返ってみたりするのもいいかと思います。


タグ:矢崎存美
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