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『SFマガジン2012年1月号 特集:小川一水』 [読書(SF)]

 SFマガジンの2012年1月号は、小川一水を特集すると共に、北野勇作、草上仁の新作を含む短編4篇を掲載してくれました。

 『カメリ、山があるから登る』(北野勇作)は、キュートなレプリカメのカメリが主人公となるシリーズ最新作。ある朝、出勤したら、職場であるカフェがいきなり目もくらむような断崖絶壁の上に。カメリは登る。そこに山があるから。

 カフェの場所が山になった理由には驚きました。このシリーズ、そろそろまとめて単行本にならないかと期待しています。

 『予告殺人』(草上仁)は、住民の大半が超能力者という町で、殺人事件を予知した住民が犯人と被害者をつれて警察に報告にやってくる話。まだ起きてもいない、なぜ起こるのか当人たちにもさっぱり分からない事件をどう処理すればいいのか。頭を抱える警察。無茶な設定にも関わらず、ちゃんとユーモアミステリ短編になっています。

 『ドリアン・グレイの恋人』(グレゴリイ・フロスト)は、もちろん『ドリアン・グレイの肖像』(オスカー・ワイルド)のひねり。肖像画に自分の加齢や醜悪さを押しつけてしまう原典に対して、本作は「摂取カロリーを他人に押しつけてしまう」能力を持つ男が主人公。いくら食べても太るのは他人! 太め読者の願望充足型ダイエットホラー。

 『11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス』(ロバート・F・ヤング)は、時間航行中ガス欠になり、最寄り(11世紀)の時間エネルギー補給所に立ち寄った若者の話。ある城に隠されていた補給所は漏洩事故を起こしており、周囲では百年も時間が停止していた。そして、そう、そこには美しい姫が眠っているのだった。

 まあ、『ジョナサンと宇宙クジラ』や『たんぽぽ娘』の作者らしいストレートな作品。もう少しひねった方がいいような気もしますが、こういうところがヤングの魅力なのでしょうか。


[掲載作品]

『カメリ、山があるから登る』(北野勇作)
『予告殺人』(草上仁)
『ドリアン・グレイの恋人』(グレゴリイ・フロスト)
『11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス』(ロバート・F・ヤング)


タグ:SFマガジン
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