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『SFマガジン2011年11月号 特集:日本SF第一世代回顧』(月村了衛) [読書(SF)]

 SFマガジンの2011年11月号は、小松左京さんの死去もあり、「特集:日本SF第一世代回顧」ということで、評論やブックガイド、作品リストなどが掲載されました。また、『機龍警察』シリーズ第二長篇の刊行に合わせて、月村了衛の読み切り短篇が掲載されました。

 その読み切り短篇『機龍警察 雪娘』(月村了衛)ですが、『SFが読みたい!2011年版』においてベストSF2010国内篇第13位に選ばれた警察ハードボイルド戦闘ロボSF『機龍警察』のスピンオフ作品です。『機龍警察』については、2011年03月30日の日記を参照して下さい。

 長篇では群像劇、短篇では特定のキャラクターを掘り下げて書く、という方針らしく、既に由起谷警部補を主役とした短篇『機龍警察 火宅』が「ミステリマガジン 2010年12月号」に掲載され、後に『結晶銀河 年刊日本SF傑作選』(大森望、日下三蔵)に収録されています。こちらについては、2011年08月03日の日記を参照して下さい。

 さて、『機龍警察 雪娘』では、警視庁特捜部に雇われている三人の突入要員のうち、元ロシア警察のユーリ・オズノフ警部が主役をつとめます。荒川河川敷の工場で発見された惨殺死体の捜査に呼ばれたオズノフ警部は、現場に降りしきる雪景色を見ているうちに、かつてロシア警察時代に遭遇した事件を思い出します。どちらの事件も、現場にまるで雪の精のような幼い娘がいたのでした。

 二つの事件の共通点が明らかにされ、そして真相が浮かび上がってくるシーケンスは印象的で、ミステリ短篇としてよく出来ています。ちなみにSF的要素はほとんどありません。普段SFマガジンを読んでない方、特にミステリマガジン読者は、この機会にぜひどうぞ。

 なお、第二長篇『機龍警察 自爆条項』における中盤の見せ場の一つ、ライザ・ラードナーが操縦する<バンシー>と敵の機甲兵装<デュラハン>の一騎討ちシーンと、ほんのわずかながら関係してきますので、本作と合わせて長篇も読むことをお勧めします。


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