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『自分のアタマで考えよう  知識にだまされない思考の技術』(ちきりん) [読書(教養)]

 おちゃらけ社会派ブロガー「ちきりん」さんが伝授する思考の技術。知識や思い込みに惑わされずきちんと考えるにはどうすればいいか、具体的な例をもとに分かりやすく解説してくれる一冊。単行本(ダイヤモンド社)出版は2011年10月です。

 考える、というのは誰にでも出来そうですが、実はとても難しいことです。私たちは、しばしば単なる「情報の収集」や「知識の整理」や「知識の再確認」といった作業と「考える」ことを混同してしまいます。

 一生懸命「考えた」はずなのに、何も有益なアウトプットが出てこない(日々の仕事にしても、人生全体を見渡しても)という方も多いのではないでしょうか。ありがちな思い込みを排して、本当に「自分のアタマで考える」というのはどういうことか、そのために必要な技術はどんなものかを、具体的に教えてくれるのが本書。

 著者は人気ブロガー「ちきりん」さん。「おゃらけ社会派」ブロガーとして様々な社会問題や時事ネタについて独自の視点で「考えた」結果を、親しみやすい楽しい文章でアウトプットしておられます。実に面白くて刺激的なブログで、毎回読むのが楽しみ。ちなみに、『Chikirinの日記』(http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/)です。

 本書の構成ですが、まず序章で、プロ野球ファンの年齢分布がどのように変化してきたか、という具体的な情報を元にして、「自分が知っている知識を再確認する」ことと「自分で考える」ことがどう違うのかを、鮮やかに示してみせます。思わず膝を打つような分かりやすさ。目から鱗。ここを読むためだけにでも本書を購入する価値があると思います。

 続く章では、少子化問題、生活保護、世界経済動向、婚活、省庁再編、就活、自殺率、コスト構造といった実際の問題を引き合いに出して、考えるための方法を具体的に示してゆきます。

 考え方のスキルを学ぶ上で役に立つのはもちろんですが、とにかく読んでいて楽しい本です。 文章はブログに比べると落ち着いており、おちゃらけは控えめだけど、散在する皮肉やイヤミは相変わらず痛烈。

 省庁を勝手に再編してみることで本質を見極めるとか、テロ報道に見るCNNとBBCとNHKの比較、といったネタには、その面白さで思わず惹き付けられます。印象的なのは、「婚活女子の2×2マトリクス」という例で、このインパクトには忘れがたいものが。おそらく、これから何らかの課題について評価基準を選択するときに、この例を必ず思い出すことになるでしょう。

 他にも、人口推移や自殺率推移のグラフから何を読み取りどう考えるかの練習などは、単なる「練習」にとどまらずかなり興味深い話題となっています。

 ちょっとでも実際に「考えて」みる練習をすると、自分が普段いかに何も考えてないか気付いて、愕然とすることに。

 というわけで、「“考える”という基本スキル」を学び磨くための教科書として、あるいはそもそも自分が何も考えずに仕事(勉強)をしていることに気づくためのきっかけとして、学生にも社会人にもお勧めできる好著です。


タグ:ちきりん
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