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『適当にやっていこうと思ったの』(近藤良平と障害者によるダンス公演) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 一昨日(2011年11月13日)は、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行って、第11回全国障害者芸術・文化祭埼玉大会の一環として企画された「近藤良平と障害者によるダンス公演」を観てきました。

 人気コンテンポラリーダンスカンパニー「コンドルズ」を率いる近藤良平さんが、公募により集まった埼玉県内の障害者たちと共にワークショップを通じて制作した作品です。

 障害者によるダンス、というのがどういうものになるのか、うまく想像できなかったのですが、そこはさすが近藤良平さん。手が不自由な出演者は足によるダンス、足が不自由な出演者は車椅子によるダンス、発声に困難を抱えている出演者はシャウト。各人の個性を引き出して、うまく観客の高揚感につなげて見せます。

 思えば「コンドルズ」だって、資質に恵まれているメンバーばかりではありません。というより、背が低い、太っている、カリスマ性に乏しい、など一般的にダンサーとして成功するのは難しい人材が多いわけです。

 そういった各人の特徴を「欠点」ではなく「個性」として際立たせることで、あの何とも云えない、とぼけた笑いや盛り上がりが生み出されてくる。それと同じことをやっているのに感心しました。「障害」を「個性」としてとらえる、という言い方がありますが、その実践ですね。

 冒頭に近藤さんによる短い挨拶があった後、威風堂々マーチが流れる中、スポットライトを浴びながら出演者(13名)たちがステージを一周。観客との距離感をぐっと縮めます。最初から拍手の嵐、いきなりの盛り上がり。

 コンドルズの藤田善宏さんが指揮者に扮して登場。出演者たちに発声をさせるというオーケストラ調整コント。ここで「障害者の言動を見て笑う」という行為に対する観客の心理的タブーを打ち破り、出演者と観客が一緒に笑って楽しむ、という雰囲気を作り出します。

 このあたりの段取りは素晴らしい。

 ソロ演目、グループ演目が次々と披露されます。寸劇あり、タップダンスあり、隠し芸大会やジェスチャークイズあり。「コンドルズ」の演出家としての手腕を存分に振るっていました。藤田善宏さん、鹿野沙絵子さん、二名のアシスタントも頑張っていたなあ。

 個人的に最も感銘を受けたのが、車椅子ダンスの演目です。車椅子に乗った出演者二名、それにダンサー三名(近藤良平、藤田善宏、鹿野沙絵子)によるコンテンポラリーダンス作品です。これが凄い。滑るように移動し、なめらかに旋回する車椅子が、ダンサーの動きと呼応して舞う様は、ちょっと鳥肌が立つような感動。

 というわけで、最初から最後まで楽しい公演でした。観客席には障害者と思しき方も多く、車椅子も並んでおり、障害者と健常者が一緒になって笑い楽しみ拍手した後の会場は、とても心安らぐ空気に包まれていました。


タグ:近藤良平
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