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『人魚姫』(ジョン・ノイマイヤー振付、サンフランシスコ・バレエ)、『椿姫』(ジョン・ノイマイヤー振付、パリ・オペラ座バレエ) [映像(バレエ)]

 7月のNHK BS プレミアムシアターは、「ダンス特集」ということで、7月23日の23時30分から翌日3時55分まで、ジョン・ノイマイヤーの代表作二本を全幕放映。録画しておいてやっと鑑賞しました。

 今回は、世界的なコレオグラファであるジョン・ノイマイヤー(日本ではこのごろ「N氏」と呼ばれることが多いようです)の新旧代表作です。

 まずは比較的最近の作品である『人魚姫』を、サンフランシスコ・バレエ団が踊った公演。もちろんアンデルセン童話が原作です。人魚姫をヤンヤン・タンが踊り、アンデルセンをロイド・リギンズが、それぞれ踊ります。

 報われない同性愛に苦悩するアンデルセン。その精神世界においては、彼の狂おしい想いが人魚姫として具象化し、片思いの対象である男そっくりの王子に恋をするという物語が展開する。アンデルセン自身もそこにいて、人魚姫に寄り添うようにして悲恋を追体験してゆく。(もともと『人魚姫』が書かれた動機はこの通りの代償行為だったそうです)

 この作品が日本で初演されたとき、舞台を観たのですが(2009年2月15日の日記参照)、そのときは人魚姫をハンブルグバレエ団のエレーヌ・ブシェが踊っていて、これがもう大感激。その舞台の印象が強すぎて、ヤンヤン・タンじゃイメージ違うよなあ、大丈夫かなあ、などと不安に思いつつ今回の放映を観たのですが。

 けっこういいです、ヤンヤン・タンの人魚姫。

 エレーヌ・ブシェとはかなり雰囲気が異なりますが、そもそも「もののけ」っぽいヤンヤン・タンのちょっと怖いまでの存在感がうまくハマっていて、新鮮。尾びれが足に変わるシーンなど、ヤンヤン・タンの異様なほど長い足が見事に活かされており、その後のシーンでも思わず観客がたじろぐような効果を上げていたり。

 感情表現などかなり大仰なんですが、それがまた感動的。自分の激情を封じて、表出をすべて彼女に託したアンデルセンの姿と重ね合わせて、ラスト近くではぼろぼろに泣けます。

 舞台公演を観たときは、海底の雰囲気を出すために電子楽器テルミンが多用され絶大な効果をあげていたと記憶しているのですが、今回の映像ではあまり印象に残らず(というかテルミン使われてました?)、そこは残念です。あと、カメラワークが視線を強制してくるのにちょっとイライラさせられましたけど。全体的には素晴らしい舞台だと思います。

 それにしても、これまでに観たヤンヤン・タンといえば鳥女や雪女、そこにもって今回は魚女ということで、私の中でヤンヤン・タンといえば人外ダンス、というイメージが固定されてしまいそう。

 さて、もう一本は、すでに古典の風格がある初期代表作『椿姫』。パリ・オペラ座の2008年の公演を映像化したもので、ヒロインをアニエス・ルテステュが踊っています。

 ルテステュは椿姫にぴったりで、なにげない表情や仕種の一つ一つが完璧。その演技力とノイマイヤーの色彩マジック(特に「青」)が合わさって、ため息が漏れるほど美しい世界を堪能することが出来ます。

 なお、この舞台については、市販映像を観たときに感想を書いてます。2009年7月23日の日記を参照して下さい。


『人魚姫』

振付・美術・照明: ジョン・ノイマイヤー
出演: ヤンヤン・タン、ロイド・リギンズ、ティート・ヘリメッツ、サラ・ヴァン・パタン、デーヴィッド・カラペティアン、サンフランシスコ・バレエ
収録: 2011年5月、ウォー・メモリアル・オペラハウス


『椿姫』

振付・演出: ジョン・ノイマイヤー
出演: アニエス・ルテステュ、ステファン・ビュヨン、パリ・オペラ座
収録: 2008年7月2日、5日、パリ・オペラ座ガルニエ宮


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