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『税務署の復讐  ババア・ウォーズ3』(中村うさぎ) [読書(随筆)]

 女性の自我に関わる問題意識を深く過激に実践的に追求するエッセイを書く一方で、自爆ギャグ女王様エッセイもちゃんと書き続け、中高年男性読者へのおもてなし(および出版社から前借りした原稿料)もないがしろにしない中村うさぎさん。週刊文春に連載された、ご存じ女王様エッセイ集。出版は2011年10月です。

 というわけで、気軽に読める女王様エッセイ集最新刊です。妙に可愛いイラストは前巻に引き続き「るん ビュイック」さんが担当しています。

 今巻の中心となる話題は、何といっても渋谷区役所と港区役所による大挟撃。それぞれから税金(追徴金)を請求され、何とか少額分割払いに持ち込もうとするも、借金してでも税金払え、払わないと銀行口座も収入も全て差し押さえるぞ、という猛攻撃。

 そうでなくても既に(過去のあれやこれやの)借金の支払いで家計はぎりぎり、このままではマジ路頭に迷うことになる。生活のために奮闘する女王様だが、何といっても敵は国家権力。ついに家財が差し押さえられ、競売にかけられるという事態へ。

 他人事なので笑って読めますが、かなりの窮地です。もっとも、やりとりを逐一すべて雑誌に書かれてしまう区役所担当者にも同情してしまいますけど。

 他に、セクシャリティや虚言癖や差別意識などのテーマに切り込んでゆくエッセイもちらほら。読者を引き込む手口がうまくて、例えばこんな感じ。

 「知人のオカマがオナベと付き合っているらしい」(文庫版p.17)

 いきなり何だ何だ、と読者を戸惑わせておいて、次にこう。

 「念のために言っておくが、台所用品の話ではない」

 一瞬笑わせてから、こうくる。

 「ゲイの男性(心は女)と性同一性障害の女性(心は男)が付き合っているのだ」

 どういうことなのか。身体的にも男女、精神的にも男女、すなわちヘテロセクシャル(異性愛)ということでいいのか。性的マジョリティなのか、二人の関係は。著者の思惑通り、混乱してきます。

 そのタイミングで問題意識を投下。性別とは何か、それは「相手の中身でもなければ性器の問題ですらなく、ひたすら「見た目」だけの問題であるのかもしれない」(文庫版p.18)といった具合に。

 巻末には特別対談「ゲイと女装とコスプレと」(ブルボンヌ×中村うさぎ)が収録され、さらに性差の問題が追求されています。

 というわけで、ババア・ウォーズ三部作もついに完結、しているわけはなく。いったい次巻はどういうタイトルになるんでしょうか。『ババア・ウォーズ エピソード1 ファントム・メンス』ではないかと予想しています。


タグ:中村うさぎ
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