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『詩を読んで生きる  小池昌代の現代詩入門』(小池昌代) [読書(教養)]

 詩になじみの薄いリスナーを対象に、とかく難解なイメージのある現代詩の読み方を解説してくれるNHKカルチャーラジオのテキスト。単行本(NHK出版)出版は2011年10月。

 「第一回 詩への誘い」から「第十二回 生きる時間の秘密」まで、2011年9月30日から12月16日まで放送される全12回のラジオ講座です。リズム、音律、改行、物語、翻訳、歌詞、定型など、毎回テーマを提示して、それに沿って名詩を示して鑑賞のコツを教えてくれます。

 「詩は一瞬のなかに宿るものです。読む者も、詩を読むとき、この「一瞬」のなかへと、降りてゆくよう促されます。もしかしたら、詩を読むことは、別名、一瞬を生きるトレーニングだと言ってもいいくらいです」(第二回「詩とリズム」テキストp.21)

 「詩では、何を表しているのだろうとか、何をこの詩人は言いたいのだろう、というようなことは、考える必要はありません。詩人も何か、特別なことを言いたくて詩を書くわけではありません」(第二回「詩とリズム」テキストp.23)

 「詩の言葉は垂直方向へ降りてゆく傾向を持っているため、確かに明確なストーリーは流れにくいのです。非常におおざっぱな言い方をすれば、「起承転結」の承と転だけでできているのが詩だとも言えます」(第六回「家族の詩II 詩と物語」テキストp.76)

 「詩は人間を個へと戻しますが、そのもっとも個人的な感覚を、連帯へと押し広げる回路も持っています」(第七回「詩と孤独」テキストp.102)

 「何か課題、とりわけ戦争という大きなテーマを与えられたとき、自由詩はどうも、作品としてあまり面白いものになりません。「何かのため」という目的を持ったとたん、詩は堕落するのでしょうか。詩は詩それ自体に目的があり、まず言葉、言葉そのものに価値が置かれるのです」(「第十一回 様々な詩のかたち」テキストp.148)

 こんな感じで、説明は非常に分かりやすく、予備知識や経験は一切不要です。とりあげられている現代詩には難解なものも多いのですが、さっぱり分からないものをどう鑑賞すればいいのか、というコツを丁寧に教えてくれるのが嬉しい。

 というわけで、とりあげられた数十篇の名詩を解説に沿ってじっくり読むだけで、何だか詩が読めるような気になれるテキストです。今まで詩なんて真面目に読んだことがなかったけど、この講座で詩を読む面白さに気付いた、もっと読んでみたい、という方には、同じ著者の編集による『通勤電車でよむ詩集』もお勧めです。


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