SSブログ

『ロミオとジュリエット』(W.シェイクスピア、松岡和子:訳) [読書(小説・詩)]

 争いが絶えない二つの名家に生まれたロミオとジュリエット、舞踏会で出会った若い二人は宿命の恋に落ち、情熱に駆られるまま破局に向けてひた走ってゆく。誰もが知っているシェイクスピアの名作、松岡和子さんによる新訳です。文庫版(筑摩書房)出版は1996年。

 明日(9月23日)はカンパニーデラシネラ(構成・演出:小野寺修二)の公演『ロミオとジュリエット』を観に行く予定なので、予習として原作を通読することにしました。恥ずかしながら、シェイクスピアの原作を読むのは初めてです。

 バレエ版なら今までに何度も観ていますが、何しろバレエなのでセリフがありません。つまり、私、かの有名なロミジュリのセリフの数々をよく知らないまま今日まで生きてきたわけです。いかんなそれは。

 小野寺修二さんの演出は、これまでの例から考えても、おそらく原作のセリフをコラージュ的に使う(前後の文脈から切り離してセリフだけ唐突に投下したり、何度も繰り返すことで言葉の意味を喪失させたり)と予想されることから、元となるセリフを頭に入れておかないとその「おかしさ」をきちんと鑑賞することが出来ない恐れがあるのです。

 というわけで、読んでみました。ストーリーはよく知られているので特に説明しませんが、要するにロミオとジュリエットです。バレエ版(といっても振付家・演出家によって様々なバージョンがありますが)との主な違いは、ラストでしょう。

 バレエではロミオの後を追ってジュリエットが自害して果てるところでドラマチックに終わることが多いのですが、原作ではその後に現場に駆けつけた警官、逃げようとして捕まった修道僧、大公と両家の当主たち、生き残った主要登場人物たちが再登場して大混乱。

 それもまあ当然で、何しろ警察が納骨堂に踏み込んだところ、現場には若き貴族、その婚約者である娘、その恋人、という三人の遺体。しかも、二日前に死んだはずの娘の遺体からはまだ温かい血が吹き出しているという怪奇現象。ちなみに現場は完全な密室。いったい何が起きたのか。この謎を解くにはシャーロック・ホームズの推理力が必要でしょう。(残念ながらホームズが登場するのは300年近く後のことです)

 それでもまあ事情を知っている修道僧の告白などもあって、何とか事件も解決。両家が和解して終わり、ということになります。私見ながら、終幕のドタバタは蛇足感が強く、ばっさり削ってしまったバレエ版の演出には納得がゆきます。

 バレエ版にはないマキューシオのセリフに大量の註釈が付いていて、それがまたことごとく「原文では~となっており極めて卑猥な意味」、「原文では~となっており非常に下品な意味」というのばっかだったり。

 バレエ版ではおとなしそうに見える乳母が原作では過激キャラだったり、バレエ版では二人が抱き合ったりキスしたり高々とリフトされ宙を舞ったりする有名な「バルコニーのシーン」で、原作では二人はキスどころか手をつなぐこともない(でもいきなり翌日の結婚を約束。早っ)とか。

 色々と発見がありました。まあ、ものすごく今さらですが。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: