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『ガリレオの苦悩』(東野圭吾) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

 密室、遅延落下、ダウジング、遠隔催眠。超常現象としか思えない奇怪な事件の数々に、天才物理学者・湯川学が挑む「ガリレオシリーズ」第四弾が文庫化されました。単行本(文藝春秋)出版は2008年10月、私が読んだ文庫版は2011年10月出版です。

 直木賞を受賞した『容疑者Xの献身』における「天才物理学者と天才数学者の頭脳対決」というプロットがウケたせいか、帝都大学准教授・湯川学先生は、旧友、恩師、学会関係者など次から次へと知人と頭脳対決するはめに。(というか身の回りに犯罪予備軍が多すぎ)

 収録作のなかでも、奇怪な遠隔殺人を扱った『操縦る(あやつる)』と『攪乱す(みだす)』が二本柱となっています。どちらの事件も、犯人が「湯川学が謎ときに挑むこと」を織り込んだ、あるいは狙いとした犯罪計画を立てており、本人の責任ではないとはいえ、何だかマッチポンプな存在に。

 他に、被害者がマンションから落下した瞬間に落下現場にいたという鉄壁のアリバイに挑む『落下る(おちる)』、内側からしっかりと施錠された窓を通り抜けるという密室問題を扱った『密室る(とじる)』、そして事件そのものではなく、ダウジング(水晶振り子タイプ)で証拠物件を見つけた少女の超能力が本物か否かが問われる『指標す(しめす)』の三篇が収録されています。

 物理学者が探偵役ということで、物理トリックや機械的トリックが登場しますが、その謎解きをメインにしないところがさすが。必ず心理的なトリックも併用して読者をひっかける工夫をしてあるんですね。やはりベテランだけのことはあります。

 『操縦る(あやつる)』など、物理トリックを見破る話だと思わせておいて、『容疑者Xの献身』みたいな展開に持ってゆく鮮やかな手際には驚かされました。『指標す(しめす)』といった小品でも、ダウジングという物理的行為の謎解きだと思わせておいて、実はその心理的な意味を読み解くのが本筋だったりして、なるほどうまいなあ。

[収録作]

『落下る(おちる)』
『操縦る(あやつる)』
『密室る(とじる)』
『指標す(しめす)』
『攪乱す(みだす)』


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